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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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相変わらず甘くもなんとも無い作品ですね。(汗)
というか、なんでいつも途中から少ししか出てこないのだろう、ダーは?
ただ、今回はTV版と小説版両方を知っていないと意味がわかり辛いかと・・・
TV版だとレスカとダ・サイダーって幼い時のお互いの記憶が無いんです。
それを踏まえて更に外伝に繋がるような解釈という事で書いてみました。
あと、実はポイントなのが描写は無いですが、二人の寝巻き。
アルミホエール号での二人は、ダーがパジャマで、レスカがTシャツです
miyaは透け透けネグリジェより断然Tシャツレスカの方が大好きだったりします!

∞―――――――――∞ Fly ∞―――――――――∞



そこはただ真っ暗で、かろうじて地面が見える程度だった。


あたしはずっとそこにいて、一人グルグル回ってた。

疑問も持たずに回ってた。




ぼんやりとした視界に薄暗い天井が映りこむ。
レスカは未だに夢の続きにいるような錯覚を覚えて、思わず時計を覗き込んだ。

(何よ、まだ真夜中じゃない)

埋め込み式のディジタル時計が、気の抜けた青白い光と共に深夜の時を刻んでいる。
その曖昧さを許さない無機質さが生み出す現実感に、レスカはどこかほっとしていた。


窓から差し込む宙の光に、室内はモノトーンの世界を作る。
その色彩を失った世界を、気だるげに眺めていたレスカだったが、
まどろむどころかクリアさを増していく意識に、仕方なく身体を起こした。

(なんだろ、目、覚めちゃったわ)

夜更かしが肌にも身体にも良くない事など百も承知だったが、どうにも眠れそうに無くて、レスカは静かにベットを下りた。



-----------



ほんのりと甘い香りの漂うカップを片手に、レスカはゆっくりと扉をくぐる。
照明の落とされた艦橋は、星々の煌きの中、孤島のようにひっそりと佇んでいた。


「ふぅ」

レスカは操舵席に腰掛けると、カップの中のミルクティーを一口飲んだ。
適度な温かさと甘さ、そしてかすかなブランデーの香りが心を落ち着かせる。
そんな喉を通り過ぎる優しい感触に目を細めながら、レスカは右の宙を眺めた。

「静かなもんね」

平行して飛ぶハルク砲艦が沈黙の中に沈んでいる。

このアルミホエール号にしろ、ハルク砲艦にしろ、
昼間の喧騒が嘘のように静まり返り、まるで別世界に迷いこんだようだ。

今ここだけが切り取られ、世界に自分一人しか居ないような、
そんな漠然とした感覚に包まれながらも、レスカは不思議と孤独は感じなかった。






・・・・唄を忘れたカナリアは・・・象牙の船に、銀の櫂・・・・・



いつのまにかレスカは口ずさんでいた。
別段意識したわけではない、ただ気が付いたら口をついていたのだ。

それはいつ聞いたのか、何処で聞いたのかも忘れてしまったような唄。


(カナリアなんて柄じゃないわね)

レスカは思わず苦笑する。



そして気が付いた。
こんな夜中に目覚めた訳に。



その時は気が付かなかった。
別に悪夢を見た訳でも、嫌な予感がしたわけでもなかったから。


それでもレスカは夢を見ていた。鳥の夢。自分の夢を。



人は誰もが鳥のようなものだ。

その背には翼があり、羽ばたく事で何処にでも行ける。




だがレスカはそうではなかった。



(そう、あたしはずっと忘れてたんだわ。あの暗闇で)


そこは自分の姿さえ見ることが出来ない暗闇。
レスカはずっとそこに居たのだ。

気がついた時にはたった一人で、闇の中を歩いていた。
疑問も持たずにグルグルと。





その闇に唐突に光が差した。


それはダ・サイダーを照らし、そして自分を照らし出した。


レスカは思い出していた。

自分に翼があることを。

世界に宙があることを。








「なんだぁ?まだ起きてんのかよ。」

突然の声にレスカは驚いて振り向いた。
自動扉に持たれかかりながら、ビール瓶を片手にしたダ・サイダーが立っていた。

「何よ、起きてちゃ悪いわけ?」

カップの残りを飲み干しながら、レスカはダ・サイダーを見上げた。

「あんま夜更かしすっと、おめぇの脳味噌みてぇに顔が皺だらけになっても知らねぇぜ」

ビールを喇叭しながら、ダ・サイダーはニヤリとした笑みを浮かべる。

「失礼ね!あたしの肌はアンタの脳味噌ぐらいツルツルのスベスベよ!!」
「ふふん、俺様の脳とおまえの肌なんか比べんなよな。お前の百倍は滑らかだぜ」



「・・・・・・・あんた、それ今までで一番のギャグだわ」

どうやら脳に皺が無い方が頭がいいと勘違いしているダ・サイダーをジト目で見ながら、レスカは額に手を当てる。

(ほんと、なんでこんなやつと一緒に旅してんのかしらね?あたしは)

未だ胸を張って高笑いをしているダ・サイダーを無視して、レスカはもう一度宙を見上げた。
そんなレスカに興が冷めたのか、ダ・サイダーは「ふん」と鼻息を鳴らしてビールの残りを一気に呷る。

「け、明日んなって化粧のノリが悪ぃとかいってケバイを通り越してバケモンになっても俺様に当たるんじゃねぇぞ」
「な!」


ガン!!


思わず投げたマグカップは、一足早く閉まった扉にぶつかって床に落ちた。







(何しに来たのよ、あいつ!!)

レスカは足元まで転がってきたカップを拾いあげると、ふとそれを見つめた。

カップの描いた放物線が、
扉の閉まる瞬間のダ・サイダーの顔が、
レスカの記憶を結び付け、そして答えを紡ぎだした。




(・・・・そっか・・・・あたしは知ってたんだ)


あの闇の中で、何故自分は孤独を感じなかったのか。
今この宙の中で、なぜ寂しさを感じなかったのか。



暗闇の中、レスカは翼も宙もダ・サイダーの事さえ忘れていた。
それが術の所為だとも知らないで。


だけど、だけど心の奥底は知っていたのだ。


・・・・その確かな存在があることを




レスカは自然と笑みがこぼれるのを感じた。



いつだって、あいつは傍に居たのだ。


そして、あの光が差した瞬間、翼があると気付いた瞬間。


あいつはすでに飛びたっていた。



その翼で。この宙へと。



レスカは微笑みを深めると、その手を宙へとゆっくり伸ばす。




だったらあたしも飛び出そう。

あたしの前にはあいつがいるから。



どこまでも、どこまでも


この宙の高みへ





Fly High !!






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