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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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本編1-2です。
本当は今回ヴィオレは出す気なかったんですけど、それも寂しかったので出てきてもらいました。
でもやっぱり一人だけなんか無茶苦茶別行動しまくってますね・・・・・いいのか?
しかしEpisode1の続きももりもり妄想あるんだけど・・・・・あっはっはっはっは(笑ってごまかし)

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何故今更そんなものを気にするのか。

何故今更動いたのか。

理由なんて分かりはしない。

だがどうでもいいことだ。

そう、どうでもいいことのはずだ。

考えるのは自分ではない・・・・そのはずだ。

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Episode : 1-2

 生臭い獣の臭気が、風に乗ってテュイエの鼻腔を刺激した。
 それが引き金となった様に、彼女の中を占めていた混沌とした感情は消え、意識はただ目前の敵対者のみへと向けられた。
 視認出来る敵の数は6体、その武器は爪、その速さは・・・・・。テュイエの瞳は、映しだした光景を脳へと送り、それは瞬く間に必要な情報へと転化されていく。そしてそれらがある符号を満たした時、テュイエは自分の手にある冷たい感触と重みを確かめ一気に大地を蹴った。

 赤茶色の巨体。パイオニア2へと送られたデータから学者たちが「ブーマ」と名づけたこの原生動物は、地表付近でもっとも多く確認されているものの一種であった。2足歩行をし、その鋭く発達した爪と牙によって獲物を捕獲するとされているのである。実際多くのハンターたちがその爪に、牙に傷を負わせられもしていた。

 とはいえ、テュイエもさすがに新人とはいえそれくらいのことは学んでいた。降下するとなればこういった原生生物との戦闘は避けられない。事実降下の際にはほとんどの場合でなんらかの戦闘が起こる事は常識の一つとされていた。そう、このラグオルは夢見た理想郷などではなかったのだ。頻発する原生生物の襲撃、作業用ロボットの暴走、そして不可解な爆発事故と消えたパイオニア1の住人。政府が沈黙する中、公に口に出すものは居なかったが、それでも誰もが思っていた「この惑星には何かがある」と。
 それを知らないテュイエではなかったが、それでも彼女は降りない訳にはいかなかった。それが幼い頃から夢見たハンターの仕事であり、一人前と認められる為には必要不可欠なことだったからだ。


 何度目かの咆哮がその大きく裂けた口から上がると、自ら飛び込んできた獲物を切り裂かんとばかりに鋭い爪を持った腕が振り上げられた。

ガァァァァァァァァ

 テュイエの体重とスピードを乗せた一刀にその手を刎ね飛ばされた巨体が、身体を仰け反らせて悲鳴を上げた。テュイエはその隙を待っていたとばかりに返す刀でその胴を一閃する。そして大地を通して軽い地響きが伝わるのを確認すると、彼女は更に敵の中へと踊り出ていった。


「へぇ、なかなかやるねぇ。あのお嬢ちゃん」

 2本目の煙草に火をつけると、クロワはまるで出し物を見物する観客の様な顔をして、のんきな口調でそう呟いた。

 テュイエがパルチザンを構えたその時、すでにクロワは銃を仕舞い込むと高みの見物を決め込んでいた。
 先ほどまでのやりとりで、見た目よりも大分幼く見えて仕方の無かったテュイエだったが、今はまるで別人だった。どうやらギルドでの啖呵もまんざら嘘ではないらしい。新人にしては腕も度胸も大したものだった。ヴァーチャル・シュミレーション等でしか訓練をしたことの無い殆どの新人の場合、酷似した幻想と現実の微妙な違いに違和感や言いようの無い不安を覚え、尻込みしたり戸惑うものが少なくは無かった。だが今のテュイエの動きはどうだろう。戦闘に入った時に見せた顔つきの変化、視線の動きや体の流れ、それはただのシュミレーションだけで手に入るような代物ではなく、確かな訓練をしかも現実で受けたもののそれだと言えた。

「確かに、いい動きだ。申し分ない・・・・・だが」

 深く沈むような蒼い瞳はテュイエの右手後ろから現れた新手に注がれていた。


「ハァ、ハァ・・・」

 荒い息を吐きながら軽く刃を振るったテュイエの前に、6体目の巨体が地響きとともに崩れ落ちた。っとその時、右方から吹き付けてきた殺気にテュイエの手が無意識に動いた。

ガッ!!

 痺れるような重たい感触に、テュイエは握り締めていたパルチザンを取り落としそうになる。見ると掲げるように持ったその柄に遮られ、獲物を引き裂く事が出来なかった爪がぎりぎりと音を立てていた。
 テュイエは一瞬息を呑んだ、がすぐに頭を切り替えると不意に身体を沈め後方に飛びのいた。瞬間的に支えを失った紫色の巨体が、バランスを崩し前のめりに不自然な体勢を形作る。テュイエは更にもう一体新手がいる事を横目で見て取りながら、その首を刎ねんとばかりにパルチザンの刃を勢いよく振り上げた。

「!!」

 首を切り落とされたジブゴーマの身体から勢いよく上がった血飛沫に、テュイエは思わずその腕で視界をかばった。それと同時、いやその声の方が幾分早かったかもしれない。

「デバンド!ジェルン!」

 クロワの鋭い声が鼓膜を振るわせる。テュイエはハッと顔を上げようとした、次の瞬間。

バチン!!

 今度は体全体に響くような衝撃がテュイエの身体を駆け抜けた。見ると先ほど確認した一体がその爪を振り下ろしながらも、テュイエとの間にある障壁に弾かれて仰け反るところだった。

 テュイエの一撃が辺りに沈黙をもたらすまで、それから1分とかからなかった。



「ん、この辺なら大丈夫だろ。」

 何本目か知らない煙草を咥えたクロワが、初めての戦闘を終えて半ば放心状態のテュイエに言葉をかけてきたのは、先ほどの戦闘場所から少し外れた水辺に着いてからの事だった。

 水辺に屈み込みイクサスの端末で水質を確認すると、クロワはお決まりのニヤリとした笑みを浮かべて振り向いた。
「さぁてと、お前さんそのまんまじゃ別口のお客さん呼び放題だな。」
 反論の余地を与えずテュイエに血糊を落とすように言うと、クロワ自身は依頼の品だろう辺りの植物を採取し始めた。

「あ、・・・あったかい・・・」
 テュイエはクロワのもっともな意見に大人しく頷くと、思ったよりも温かい水に身体を浸し、服や身体に染み付いた赤黒い液体を浚っていった。水生生物の危険性も一瞬頭を過ぎったが、今までの報告では地表面における水生生物の襲撃報告は無かったし、それに何よりこびり付いた血の放つ臭気は、テュイエでさえ辟易するほどで、しかも気のせいでなければ時間の経過とともに増していくばかりだった。
「ん~~、気持ちいい。」
 本物の日の光の中での水浴びは、それまでの張り詰めたような緊張感を溶かしていくようで、テュイエは思わず大きく伸びをしながら感嘆の声を漏らした。

「はぁ。ほんとお前さんって単純なのな。」
 テュイエが振り向くと、クロワが苦笑混じりの笑みを浮かべながら参ったとばかりに両手を広げて見せた。
「う、何よ。いいじゃない。実際気持ちいいんだし・・・・・それに、あんたが言ったんじゃないのよ・・・」
 口を開けば自分を馬鹿にするクロワに、テュイエは口を尖らせた。実際そのままあの場に留まっていても、他の獣たちが集まってくるのを待つだけの事で、あくまで依頼をこなす為に来ている自分たちにとって戦闘は回避できるならそれに越した事は無かった。それを考えれば場所を移すことも血糊を落とすことも当然だと思われた。たとえそれが全て目の前の得体の知れない男の指示と一致していたとしてもだ。

「まぁいいさ。俺としてもいい目の保養だしな。」
 再び子供の様にいじけるテュイエを見やりながら、クロワはさも可笑しそうに言葉を続けた。
「いやぁ、お前さん頭の中はてんでガキだが身体はなかなかだしな。」
 そんなクロワの言に、テュイエは頭の中が空っぽになると血糊が落ちたはずの顔を赤く染め、そのまま水の中に沈み込んでしまった。
「お、新しい反応だな。・・・・・・・本当に飽きない女だ。」
 そんなテュイエの反応に、クロワは波紋の中心を見つめながら呟いた。実際のところ、通常ハンターズの服には防水加工はもちろん浸水の心配さえなく、水に入ったところで透けたり縮むということはありえなかった。つまりクロワはただ単にテュイエをからかっているだけだったのだが、当の本人の反応が彼の期待にことごとく答えていくので余計に苛めてみたくなって仕方が無かったのだ。

 一方テュイエはというと、流石にこの男の得体の知れなさに危機感は抱いてはいたが、先の戦闘での助力の事もあってあまり強く口を出す事も出来ず、どうしていいか分からなかった。戦闘前の会話や、ギルドでの会話を思い出してはみるものの、目的も素性も見出す事は出来なかったし、第一自分と関わりあう事になんの特も無い気がして仕方が無かった。

チャポッ

 水の中でいろいろと思いをめぐらしたところで結局は答えなど出なかったテュイエは、辺りを伺うように水から顔を出した。
「なんか答えは出たのかな?お嬢ちゃん」
 「お嬢ちゃん」の一言にカチンときながらも、そう言えば戦闘直前にもこんな感じの声を聞いた気がする。テュイエはそう思いながら顔に張り付いてくる髪の毛を掻き上げて声のほうを見上げた。そこには口調とは違う空より深い色の瞳が微笑みながらテュイエを覗き込んでいた。
「別に。あ、その、さっきは、ありがとね・・・」
 出会ったときから自分を馬鹿にしていて、得体が知れなくて、それでも助けてくれた相手。テュイエはこんな時、自分がどんな顔をしてどんな事を言えばいいのか分からなかった。それでも助けてくれたことに感謝はしていたのは事実で、顔を赤くしながらもやっとの事でそれを口にするのが精一杯だった。

「お、少しは殊勝になったもんだな。」
 クロワは目を細めると口の端を持ち上げた。
「べ、別に・・・・そんなんじゃないわよ」
 テュイエが語尾を細めながら呟くのを、クロワの思い出したような問いが遮った。
「そういやお前さん、新人の割にはずいぶんとやるじゃないか。口先だけじゃなかったんだな。」
 聞くが早いかテュイエは初めて誉められた生徒の様に顔をほころばせた。
「そ、そう?ずっと頑張って練習してきたんだ。えへへ。」
「まぁ経験不足って点を除けば大したもんだよ、正直なところな」
 経験不足、その言葉はテュイエ自身身に染みて感じた事だった。訓練の時と違って生の戦闘は思った以上に何が起こるか分からない。今回のことにしても、クロワの補助魔法が無ければ自分はあそこで確実に一撃を受けていただろう。そう考えると、自分はまだまだ赤子のようなもので、初めてテュイエは「一人前」という言葉が持つ重みと距離を感じたような気がしていた。もちろんここで立ち止まるつもりなどは毛頭無かったけれど。

「お前さん、誰に師事してたんだ?」

 考えに嵌っていたテュイエをクロワの何気ないような一言が引き戻した。
「え?」
 テュイエは言われた事の意味を判じかねて、反射的に聞き返していた。
「いや、あれだけの動きだ。誰かに師事してたんじゃないのかと思って?違うのか?」
 不思議そうな顔で尋ねてくるクロワに、テュイエは一瞬口篭もったが得意そうな笑みを浮かべると一気に捲くし立てた。
「聞いて驚け、自己流よ。あたしみたいな孤児に教えてくれる人なんて居なかったもの、ずっと見様見真似で訓練してきたの!どう?驚いた?」
 鬼の首を取ったように言葉を続けるテュイエに、クロワは片手で噴き出すのを必死に堪えながら、もう片方の手をもういいとばかりにテュイエの前で振って見せた。
「?なに?もっと聞きたくないの??」
「あぁ、もう十分十分。・・・・それよりもそろそろ水から上がったらどうだ?っと頬にまだ血が付いてるぜ」
「ん?うん、そうする。ちょっと待って」
 なんだか狐に抓まれたような気がしたテュイエだったが、温かいとはいっても徐々に体温を奪っていく水の中だ、確かにそろそろ上がったほうがいいだろう。テュイエは最後にもう一度頭から沈み込むと、顔と身体を十分に拭ってから勢いよく立ち上がった。
 水音にかき消されそうなほど低い呟きが耳に届いたのは、風のいたずらだったのかもしれない。


「・・・・・・・だから言ったろ、もう少し賢くなれって・・・・・」

 タオルを取ってもらおう、そんな事をぼんやりと考えていたテュイエの前には、底冷えをするような瞳をした男が一人佇んでいた。その銃口を1分のズレも無く自分の眉間に合わせたまま、男の声だけが冷たく響いた。


「テーラーはどこだ?」


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 紫銀の輝きがゆっくりと収束する。
 ヴィオレはぼやけた視界が確かな輪郭線を結ぶのを待つかのように呟いた。
「もはやもぬけの殻か」

 見回すまでもなく砕けたガラスの破片や倒れた家具が散乱するそこは、誰が見ても一目瞭然の廃屋といってよかった。
 屋敷そのものは住んでいた者の数からすれば広い方だと言えただろう。しかしそれ以上に広く寒々しい感じを受けずにはいられなかったのは、あまりに少ない家具や調度品の所為であり、生活観の希薄さはその荒廃以上の寂しさを与えるには十分すぎるものだった。

「主命無くば、己が意味さえ無くす・・・か」
 ヴィオレの視線がホールの一角にわだかまる影の上で止まった。壊れた人形の様に打ち捨てられた亡骸と言えばいいのだろうか、いや遠の昔に朽ち果てたミイラとアンドロイドの残骸だ。どこか哀れむような表情を一瞬浮かべると、ヴィオレは再びホールを見上げた。

「やはり鍵は「風」か」
 誰にともなく口を開いたヴィオレに、答えるかのように瞳の奥が熱を帯びた。その感覚にヴィオレは自嘲の笑みを浮かべながら言葉を続けた。尋ねるように、言い聞かせるように。

「こんな私に、今更どんな真実を見ろと言うのですか?・・・・・・大佐」
 答えるものの無い屋敷が、ただ沈黙のみを返す。っとその時、彼女の足先が何かに触れた。

ヴン

 ノイズの入った古い画像、そこに映し出された家族の肖像。ヴィオレはゆっくりとそれを手にとると、ノイズの向こうをただ見つめた。

「・・・すまん・・・イオレ・・・・結末を・・・見届けてくれ・・・」

 脳裏に焼きついた声が蘇り、ヴィオレの手が小さく震えた。誰が見ているわけでもない、しかしそれを悟られまいとするように画像のスイッチを切断する。ほんの小さなフォトフレーム、そのヒビの入った外枠をゆっくりと指でなぞるとヴィオレはそれを腰のポーチに仕舞い込んだ。

「これが答えですか?」
 きびすを返すヴィオレの背中に、かすかな声が響いた気がした。

「・・真実は・・・・こにある・・・」


 人気の無い一角にある屋敷から出ると、ヴィオレは一度振り向いた。もう二度と足を運ぶ事は無いだろうそれを見つめ、瞳の奥に焼き付ける。紫銀の輝きに閉じ込めるように一瞬歪む視界。ヴィオレは表情も変えずにそれを確かめると、「風」を追うべく足を踏み出した。

「「風」の行く先・・・・・そこにアレがある。全ての始まりと終焉が。そうだろう?アヴァロン」
 言葉は風に流れ、音は解放される。瞳の奥だけが、ただ静かに答えを返した。
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