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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
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向こう側克哉兄第2弾です。
懺悔、追認(現在は拍手御礼)と一緒に読むとより分かりやすいと思います。
コンセプトは懺悔と基本的に同じです。
「罰」世界で達哉が戦ってる一方、「罪」側の人々もまた様々な思いにとらわれていると言う事で・・・・
基本的に「罪」側克哉はブラコン度3割増強になっています(汗)。
舞耶もいませんし、私的に背負ってるものが大きい人ほど好きなもので・・
克哉は「罰」より「罪」の方が好きです。まぁ性格が同じならですけどね。


- 悔恨 -

いつもそうだ、いつも・・・
僕は達哉を救えない


あの日、もう少し早く僕が迎えに行けば
・・・取り返せない過去を、今でも悔やむ


・・・・十年前
それが全ての起点
この現実の始まり
この現実の・・・・



病院に運び込まれた達哉の顔
苦痛にゆがむ弟の顔
それを見るのが辛かった
僕はその時知らなかった
それさえ序曲に過ぎないことを
本当の苦しみを、
本当の痛みを


病院に運び込まれて数日
達哉は警察の事情聴取を受けていた
もちろん父も立ち会っていた
犯人は今騒がれている連続放火殺人犯
達哉の証言はかなり有効なものだった
父は逮捕の決め手とさえ言っていた
そう、そう言っていたのだ
あの夜までは・・・


あれはひどい夜だった


いつものように、僕は病室にいた
この時間、母は夕食の準備に帰るからだ
達哉は眠っていた
母に聞くと、今日は一日そうらしい
起きてもまたすぐ眠ってしまう
その繰り返しだと言っていた
父は連日の聴取の疲れだろうと言っていた
実際僕もそう思った


それから数刻、不意に達哉が目を覚ました
もうすぐ母が来る時間
そう思った時だった
達哉は辺りを見回すと
僕に気がつき尋ねてきた


「おねぇちゃんは?」


一瞬僕は戸惑った
達哉の言っている意味は分かった
神社に倒れていたもう一人
手に火傷を負っていた少女
きっと彼女の事だろう


しかし彼女はもう居なかった
元々、事件の次の日に引越しが決まっていたらしく
怪我の軽さも重なって
早々に転院していたからだ


僕が答えに詰まっていると
達哉は急に顔をゆがめた
「うあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
達哉の悲鳴とも怒号ともいえない叫びが
病室中にこだまする
「背中が痛いよ!!熱いよ!!おねぇちゃん!!」
達哉は頭を抱えうずくまり
混乱したように叫びつづけた


なす術がなかった
僕は何度も何度も達哉の名を呼び
達哉の身体を揺さぶった
しかし達哉は正気に戻るどころか
ますます激しく叫びつづけた
僕はナースコールを押した


僕は呆然としながら
手足を抑えられ
鎮静剤を打たれる達哉を見つめていた
達哉の悲鳴が、叫びが
耳のそこに張り付いて離れない


「おねぃちゃんが、おねぃちゃんが燃えちゃうよーーーーーー!!」
「・・・・・たすけて・・・・・・」
眠りに落ちるその瞬間
達哉は確かに助けを求めていた


父と母が駆けつけたとき
達哉は薬で眠っていた
だが、薬が切れ再び目覚めると
発作のように叫びつづけた


その叫びは一晩中止む事がなかった
今までにない長い夜だった


次の日、達哉は全てを忘れていた


「ここはどこ?なんで僕ここに居るの?おにいちゃん」
それが目覚めた達哉の第一声だった
僕も父も、そして母も答える事が出来なかった


達哉は記憶を封じた
当然といえば当然なのかもしれない
そうすることで自分を守ったのだろう
壊れてしまう自分の心を


僕達家族にはそれを止める事は出来なかった
ただその封印を壊さぬようにする事が
唯一達哉にしてやれる事だった
その代償がたとえどんなに大きくても



父の免職


それはあの後すぐだった
達哉の証言がなくなり
逮捕の決め手がなくなった直後
あまりのタイミングに、僕は裏があることを直感していた
父は何も言わなかった



あれから十年、僕は刑事になった


全ての縛鎖を断ち切るため
真実を知るために


しかし真実は未だ見えない


達哉は誰にも心を開かなくなった
あの夜以来
達哉が封じたのは記憶だけではなかった
友人を作ることも
助けを求める事も
達哉はしなくなった


そして異変が起こった


はじめは根も葉もない噂だった
それは確かだった
JOKERなど存在しない
仮面党など存在しない
はずだったのだ


だがこの街は何かが狂った
奇妙な事件が現実となった
根も葉もない噂が真実となっていった


今思えば達哉ははじめから中心にいたのかもしれない
仮面党のことをいち早く僕に聞きに来たのは達哉だった


だがその時の僕は達哉を頭ごなしに叱った
達哉が友人を連れてきたからだ


僕は嬉しかった


達哉が一人ではない事が
だからこそ関わって欲しくなかった
もう二度とあんな思いをさせたくなかったから


それが甘かった
気づいたのは爆弾テロの犯人が公開されたときだった
達哉はすでにこの件の深いところに関わっている


僕は恐れた


十年前が蘇るのではないかと
あの夜が蘇るのではないかと


しかし時は遅かった
警察はその機能を停止し
ナチの残党が空を覆い
街はその異様をあらわにした
ナンセンスという言葉自体が
意味を持たないものへと変わる
常識は非常識によって書き換えられていた


僕が達哉を見つけたのは
セブンスの中庭だった
光柱が現れたと聞いたからだ


懐かしいあの場所が
地獄のように見えた


緋の花園に


十年前の景色がダブル
僕はまた達哉を救えなかった



見つかったのは達哉一人
医者は「生きているのが不思議なほどだ」と言っていた
それは暗に、意識を取り戻す可能性が
限りなく低い事を物語っているようだった


達哉はまた失ったのだ
友人を、大切なものを
僕はまた守れなかったのだ
助けを求める達哉の心を



耳の奥底で声が聞こえる


「・・・・たすけて・・・・」と



達哉、おまえは今どこにいる?・・・・・・
 

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