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リク内容はちゃんと覚えて居ますか?
覚えてなかったら1話から読み直してくださいね!!
(なんで偉そうなの?)

だって、それだけの価値のあるお話なんだもん!ぷんぷん
(キニシナイで続きをどうぞ!)

acqua様のサイトはこちら -acquaのネタ帳!!


∞―――――――――∞ 喪失 03  ∞―――――――――∞


透流を部屋に運び込み、とりあえずアイギスを残して全員が自室へと戻った。
意識のない彼女ではあったが、外傷もなく、様子を見るしかないと判断したためだった。

部屋に戻っても、荒垣は落ち着かなかった。
彼女から、分離するように離れた、ペルソナ。

彼女が、召喚するのを見た事がなかった、ペルソナ。
風花が、死神と称したペルソナと酷似した…。

目の前で、それらは一つに重なり、確かに自分を見た。
何かを、伝えるかのように、じっと…。

「一体、何が起こってんだ…?」

はぁ、とため息を吐き、荒垣はベッドに横になる。
気持ちが、落ち着かず、なかなか眠れず、明け方になってようやく訪れた睡魔に、身を任せた。


「荒垣さん、起きていただきたいであります。」

身体を、揺すられ、耳元で、誰かの声がする。
ぼんやりと、そう、認識しつつも、荒垣は未だ眠りの中だ。

「あーらーがーきーさーーーん!!」
「うわっ!?」

大きな声で、叫ばれ、荒垣がガバっと起き上がると、そこには、真面目くさった表情のアイギスが立っていた。

「あ、アイギス!? お前、どうやって入った!!」
「…鍵を、解除させていただきました。 解除には、124秒かかりました。」
「お前…っ!」

「荒垣さん、彼女が目覚めたのですが、様子がおかしいであります。
一緒に来ていただきたいであります。」


アイギスの言葉に、荒垣の顔色が変わる。
ベッドから降り、コートを羽織ると、荒垣はアイギスを伴って、彼女の元へと急いだ。

「お前、俺を先に起こしに来たのか?」
「はい。」
「…そっか。サンキュ。」

アイギスの髪をくしゃりとかき混ぜ、荒垣は微笑む。
彼女の部屋に入ると、ベッドの上に起き上がった透流が、ぼんやりと宙を見つめていた。

「透流。」

荒垣が声をかけるが、彼女はぼんやりとしたままで、反応しない。
ベッドサイドに歩み寄り、荒垣が、肩に手をかけると。

びくっと怯えるように、荒垣の方を振り返った。

「透流…?」
「誰?」

見知らぬ者を見る目で、荒垣を見上げる透流に、荒垣は背筋が凍りついた。

「荒垣さんでも、ダメ…ですか。」

部屋の入り口に立ったままのアイギスが、悲しそうにつぶやく。

「アイギス、一体…。」
「透流さんが、目覚められたので、体温その他を確認しようとした所、誰か、と訊ねられました。
どうやら、私の事が分からないようでしたので、一番、覚えているであろう荒垣さんを呼びに行きました。

…でも、荒垣さんでもダメであります…。」
「おい、透流?
お前、アイギスも…俺も、覚えてねえ、のか?」

まさか、と思いつつ、荒垣は膝を着いて彼女と目線を合わせてから、訊ねる。
透流は、困ったような表情を浮かべるだけで、応えない。

「アイギス、桐条と、それから山岸を呼んで来い。」
「了解であります。」

ぱたぱたと駆けていく、アイギスの足音を聞きながら、荒垣は彼女を見つめる。
その顔は、心底、彼女を心配しているという表情で、見つめられた透流は、戸惑う。

「…自分の、事は、わかんのか?
お前、名前は?」

彼女は、口に出そうとしたらしく、唇を動かした。
だが、そのまま、止まってしまった。

「…名前…、私の…。」
「常磐…透流。 聞き覚え、ねえか。」
「…分からない。
それは、私の、名前なの?」

震える声が、荒垣に訊ねてくる。
怖いのだろう、その手が、荒垣に伸ばされる。
思わず、抱きしめた荒垣に、すがりつく透流を、なだめるように、その背中をさすってやる。

「大丈夫。大丈夫だ…。
すぐに思い出す。」

…目が覚めた時、何かが自分から抜け落ちた様な感覚に襲われ、思わず起き上がった。
自分の顔を、覗きこんで来た、碧い瞳。

その、心配そうな光には、覚えがあるのに、何故か名前が出てこなかった。
そして、そのコは、部屋を出て行ったと思ったら、今度はこの人を連れて来た。

自分を、心配そうに見つめる、瞳。
その、声。
今、自分を抱きしめてくれる、温かい腕。

知ってる、気が、するのに、思い出せない。
まるで、見知らぬ場所に、突然放りだされたみたいに、怖い。

どうして、こんな所に、私はいるのだろう?
この人たちは、一体誰なんだろう?

…どうして、私は自分の事が分からないんだろう?

知っている筈なのに、思い出せない。
答えがすぐそこに在るはずなのに、届かない。

そんなもどかしさが、彼女を支配していた。

「常磐!!」
「透流ちゃん!」

駆けこんで来た、二人の少女。
その二人も、心配そうな、表情を自分に向けている。

唐突に、彼女は悲しくなった。
今、ここに駆けつけてくれた人たちは、きっと、すごく自分を愛してくれているに違いない。

そんな気持ちが、分かるのに、自分は、思い出せず、ただ、違和感を覚えるだけ。
この人たちが愛した自分は、ここには居ない。
私は、ただの抜け殻で、それを知ったら、この人たちは私を愛してはくれないに違いない。

そんな、想いが、彼女の脳裏をよぎる。

それは、彼女が抱えていた、不安、そのもの。
だが、今の透流には、分からない。

ぽっかりと、穴が開いたように、思い出せないのだ。

「あの…、もう、大丈夫です…。
ちょっと、混乱しただけで…。」

透流は、そう、口にすると、荒垣から、身体を離そうと、その、胸を押しやった。

「あ、ああ…悪ぃ…。」

慌てて身体を離す荒垣の瞳には、彼女への気遣いに溢れていた。

「あの、すみません。
私…名前も、どうしてここに居るのかも、全く分からないみたいなんです。」

先ほどまでの、怯えを、不安を綺麗に隠し、透流は事実を、ただ口にした。
ベッドサイドに、膝をつき、彼女をじっと見つめている荒垣の、瞳が僅かに曇ったが、彼女はそれには気付かない。

「…ともかく、病院へ行って、診てもらった方が…いいだろう。
荒垣、アイギス、私と一緒に来てくれ。

山岸は、学校へ行くように。
岳羽と、伊織にも事情を伝えて置いてくれないか。」

美鶴は、そう口にすると、病院に連絡するといって部屋へと戻っていった。
風花は、じっと、彼女を見つめていたが、荒垣に目配せすると部屋を出て行った。

「アイギス、ともかく、着替えさせて、病院に行く準備をしておいてくれるか。」
「了解であります。」

荒垣は、アイギスにそう、指示すると、彼女に微笑みを残して部屋を後にした。
静かに、ドアを閉めると、風花が、廊下で待っていた。

「先輩…。」

風花が、心配そうに荒垣を見上げてくる。
とりあえず、二人は、自販機の前まで移動する。

荒垣に、温かいお茶を渡された風花は、一口のんで、ふう、と息を吐いた。

「透流ちゃんの中の、ペルソナの反応がすごく弱いんです。
いつもは、誰よりもペルソナの力を感じるんですけど。

…ただ、昨日初めて気付いたんですけど、そういえば、彼女からはいつも死神に似た気配も一緒にしてたって。」
「死神?」
「昨日の、タルタロスで、刈り取る者を撃破してすぐに死神が出現したって、私、皆さんにお伝えしましたよね。
透流ちゃんが倒れた時に、居た、あの死神の気配。
害意がなくて、なんだろう、迷ってるような…、でも、確かに属性は死神で…。

私、何となくその気配に覚えがあるなって思ってたんですけど…。
さっき、透流ちゃんの部屋に行った時、分かったんです。

あの気配、いつも、透流ちゃんと一緒にあったんだって。
それが、今は、ないんです。」
「山岸、見たまんまでしかないから、お前がどう思うか、聞かせて欲しいんだが…。」
「はい。」
「アイツが、その、死神と対峙して、俺らが駆け付けた時、アイツから、死神と同じ姿をしたペルソナみてえなのが出て来 た。

まるで、分離するみたいにな。
其れは、目の前に居た死神と、一つになって、そんで、消えちまった。

アレが、あいつのペルソナだとして、俺は召喚してるとこと見た事がねえんだが…、お前、知ってるか?」
「いいえ。
透流ちゃんから出て来た、あの、死神属性のペルソナみたいなものは、私も初めて見ました。
あ、桐条先輩と、真田先輩は、知ってるみたいでしたよね。」
「ああ。」
「出て来たアレは、目の前の死神と一緒に消えちまったが…、
アイツが、思い出せねえのはそれが原因としか…思えねえよな。

上手く言えねえが、影時間に起こった事が、事実とは違う事に置き換えられるみてえな、んな感じがすんだ。」

風花は、荒垣の言葉を、じっと聞き入っていたが、ゆっくりと、同意するように頷いた。

「私も、同意見だな。」

いつのまに現れたのか、美鶴が、立っていた。

「彼女の、影時間への適性と、ペルソナの検査を、してみようと思う。
前回の入院時のデータと照合すれば、何かつかめるかもしれない。」

「あの…、お待たせしました。」

荒垣が顔を上げると、アイギスに手をひかれた彼女が立っていた。
サマーニットとミニスカートに、カーディガンを羽織っている。

「すぐに車が来る。
大丈夫、君は何も心配する事は無い。」

美鶴が微笑みかけると、彼女は、ぎこちない笑みで応えた。
その、表情に、荒垣は胸を突かれた。

荒垣は、その表情をよく、知っていた。
独りで何もかも、抱え込んでいる時に、よく見たその表情。

無理するな、と。
泣いちまえ、と。

抱きしめてやりたい衝動にかられたが、今、必死で己を御しようとしている彼女の気持ちを考えるとできなかった。

ともかく、原因も、現状も分からない今、病院で検査でもなんでもやってみるべきだろう。
美鶴の手配した車に、乗り込むと、病院へと向かった。

心配そうに見送る、ゆかりと風花、順平、天田…そして、真田を残して。

病院で待っていたのは、チドリを担当している、例の医師だった。
既に、検査の段取りは整えられており、不安な表情の彼女に笑顔を向けると、彼女と一緒に奥の棟へと消えた。

「…入院、とか必要なのか?」
「いや…身体に異常が見られないようなら、それは必要ないだろう。」

病院の別棟、一般の患者や職員は入れない、最奥にある、応接室で、三人は透流の検査が終わるのを待つ。

「学校は、当面休む事に…なるだろうが…。」
「昼間は、俺が一緒にいる。
それから、アイギスを、つけといてくれ。
…さすがに、今の状態で俺が始終一緒って訳にいかねえからな。」

寂しげに、笑う荒垣を、アイギスはじっと見つめた。
いつだって、彼女の気持ちを独り占めして、そばに居たいのに、いつだって荒垣が彼女の横に、当然のように居て…。
それが、どこか悔しくて、腹立たしかった筈なのに、何故か、悲しくなる。

「このまま、記憶が戻らないとなると、どうしたものかな…。」
「桐条…。」

責任を、感じているのだろう、美鶴は物憂げな表情で、呟く。
こうして、何かある度に、自分の責任だと、いろんなものを抱えてしまう。

戦いに、巻き込んだのは確かだが、参戦するのを決めたのは、それぞれの意志だ。
本来なら、美鶴がそんな風に全責任を背負いこむ必要など、ないと荒垣は思うのだが、この戦いが、命の危険を伴うものなのだと、仲間達がどれくらい認識しているのかは、正直分からない。
真田はトレーニングの延長のように捉えているし、順平にしても、正義のヒーローだから、死なないとでも思っているかのように、どこか気楽に構えているふしがある。

「まぁ、検査の結果と、数日様子を見て決めりゃぁいい。
…どうしても記憶が戻りそうにねえなら、一つ、考えもあるしな。」
「考え?」
「荒療治ってヤツだ。
アイツの状態如何では、危険すぎる賭けになるかもしれねえから、それは、まぁ、最後の手段だな。」
「…荒垣…。」

「俺は、記憶が戻らなくても、アイツが平穏に暮らせるってんなら、そんでもいいんじゃねえかと…思う。
だが、自分の事も、何も思い出せないってのは、怖えだろうと、思う。
何かを、抱え込んで、誰にも何も言えなくなって、過去に怯えながら、生きてくのは…辛い。」

手元に、視線を落したまま、、静かな声で、そう、口にする荒垣に、美鶴はドキリとする。
過去に起こった事故。
それを、独り、抱え込んで、自分にも、真田にすら何も語ろうとしない、荒垣には、彼女の抱える孤独が、見えているのかもしれない。

コンコン。

ノックの音に、アイギスがドアを開けると、医師が立っていた。
何やら数字が羅列された書類を手に、入って来たその医師は、美鶴と荒垣の正面のソファに座ると、数枚の紙を、目の前に置いた。

「先生、あの、彼女は…?」
「うん、今は眠ってる。
ペルソナの検査で、ちょっと眠ってもらう必要があってね。

いつもは、入院してもらって、眠ってる間に検査しちゃうんだけど、今回は、そうも言ってられないからね。」
「それで、彼女は。」
「結論から言うとね、今の彼女では、ペルソナを呼べない。
影時間への適性は、失われていないから、危険な状態だと思う。」

「危険?」

医師の言葉に、荒垣が反応する。

「うん。
影時間で、シャドウに襲われる人間にはある傾向が見られるんだ。
憎しみに囚われていたり、強い怒りに囚われていたり…、あるいは、深い絶望にあったりね。

精神的に健康な状態じゃないと、影時間でシャドウに遭遇する確率が跳ねあがる。
彼女は今、精神的に極度の緊張状態にあって、不安も抱えてる。

…正直、この病院に入院するより、君たちと一緒に居る方が、彼女にとっては安全だと思う。」

影時間に、象徴化するのは、自然な事で、それは、結果的に人間をシャドウから守っているのだと医師は告げる。
影時間に、象徴化せず、またペルソナ能力に目覚める事が出来ないものは、シャドウに襲われる危険を常に伴っているのだ。
後天的に、影時間への適性を得た者は、心の闇を抱えて影時間に落ちてしまう者と違って、殆どシャドウには遭遇しないが、可能性はゼロではないのだ。
事実、桐条の関係者で、影時間の適性を得たものが、シャドウに襲われ、再起不能になったケースは、数件あるのだ。

重苦しい空気に包まれ、全員が沈黙する。
彼女を影時間に守る事は、問題ないだろう。
だが、いつまでそれが続くのか、それが問題なのだ。

彼女にとっても、自分達にとっても。


「大丈夫です。私が、守ります。」

沈黙を破った、アイギスの言葉に、美鶴と荒垣が顔を上げる。
そうだ…、今は、考えていても仕方がない。
他に、手はないのだ。
…振りかかる火の粉を、払う以外には。

「桐条…、今夜様子を見て、ヤバそうなら、俺の考えを話すから、影時間の後、時間くれるか。」
「…ああ、分かった。」

三人は、彼女が目を覚ますのを待って、寮へと戻った。

∞――――――――――――――――――――――――∞
記憶と一緒に抜けてしまったのは・・・
忘れるって事がどう言う事なのか
失くすって事がどう言う事なのか
うわぁぁぁぁん。・゜・(ノД`)・゜・。 
(リクエストしたのお前だろうと小一時間)
 

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