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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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本編1-1です。完結してないのに乗せる阿呆です・・・すみません。
一応テュイエ&クロワは序章からの直接の続きで、ヴィオレのほうは時間的に
序章と今回との話の間に少し時間があると思ってください。
ちなみにヴィオレの方に出てきた名も無き男は、まぁ多分もう出てこないので本当に名も無き男です。
ただ、ヴィオレのほうは少し過去の話とかも書いてはみたいと思ってはいるので、
もしかしたらその時に出てくる可能性があるかもしれませんけどね。
さてさて1-3はいずれでるのか・・・何年越し?いや、一応途中まで書いてたのは見つけたぞ!!

∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽

前へ。もっと、もっと前へ。

立ち止まってなんていられない。

ここはまだ通過点のひとつに過ぎないのだから。

歩き続けなければいけない。

その背に手が届くその時まで。

それが、約束だから。

∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽∞∽∽

Episode : 1-1

 生命の感触。それが正直な感想だった。
 惑星ラグオルの地表は、植物の吐き出す独特の匂いと熱気に満ち、事務的でどこか冷たささえ感じるシップに飽きの来ていたテュイエにとって、不思議な懐かしさと魅力に溢れていた。

 降り立った所は居住区の一角ということだった。依頼内容が居住区近くの水辺に群生しているという、ある植物の採集だったからだ。一見、人手を要するようには見えない依頼ではあったが、Cカテゴリーとなった理由は良くわかった。つまり植物を持ち帰るための偽装工作である。現在パイオニア2への惑星ラグオルからの生物の持込は一切厳禁という事いなっている。しかし実際問題としてどこの世界にも裏ルートと言うものが存在する。表ざたにならないその世界では、政府筋やラボ、軍関係での研究用だったり、貴族や金持ちたちの趣味の一環として、そういった植物や生体が良い値で取引されていると言う事はハンターたちにとって周知の事実であった。
 そして、今回の依頼もご多分に漏れずそういう筋のものだった。表向きは植物データの採集と言う事になっているが、その実植物そのものを持ち帰る事が目的だった。
 
 正直なところ、テュイエは依頼の内容それ自体にはさして興味など無かった。ただ、何度も繰り返し話に聞き、夢にまで見ていた憧れのラグオル。そこに今自分がいる事に純粋に感動し、そこにいるだけで一人前のハンターになったかのような錯覚に身を浸していた。

「そういや、お前さん名前は?」
 ギルドから渡されたらしい資料と地図とを比較しながら、コントロールパネルを弄くっていた男が、思い出したかのように訪ねてきたのはそんな時だった。
 
 そういえば、成り行きで同行をしたものの、自己紹介さえしていなかった事をテュイエは思い出した。IDチェックや諸々の処理はすべて腕のリストPC(イクサス)で行う昨今、一々書面や口頭で手続きをする手間がなくなった分こういった初歩的なことを忘れる事もしばしばあった。
 テュイエは改めて目の前にいる男を見つめると、今更の様に不思議な男だと思った。長身でバランスの取れた体躯、白い服に映えるプラチナブロンド、そして水底の様に深い紺碧の瞳。声をかけてきた時にはあまりよく見ていなかったが、今思うと結構綺麗な男である。何も知らずにただ見かけただけなら、いい男だと思ったかもしれない。しかし・・・・・

「ん?どうした?名前がないのか?それとも名前さえ忘れたのか?お前さんぼけてそうだしな」
 リストPC(イクサス)が割り出した植物の群生地を地図上に表示させながら、男はニヤリと笑って付け加えてきた。

 こいつだけは好きになれない。テュイエは心の底からそう叫んでいた。
初対面のくせに嫌に馴れ馴れしいもとい馬鹿にしたような態度に、テュイエの頭は一気に加熱していく。そうなると胡散臭い点ばかりがものの見事にピックアップされていくのが人間心理というもので、フォースのくせに手持ちの武器が銃なのも、したり顔で自分を見下ろしてくる様も、何もかにもが気に障ってしょうがないのである。そんなこんなで、テュイエの中でこの男への印象が限りなく悪いところに格付けされたとしても仕方の無い事だったかもしれない。

「テュイエよ、T・u・i・e・r!!自分の名前を忘れる馬鹿が何処の世界にいるのよ!あんたこそ一体なんなの?大体人が依頼を受けようとしてるところに横から入ってきたりして、恥ずかしくないわけ!!」
 売り言葉に買い言葉(勝手に売り言葉と思っただけかもしれなかったが)、テュイエは肩を怒らせ息も切らせずまくしたてた。

「あぁ、俺も名乗ってなかったな。俺はクロワ。見てのとおり、通りすがりのフォースだよ」
 そんなテュイエの様子さえ面白いのか。クロワと名乗った男はニヤニヤと笑ったまま、そ知らぬ顔で答えてきた。

 実際クロワはこの状況を楽しんでいた。
 面白い女だ。クロワは顔を真っ赤にしながら、それでもなんとか我慢しようと葛藤しているのが目に見えてわかる彼女を眺めながらそう思っていた。
 クロワにとって、今まで周りに居た者といったら、皆打算的で己の為ならどんな嘘も裏切りも平気で行うような者たちばかりだった。そういう気風の地に居たと言ったらそれまでであったが、あまり気分のいいものではなかったのも確かだった。そこにきて、このテュイエという女だ。あまりに馬鹿正直で分りやく、おおよそ謀略といったような人間の暗部を感じさせない彼女のカラーに、つい興味が引かれずにはいられなかった。

 そんなクロワの思考など知る由も無いテュイエは、どう考えても自分がからかわれているということに怒り心頭で、反撃のつもりでわざとらしい視線を投げつけた。
「通りすがりねぇ?怪しいもんだわ。まぁ同行させてくれたのには一応感謝してるわ。一応ね・・・・・でも当然信用は出来ないわよねぇ。一体何が目的?」
 何の前置きも含みも通り越して単刀直入に疑問を投げかけてくるテュイエに、苦笑さえ浮かびそうになるのを堪えながら、クロワは煙草を咥えるとさらりと答えを返した。
「もちろん報酬。そういったら信じるのかい?お前さんは。」
「ば・馬鹿にしないでよ!!信じるわけ無いでしょ。」

 反撃が墓穴になってしまった事に赤い顔を更に赤くして怒鳴り返してから、ふとテュイエは自分の問いかけの本当の意味に気がつきはっとした。自分がこの男の目的も素性も全く知らないという事がもたらす危険性に、そして何より自分がそれを完全に失念していた事への深い絶望に。そう、何度も思ったはずだ、おかしな男だと。しかし自分は感情にばかり気を取られていて、追求すべき点を、選ぶべき選択肢をことごとく間違えて来たのだ。そう思った瞬間、何度も繰り返し聞いたはずの言葉が蘇った。

「いい?自分の行動に責任をとるのがハンターよ。たとえどんなことでもね。だから、常に考えなさい、自分に問い掛けなさい、それが最良の選択かどうかを。」 

 テュイエはのぼせかけていた自分に激しく狼狽せずには居られなかった。試験に合格した事で舞い上がっていた自分、前へ進む事だけに囚われて周りに気を止めていなかった自分。思えば本当に必要だったのは一歩前ではなく、もっと前を向くべき事だったのだ。あの言葉は、ずっとそれを教えていたはずなのに・・・・・・・・
 自分の浅はかさと未熟さに打ちのめされ、テュイエは俯き黙り込んでしまった。

 そんな突然のテュイエの豹変振りに、クロワは少し驚いたように見つめるとふと目を細めた。そして、その心を見透かしたかのように軽く鼻で笑いながらテュイエに向って口を開いた。
「どうした?急に大人しくなっちまったな。腹でも減ったか?それとも・・・・・」

 先ほどまでとは違い、どこか少し印象が変わって聞こえてきた声音にテュイエが視線を上げようとしたその時だった。


 ガゥン!!


 冗談にしては腹の奥底に響くような音を立て、頬を掠めて一陣の風が吹きぬけていった。

「落ち込んでるとこ悪いな。」

 立て続けに銃声を響かせながらクロワは底意地の悪い笑みを浮かべると、目を丸くしているテュイエに楽しそうに告げてきた。

「でもお前さんもハンターになったんならもう少し賢くなるんだな。でないと長生きなんてできないぜ?・・・・・・・・いろんな意味でな。」

 クロワの声が最後まで耳に届くより早く、テュイエは軽く右手を振りながら口の中で小さく囁く。音声と振動を照合したリストPC(イクサス)が歪曲空間から一振りのパルチザンを呼び出すと、テュイエはすばやくそれを構えて振り向いた。


グォォォォォォォォ


 赤茶色の剛毛に覆われ鋭い爪と牙を覗かせた巨体が、群れをなし咆哮を上げながらこちらに向ってゆっくりと近づいてくるところだった。


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 白衣や軍服に身を包んだ人々が忙しなく行き来している。ヴィオレはそんな光景を何とはなしにただ見つめていた。その無表情に見える瞳の奥に、かすかな郷愁とも悲哀とも言えない複雑な色を湛えながら。

「・・・殿・・・ォレ殿・・・ヴィオレ殿」
 幾度めかの声にヴィオレはようやく眼下に向けていた視線を上げた。
「ああ、すまない。」
 応接室と言うには質素だが必要最低限の調度が備わった小部屋の中は、階下の喧騒が嘘の様に静まり返り、ヴィオレと今しがた入ってきた男の声だけが響いていた。
「御珍しいですね。貴方が人前で考え事をなさるとは。」
 実際は60を超えようかと言うところだったが、どうみても50代前半にしか見えない男は、目を細めるとどこか懐かしそうにそう告げた。

「手間を取らせてすまなかったな」
 一瞬苦笑めいた笑みを浮かべると、ヴィオレは手短にそう告げた。男は一度いずまいを正すと、一枚のデータチップを彼女へと差し出した。
「いえ、こちらこそお待たせして申し訳ありませんでした。これがお尋ねの資料になります。・・・・しかし何分急でしたのでご期待に添えるかどうか・・・・・」
 すまなそうに語尾を濁す男を無言で制すと、ヴィオレは手早くデータをリストPC(イクサス)へとDLし、一通り確認をする。

「・・・・降下?」
 ヴィオレの視線が不意に鋭さを増した。
「はい、どうやらお尋ねの人物は現在ラグオルに降下中との事です。」
 男の方はというとアナクロにも書類の束を捲りながらそう答えてきた。
「確かハンターはDクラス以上でなければ降下は認められて居なかったはずだな。・・・・・・・・・・同行か。だが生まれや経歴から見るにそのようなツテがあるとは思えんが。」
 呟くようなヴィオレの言葉に、男はいたずらが見つかった子供の様に恐縮すると、言葉を選びながら慎重に口を開いた。
「詳細は目下不明です。しかし目撃情報を総合したところによりますと、どうやら偶然居合わせたハンターが同行の手続きを取った事が分りました。その者のデータも添付しておきました・・・・・・・・・・ですが、その・・・・・・」
 段々小さくなっていく声にヴィオレは眉を寄せると、男の言葉の続きを待った。
「申し訳ありません。」
 男は唐突に叫ぶように言うと、深く頭を下げてきた。その態度にヴィオレは添付されたと言う資料の方に視線を移す。と、鋭い眼光そのままに、ヴィオレは軽く口の端を持ち上げた。
「なるほど、機密扱い・・・か」
 どこか楽しげにさえ聞こえる声音に、頭を下げたまま男は続けた。
「力及ばず。ですが今しばらく時間をいただけますれば必ずや。」
 必死に弁明をする男の言葉を聞いているのかいないのか、短く記された資料の文字を見ていたヴィオレが呟いたのはその時だった。
「この名は・・・・・・そうか、そういうことか。」

「は?」
 ヴィオレの言葉に男は間の抜けた声と共に顔を上げた。
「あの、そんなものでお役に立ちましたでしょうか?」
 未だにわけがわからないと言う顔をしている男に、ヴィオレは薄く笑みを浮かべるとねぎらいの言葉をかけた。
「ああ、これで十分だ。本当に手間を取らせたな、感謝する」
「あ、いえ。お役に立てたのなら幸いです。」
 心底ほっとしたように男は胸を撫で下ろすともう一度深く頭を下げた。

 ヴィオレは受け取りを拒む男の手を諦めると、机の上に報酬を置き、静まり返った部屋から喧騒の中へと消えていった。

 その後姿を見送りながら、男は最後まで掛けられなかった問いを飲み込んでいた。
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