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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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激しくアップするのが遅くてすみません。
荒垣先輩、誕生日オフ会の投稿用に書いたものです。

というわけで、先輩誕生日話!!
(もう10月終わるよ!!って突っ込みは無しの方向で、汗)

2010年の誕生日設定話です。
なので、勿論両方生存です♪♪♪♪
だって誕生日祝いSSだもん!!

ちょっと視点と書き方を変えてみてます。
(書いてる人がそう思ってるだけかも)



∞――――――――――――――――――――――――∞



トクトク        
トクトク


響き渡るのは、命の鼓動


トクトク        
トクトク


刻み続けるのは、心の音




∞―――――――――∞ 心音  ∞―――――――――∞


心地よいまどろみだった。
まるで水の中で生きるもののように、包まれる安らぎと、重なり合う幸福感に満たされて・・・。
ずっとこのままで居たい、そんな風に思えるほどに、甘く優しい時間。
そんな中に、かすかな揺らぎが生まれた。
それは、小石が投じられたかのような、小さな小さな波紋。
いつもならば、気に留めることもなく、そのままこのまどろみの中に浸ったままだったのだが、その時の透流は、あえて心地よいその場所から、己をどうにか引きずり上げた。

小さく響く携帯のバイブレーション。
重い瞼を何とか持ち上げれば、薄く開いた視界を覆うのは穏やかな闇とたくましい胸。
その胸に刻まれた大きな傷跡を認めると、透流のぼんやりとしていた思考は急速にその霧を晴らし、心臓は大きく跳ねだすのだった。

すでに何度、この胸に抱かれて目覚めたかわからないのに、それでも未だに慣れることは無い。
高鳴っている鼓動と、熱を帯びはじめているであろう頬を感じながら、透流はそっと優しく包み込まれた揺り篭から身体を起こした。


―いつか、慣れる日が来るのかな?―


そんな事を思いながら、自分を抱きしめている腕から静かに逃れると、子供のように穏やかで、安らかな寝顔を浮かべた彼の顔が飛び込んでくる。

―真次郎さん、可愛い♪―

ついつい、頬が緩んでしまう。
それどころか、あまりに可愛らしい表情に、ちょっとしたいたずら心が芽生えてしまう。
そうすれば、透流はその衝動のまま、彼の頬に指を滑らせた。

「・・・ん・・・」

小さく身じろぐ姿さえ、何だかとても愛しくて、透流は構わずツンツンと彼の頬を細い指で弾く。
朝には弱い彼だから、きっとこの位で起きたりはしない。
くすくすと笑いながら、自分にしか見ることの出来ないであろう彼の顔を、その反応を堪能していると、再び響いてきたバイブレーションの振動音にハッとした。

「いけない、いけない」

小声で自分を叱咤して、透流はそっと腕を伸ばしてベットの下を探った。
まず触れたのは、振動を続ける携帯電話。自分で仕掛けたアラームのスヌーズが、目標のときを知らせていた。
透流は、片手でアラームを止めると、携帯の横に隠すように置かれた小箱を取り出した。
両手で包めば、丁度手の平に収まるくらいのシンプルな白い箱。
その表面には、箱の白さを際立たせるように、赤いリボンが踊っている。

―どこに置こうかな?―

折角だから、やっぱりすぐに目に付く場所がいい。
そう思いながら、机の上やベットの枕元を見回していると、不意に腕を引かれて、透流はバランスを崩して倒れこんだ。

「何してやがんだ?」

短い悲鳴とともに、倒れこんだ彼の胸の中で、透流は目を瞬かせた。
一度眠った彼が、こんなに早く目を覚ますとは思っても居なかったからだ。

「し、真次郎さん起きてたんですか?」
「隣でごそごそしてりゃ、誰だって起きんだろ」
「嘘です!いつもは絶対起きないじゃないですか!」
「朝と夜はチゲーんだよ」

意味が分かりません!と言う透流の叫びを、伸びてきた彼の腕が身体ごと捕らえれば、そのまま強引に唇を塞がれてしまう。
透流は二の句を継ぐどころか、身体の力まで奪われてしまう様な、そんな錯覚に陥っていく。侵入者のはずなのに、我が物顔で口内を蠢く彼の舌に自らのそれまで絡めとられ、吸い上げられてしまえば、思考さえもが溶けてしまいそうだった。
長い口付けに息も絶え絶えになり、くたりと彼に身体を預ければ、満足したような笑みを浮かべて、ようやく彼は透流の身体を自由にする。

「で?何してたって?」
「う~~。真次郎さんの・・・ううん。やめた」

意地悪そうな笑みを浮かべる彼に、拗ねたように口を尖らしかけた透流だったが、手の中の感触を思い出して小さくかぶりを振った。
きっと眠っていると思ったから、だから秘密にしておいたけれど、それももう必要が無い。
それならば、大好きな彼だから、とても大事なひと時だからと、再度身体を起こして真っ直ぐに彼を見つめる。

「真次郎さん、受け取ってください!」
「は?」

きょとんというそんな音が似合うとは到底思えない彼なのに、今浮かべた表情はまさにそんな感じで、透流は思わず吹き出した。

「今日は、真次郎さんの誕生日じゃないですか。だから、どうしても日付が変わったらすぐに渡したかったんです」

とっておきの笑顔を浮かべてそう言えば、彼の目が2、3度瞬き、慌てて彼も身体を起こした。
驚きと、照れが複雑に絡んだような彼の表情に、透流の笑みが深くなる。
本当に忘れていたからか、それともこのタイミングだからかは分からないけれど、こんな表情が見れたのは正直嬉しい。
以前から、当日までは話題にするなと寮の仲間たちに口をすっぱく言い含めていて良かったと、透流は内心でついついガッツポーズなど浮かべてしまった。

「・・・開けていいか?」

透流の大好きな笑顔で彼がそういえば、透流は大きく頷いた。
むしろ早く開けて欲しかった。
でも、それと同じくらい本当は不安もあった。
コレに決めるまで、ずっとずっと悩んでいた。
余計なお世話かもしれない。むしろ怒らせてしまうかもしれない。そう思ったりもしたけれど、結局これしか思いつかなかった。
否、思いついたものとしては、他にもいくつかあったのだけれど、いざ選ぼうとすれば、選べるのはこれだけな気がしたのだ。

彼の大きな手が、繊細にリボンを紐解いていく。
透流の心臓はその指が動くたびに少しずつ早く、そして大きく脈打っていく。
さほどの時間を要しているようには思えないのに・・・気がつけば、彼の手がソレを手にした時には、透流の鼓動は早鐘よりも大きく忙しない音を立てていた。

「・・コイ・・ツ・は・・・」

目を見開いてそれを見つめ、どこか呆然としたように呟く彼の姿に、失敗しただろうかと息が止まりそうになる。
しかし、次の瞬間には、彼の手が透流の背に回り、そっと優しく引き寄せられると、抱きしめられ、額には柔らかな唇が落ちてきた。

「ありがとな」

静まり返った彼の部屋で、抱きしめてくれる彼の手の中から、抱き寄せてくれた彼の胸の中から、未来を刻む音が聞こえる。



トクトク
チクタク


重なり合った心音と針音が、互いに共鳴しているように、部屋の中を満たしていく。
包まれる安らぎと、重なり合う幸福感に透流の目頭が熱くなった。

「最近、ずっとバイトしてたのってコレのせいか?」

穏やかな彼の声が頭上からかかり、透流は顔をあげるとにこりと笑んだ。

「はい。
・・・あの、喜んでもらえ・・まし・・た?」

抱き寄せてくれた手が、落ちてきた唇が、きっとその事を示してくれているとは思いながら、透流は聞かずにはいられなかった。彼の手の中で規則正しい音を立てている真新しい懐中時計が、本当に彼にとって嬉しいものだったかどうかを。

「ああ。」

見上げた視線の先で、短い答えを返しながら、けれどもとても優しく彼が笑う。

「全く同じものじゃないんですけど。
それに、そんなに高いのは買えなかったし。」
「いや、同じものが欲しかったわけじゃねえし。アレはあん時に役目を果たした・・・そう思ってるしな」

やわらかく細めた目が透流を見下ろすと、ふとその瞳に影が掛かった。

「コイツの話、聞きてぇか?」

透流は迷った。
聞きたくないわけではない。むしろ、ずっとずっと聞きたかったことだ。
彼と自分を結び付けてくれた、そう言っても過言ではないだろう“懐中時計”。
昔ある人にもらったのだと、そう言っていた。それが誰なのか、いつなのか、透流はまだ何も知らなかった。


―知りたい―


彼が凶弾に倒れたあの日、他の全てのものを、自分のことも置いていこうとした彼が、唯一持っていったモノ。
彼の命を救い、彼の変わりに時を刻むことを止めたモノ、その由来を。正直、そう思った。だけど・・・。
透流は彼の目を真っ直ぐに見つめると、ふわりと笑った。

「聞きたいです。聞きたいですけど・・・
いつか、私が「聞かせてください」ってお願いしたら聞かせてください」
「!?」
「気になってないっていったらウソです。ずっと聞きたかったから。
でも、真次郎さんにとって、きっと楽しいだけの話じゃないって気がするから・・・だから、今日じゃない“いつか”がいいです。
今日は、真次郎さんの誕生日。だから今日は悲しいことも、辛いことも無しです!ずっと笑っててください。

ね? 真次郎さん」

驚いたように自分を見下ろしてくる瞳に、小首をかしげてそう笑えば、彼が短く息をついた。
コツンと彼の額が自分の額に重ねられると、彼のかすかな囁きが耳をくすぐる。
穏やかで、優しくて、少し照れたような彼の囁き。それだけで、透流にはもう十分だった。
彼をお祝いするための、そのためのプレゼントだったのに、なんだか自分のほうがもっと大きなモノを貰った気がする。
そんな透流の前で、彼はそっと懐中時計の縁を指でなぞった。刻まれたその文字に、目を細めながら。

―2010/03/05―


「約束の日か」

こくりと小さく頷けば、あの日を思い出すように彼が笑う。
ベットサイドに置かれた透流の腕時計をその手に取ると、彼の大きな手の中で二つの時計が重なった。


チクタク
チクタク

「時を刻むもの、か。
こいつを渡した時は、正直その先があるなんざ思ってもいなかったからな。せめて、お前と一緒に未来を重ねていけるもんでもって思ったんだが・・・
まさか、こんな“今”が来るなんてな」
「真次郎さん」
「まだ、夢の続きでも見てんのかもしんねぇな・・・って痛ェ!」

透流が思いきりつねった頬を、もう片方の手で押えながら彼が睨み付けてきた。
その視線に、透流もまた笑顔を返す。勿論その目は笑ってなど居ない。

「目、覚・め・ま・し・た?」
「う・・・今のは、その、悪かった」

透流の浮かべた凄絶な笑顔に、彼の顔が引きつるのが分かる。
視線を泳がせ、どうしたものかと困惑している。
おろおろとするそんな姿が可愛くて、結局最後には透流は本当に笑ってしまった。
くすくすと笑みをこぼす透流の姿に、彼がほっと息を吐く。
赤くなった頬に、痛いですか?と手を伸ばせば、そのまま腕を引かれて今日何度目かの彼の胸にすっぽりと納まってしまう。

「確かに、夢じゃねえよな」

彼の手が、内に収めていた二つの未来をベッドサイドにそっと並べると、その優しさに満ちた動作そのままに、透流の身体もまたゆっくりとベットに横たえられた。

「さっき、今日は笑ってろって言ったばっかじゃねえのか?」
「寝ぼすけさんを、起こしただけですよ?」

透流の答えに、言うじゃねぇか、と彼がニヤリとその口角を上げる。
その姿は、もう夜の彼の顔そのもので、透流の心臓は再び早く、熱く熱を帯びていく。

「ずっと笑っててくださいね。」
「ああ、笑っててやるよ。だから、お前も笑ってろ」

約束ですよ、そう言おうとした唇を塞がれて、透流はその顔に彼の望んだ答えを浮かべた。

 
∞――――――――――――――――――――――――∞



トクトク        
トクトク


響き渡るのは、重なり高まる命の鼓動


チクタク        
チクタク


刻み続けるは、二つの時計の一つの針音




∞――――――――――――――――――――――――∞


心地よいまどろみの中に堕ちていく。
その幸福に包まれながら、透流は彼に囁いた。


『ハッピーバースデー。真次郎さん』







∞――――――――――――――――――――――――∞
投稿用は「公子」でしたが、アップに際し透流に変更しました。
あえて、今回は「荒垣」表記は無しにして「彼」呼びww
ちょっと初の試みでした。
うん、バカップルだからいいよね?
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