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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
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櫻花の続きネタの拍手御礼第7段。
櫻がALLっぽくて荒ハム色薄めだったので、こちらは濃い目にしました。
ただのダメップル話のつもりが・・・思いのほかシリアスっぽくなった(汗)
格納に当たって、結構手直し要れました。
季節は外れたけど、楽しんでいただければ幸いです。

拍手ありがとうございます。
こちらは御礼の拙いSSです。
内容は櫻花の続きネタになります。
こっちはもう荒ハムオンリー

設定は櫻花と同じです。
あ、巌戸川は名前は捏造ですのであしからず。
(MAP参照して貰えれば分かると思います)


∞――――――――――――――――――――――――∞


目覚めし季節の優しき闇


降り灌ぎしは、生命の欠片



∞―――――――――∞ 散華  ∞―――――――――∞




-今、出てこれるか?-


透流の携帯に、その短い文章が送られてきたのは、始業式の前の晩だった。






「お待たせしました!!」

大扉をあけるやいなや、透流がスチャッと敬礼をすれば、玄関の階に腰かけていた荒垣は、思わず小さく吹きだした。

「お前はいっつも元気だな」

可笑しそうに肩を揺らしながら、ゆっくりと立ちあがる。そんな荒垣に透流は得意げな顔でトテトテと駆け寄ると、その立ち上がりかけた背に覆いかぶさった。

「おんぶお化け~~~」
「っ、あぶねぇだろ・・・てか離れろ・・・」

いきなりのし掛かってきた重さと柔らかな圧力に、荒垣の顔がサッとばかりに紅潮する。
それが分かっているのかいないのか、透流はその大きな背中に身体を預けたまま、えへへと嬉しそうな声をあげた。

「イヤですよ~。このままおんぶしてください!」
「誰がするか。あ~もう、面倒くせぇ、行くぞ」

中途半端に透流を背中に引っ付けたまま、荒垣は問答無用で立ち上がると、その足をズンズンと前へと進めていく。半ば足を引きずる形になった透流は、あひゃあひゃと奇声をあげながら慌ててその肩に回した手を離すと、ぷうっとその頬を膨らませた。

「う~、先輩のいじわる!!」
「どこがだ。ったく、置いてっちまうぞ」

そんな台詞を言いながら、しかし紡がれた言葉とは裏腹に伸ばされた手に、透流は微笑みながら自分のそれを重ねる。
いつからこう言う事が出来るようになったのか、それを思うと、膨らんでいたはずの頬はいつしか春の色に染まる気がした。






「うわぁ・・・・凄い!!凄いです、先輩!!」

ただでさえ大きい目を更に大きくし、かつキラキラと輝かせながら透流が笑う。
その姿に、荒垣の目は穏やかな色を浮かべる。初めてこの光景を見た時、真っ先に思ったのは透流に見せてやりたいと言う事だった。

ここは、巌戸台分寮の裏手を少し行った所。小さな森に隣接して流れる巌戸川の川岸だった。
川縁を彩る並木は、今まさに満開を過ぎ、夜風に揺れて花びらを雪のように舞散らせている桜の群れ。

俺も変わったもんだな。

ふっと息を漏らしながら、自分自身の変化に荒垣はひとりごちた。
去年までの自分と、あまりにかけ離れている今の自分に苦笑が浮かぶ。しかし、それが存外心地よいものだという事も自覚していた。
そして、その変化をもたらした小柄な影は、荒垣の視線の先で揺れている。

「あんま走んなよ、こけんぞ?」

夢中になって頭上を見上げる透流の姿が、夜桜に誘われるように少しずつ遠ざかっていく。
降り注ぐ花びらと、そこかしこにわだかまる夜の闇が溶けあい、透流の姿を覆っていく。


散ルタメノ花カ 命ノ欠片カ


不意に荒垣の背中がゾクリと寒くなる。
花霞の中に、透流の影が埋もれるように飲み込まれていくのを必死で荒垣の目が追いかける。
無意識に、荒垣の足の運びは速くなり、その口からは彼女の名が発せられていた。

「透流!!」
「!?」

その思いのほか大きく響いた声に、透流がびっくりしたかのように立ち止まる。荒垣を振り向いて、疑問符を浮かべた小さな頭がかしげられた。

「先輩?どうしたんですか??」
「・・・・・・」

視線の先で、透流が問う。
荒垣は、それに答えずただ透流の姿をその目に捕らえ続けた。
唐突に襲ってきた不安。その得体の知れない恐怖にいつのまにか荒垣は動けなくなっていた。
そんな荒垣の様子に気づいたのか、パタパタと軽い足音が駆け寄ってくると、月光を映した赤い瞳が荒垣の顔を覗きこんだ。

「先輩??」

再び首をかしげ、透流はじっと荒垣の目を見つめてくる。
その目に何が映っているのか分からないが、荒垣はたまらず視線を伏せる。
消えてしまうのではないか、そんな風に思ったなどとは言えなかった。

確かに俺は変わったな。

先ほどまでは心地よいとさえ思った事が、今は苦痛に思えた。自分はこんなに弱くなってしまったのかと。
影を含み、目を伏せた荒垣の頬を、不意に柔らかな温もりが包みこんだ。
荒垣より一回り小さな透流の手が、優しく荒垣の顔を捕まえると、伏せた筈の視線を絡めとる。
その視線の先で、透流はふわりと穏やかな笑みを浮かべた。

「先輩、私はどこも行きませんよ。
だから、そんな顔しないでください。
ね?」

驚いたように荒垣が目を見張れば、くすりと笑って透流の瞳が、悪戯っ子のような色へと変わる。
荒垣が言葉を紡ぐより早く、つま先で伸びをした透流が、その柔らかな唇をさっと彼の唇に重ねた。
えへっと小さく舌を出し、コロコロと笑う透流の所作に、荒垣は呆気にとられて二の句も継げない。

「さ、早く向こうまでいきましょう!!」

フリーズと言っていいのか、固まった荒垣を可笑しそうに見つめながら、透流がその腕を引っ張った。
クルクルと変わる透流の表情、予想のつかないその行動。
翻弄されていると思いながら、それでも見つめていたいと思わずには居られないその存在の愛しさに荒垣の心が揺れる。

かなわねぇなぁ。

グイグイと透流に腕を引っ張られながら歩き始めた荒垣は、最初は苦笑を浮かべていたが、次第にその肩を小刻みに奮わせ始めた。

「ったく、このはねっかえりめ」

軽く透流のおでこを指で弾くと、荒垣はその口角を上げた。先ほどまで、心に淀んでいた不安と言う名の霧が、ゆっくりと薄らぎ、晴れあがっていく。
確かに弱くなったのかもしれない。しかし、それは本当に大切なものを見つけ出したと言う事なのかもしれない。
弱さは強さと紙一重だ。
失う事を望んでさえいたあの頃は、むしろ全てに対して逃げていただけだったのかもしれないと思う。
今は自分の無力さを知り、こんな風に戸惑いもするが・・・だからこそその先に希望を見出し、足掻く事を、諦めずにいることができるのかもしれない。
その最たる輝きが、今目の前に確かにある。

「散るための花でも、花は花か」

独り言のように呟いた荒垣の言葉に、透流が立ち止まってその視線を桜へと向けた。
淡くぼやける月の輝きの元、幾重にも散らす花の嵐。

「先輩。桜は散ってもまた咲くんですよ。
毎年毎年、咲いて、散って、散って、また咲く。
散るためでも、咲くためでもなく、生きる為に。」
「・・・そうだな。
咲くためだけでなく、散るためだけでなく
生きる為の花の命か」

いつのまにか繋いだ手から、お互いの体温が二人の身体を伝っていく。命の欠片に包まれて、二人の時が静かに重なる。

「アイギスが言ってた通りですね。
記憶の欠片が集まって、思い出っていう花が咲くって」
「いっぱしの人間よりも人間らしくなったもんだな。
ある意味順平なんぞより、風情ってもんも理解してるしな」

ふふっと笑った透流に、荒垣もまた微笑を返す。
降り積もった思いの欠片を踏みしめながら、一歩一歩ゆっくりと川上に向かって歩みを進める。
まるで思い出の川を遡るような二人の影を、花びらの帳が覆い隠してゆく。

「そう言えば、こないだはなんで急に"お花見"なんて言い出したんですか?」
「ん?」

思い出したように透流が言えば、荒垣はあぁとばかりに彼女に視線を移す。

「それこそアレだ。楽しい思い出ってやつだ。
去年、海行った時にお前が言ってたろ? 俺の中の楽しい思い出は増えたかってな。
だから今度は逆にって思ってな。
全員が何かしたら、より忘れらんねぇ思い出になんだろ?」
「そうですね!!みんなのお弁当、美味しかったです♪」

嬉しそうに思い出し笑いを浮かべる透流に、荒垣もまた数日前の記憶に想いを馳せる。

「でも、女子組のおむすび出してきた時、ゆかりがため息ついてたんですよ。
こっそりですけど」
「あぁ、あれは俺も見た。
まぁ、山岸に桐条だかんなぁ・・・正直岳羽は相当苦労した思い出になったかもしんねぇな」

あの二人の間に挟まれ、真っ当な食べ物を作る為にどれだけ奮闘したのかと思うと、悪いとは思いながらもついつい笑いが込み上げてくる。
透流と二人、その様子を想像しながら、想い出と言う花を貪る。
仲間達の今までと、そしてこれから先の未来を想い、それを口にする優しい時間が今はある。


「これからも、こうやっていけたら良いですね・・・・ずっとずっと」
「いけるさ。諦めなきゃぁな。
そいつを教えてくれたのはお前だろ?」
「先輩、それはきっと・・・」

お互い様です。

その言葉を飲み込んで、春の風が生み出す薄紅の霧の中、朧な影が舞い散る霞に溶けていった。


∞――――――――――――――――――――――――∞


目覚めし季節の優しき闇


降り灌ぎしは、生命の欠片



散華の舞に、今 "君" が映る



∞――――――――――――――――――――――――∞
夜桜が降りしきる中で、二人で手を繋いだらなぁという妄想
とはいえ、何気に一番書いてて楽しかったのは
おんぶお化けだったりする・・・ガキさん我慢したか、偉い(エロイ)
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