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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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向こう側の達哉と舞耶をハッピーエンドにしたくて書いた作品です。
だから克哉が壊れててもつじつまが合わなくてもあえて無視してます。
こんな平行世界が一つくらい在ってもいいでしょう、と言う事で・・・
本当に私の消化不良だった部分を形にしたどうしようも無いシリーズです。

- 満月に逢いましょう -

「そうよ!こうすれば良かったんだわ!」


舞耶の突然の声にうららは半ば諦めを含んだように振り返った
「・・・で?今度は何を思い付いたわけ?」
ここ数日、うららはこの舞耶の思い付きによってひどい目にあっていた。
というのも舞耶は向こう側に帰った達哉に逢うべく、毎日妙な思い付き
をしては実行していたからだ。
「今度こそ成功するはずよ!」
舞耶は自身ありげに一人納得したようになにやら準備をし始めた、
というか散らかった部屋の中から何かを探しているようだ
「ねぇマーヤ、その・・・そろそろ諦めたら?」
うららは無駄な努力とはおもいつつも一応告げる。舞耶の気持ちもわからなくは無かった
しかしいかんせんその突拍子も無い行動にさすがのうららも限界ぎりぎりだった。
「やーだうららったら心配してるの?大丈夫!今度のはほんと完璧だって!」
うららの言葉の意味を完全に勘違いした答えを返しながら、舞耶は目的のものを見つけると
うららの方に向き直りそれを構えつつ、極上の笑顔を浮かべ
「朝になったらサマリカームかけてね♪」
一言告げるとその引き金を引いた


パン


実際聞くと思ったより乾いた音なんだなぁなどとぼんやりとかんがえつつ
うららは崩れ落ちる舞耶の身体を眺めながら思考回路が麻痺していくのを感じた。
舞耶の死体改め瀕死体をベットに寝かせると、うららはもうどうでもいいやと完全に諦めた。
今日の夜はパオと克哉でも誘って飲みに行こうと思った
(朝まで帰りゃいいんでしょ?朝まで・・・・はぁ)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そのころ向こう側では
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・まだ動くなといっているだろう?」
相変わらずな克哉の声に達哉はうんざりとしながらも振り返る
「だから俺にはペルソナがあるから大丈夫だと言っただろう、怪我はもう治った!」
こちら側に帰ってきたとき達哉の身体は病院の集中治療室で昏睡状態だった。
しかし意識の回復と共に本来のペルソナ能力も働き、驚異的な回復をみせていた。
すでに怪我のほとんどは治癒しいつでも退院できるほどだ。
「それがナンセンスだといってるんだ!大体そのペルソナとか言うやつだって
・・・・・だから・・・おまえは・・・」
克哉のいつもの説教が始まる、確かにこちら側の克哉にはペルソナの知識が無い。
それ故の心配なのだろうがこう毎日では達哉も説明をする気がうせていた。
というよりめんどくさいという方があっているかもしれない。
「・・・・ペルソナが分かればいいんだろう?」
克哉の言葉を遮り達哉はそう聞き返した
「うん?まぁそうだが・・・?達哉?おまえ一体何をするつもりなん・・」
達哉は克哉の問いには答えず短く一言呟く
「ノヴァサイザー!!」
「だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・・」



・・・克哉死亡改め瀕死・・・


「ふぅ、・・・これで兄さんもペルソナ使いだな」
達哉はそう呟くと克哉の瀕死体を自分のベットの下に押し込んだ


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さらにそのころ普遍的無意識では
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


フィレモンは次なるペルソナ使いたちの訪れのために新コスチュームの製作に燃えていた。
「スーツ、全身タイツと来たからには次はピンクハウス系もいいものだな、
だがビジュアル系というのも捨て難いような気も・・・う~~ん」


ひゅるるるるるるるるるぅぅぅぅ
「ん?」
どさ!!
ぶぎゅる!


「いった~~い!」
舞耶はしこたま打ちつけたお尻をさすりながらあたりを見回した
「え~~っと・・・・・やった!大成功!!」
首尾よく普遍的無意識にたどり着けたことを確認し舞耶はその場で小躍りした。
「・・・・・・・」
「・・・すまないが、その、私の上からどいてはもらえんかね?」
舞耶の下から聞き覚えのある声が聞こえた。
舞耶は下を向くと自分が宝塚役者?風なフィレモンを踏んでいる事に気づき急ぎよける
「ゴメンゴメンっていうか何?その似合わない格好?」
・・・・・フィレモンは痛恨の一撃を受けた・・・・・
「・・・戦いは終わったはずだが一体何があったのかね?」
フィレモンはそう告げるとよろよろと立ち上がり舞耶に向き直った
「ここって普遍的無意識よねぇ?達哉君は?どこにいるの?」
「????」
「かの少年ならここにはいないが?なぜかね?」
舞耶の問いの意味がわからずフィレモンはそう告げる
「え~~~~~!だってこの海で繋がってるって言ってたでしょう?どうしていないの~~?」
舞耶は不満ありありといった様子であたりを探し始めた。
が、この部屋に探す部分はほとんど無い。
そのうち柱を引っこ抜き、床をはがし始めた
「やめんか!!確かにこの海でかの少年と君は繋がっている、逢うことも出来よう、
だが今君がここにいるようにかの少年がここに来るためには、少年側も
瀕死になっていなくてはいけないのだよ?忘れたのかね?」
フィレモンはあきれ果てたようにそう告げる。


数秒の沈黙の後


ポン!


舞耶は破壊活動もとい捜索を止めると納得したように手をたたき頷いた
「そっか!そうよねぇ!あははははすっかり忘れてたわ、失敗!失敗!!そうか~~・・・・」
フィレモンは本気で気づかなかったのかと思い頭が痛くなるのを感じながら服を片付けつつ
「早々にもど・・・・ん?」


だああああああぁぁぁぁぁぁぁ
どさ!!
ぎゅむ!


「・・・くっ!ここは?どこだ?・・達哉?」
辺りを見回し克哉は一人ごちた。見覚えの無い景色が広がっていた。
目の前に女性が一人立っているのだが、なぜかひどく驚いた顔で自分を
見ているのに気づき口を開こうとした
「!!・・・克哉さん?どうしたの?殉職?」
克哉が口を開くより早くその女性は不吉な言葉を悪びれもせずに言ってきた。
しかもその女性は自分の名前どころか職業も知っているらしい、
いぶかしがりながらも克哉は問い返した
「君は・・僕を知っているのか?それにここは一体?」
そう告げると女性はさらに目を丸くして克哉の顔をまじまじと見つめてきた。
克哉は自分の体温が上がるのを感じつつももう一度問い返した
「その、だから、ここは一体どこか知っていたら、その・・・・」


舞耶は驚いて克哉を見やった。最初は事件かなにかに巻き込まれてここにきたのかと思ったが
どうやらそうじゃないらしい。というよりいつもの克哉では無い、
自分のこともこの部屋の事も知らないようなそぶりだ。
落ちてくるとき頭でも打ったのかしら?真剣にそんな事を考えつつ答えようとした


「ここは普遍的無意識の海、君達がいるのはその中心だ」


不意に克哉の下から声がした。
克哉は驚いて下を見ると、自分が仮面をつけた妙な格好の人物を踏んでいる事に気づき
よけつつ銃を構えた
「貴様!何者だ?・・・その妙な格好に仮面・・・そうか貴様が仮面党の頭だな?
殺人、破壊活動、放火、国民扇動、および婦女子誘拐未遂その他もろもろで現逮だ!」
克哉は銃を向けつつ仮面男にじりじりと近づく、仮面男は何やらぶつぶつ呟きながらも
ゆっくりと立ち上がると
「仮面党じゃない!!さっきから人のことを何度も何度も踏みつけおってからに・・・
だから人の話を聞かないやつらは・・・・・ぶつぶつ・・・」
克哉に向かって足跡も生々しい服のまま詰め寄ると、涙を流しつつ愚痴り始めた。
困惑した克哉をよそに舞耶は考えをめぐらせ一つの結論を導き出した
「そっか!仮面等よ!仮面党!・・・あなた向こう側の克哉さんね!」
舞耶は愚痴っているフィレモンを必死で引き剥がそうとしている克哉に向うとさらに続けた
「私の事覚えてません?
え~っと確か一度港南署に達哉君といったことがあったんですけど・・・」
舞耶は記憶の糸を辿りつつそう告げる。
克哉は達哉と一緒というキーワードに神経を集中させると記憶をよみがえらせる
・・・・・・そういえば事件が起きだしてすぐのころ、達哉が署にきたとき連れていた
友人達の中にこの女性がいたような気がした
「・・・もしかしたら出版社の方でしたっけ?確かお名前は天野さんでしたか」
克哉は必死で思い出した情報を確認するように告げる
「!ええそうです天野 舞耶です!覚えていてくださったんですね?よかったぁ」
克哉は曖昧な記憶が正しかった事にほっとした。
刑事として名前と顔を覚える事は慣れている、とはいえそれでも確信が持てないときは焦るものだ。口の中で確認するようにもう一度名前を呟く
「天野 舞耶さんか・・・・」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再び向こう側の世界
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ベットの下に克哉の瀕死体を首尾よく隠した達哉だったが、
だからといってほかにする事も無くボーっと天井を見上げながら向こうに思いをはせていた。


「天野 舞耶さんか」


!!


それが本当に兄の声だったのかは分からなかった。
が、確かに聞こえてきたのは忘れる事の出来ないあの女の名前だった。
達哉は辺りを見回すと手近なところに置いてあった果物ナイフを取り、
勢いよく自分の手首を滑らせる。
真っ赤な血が滝のように流れ出るのが分かる・・・意識が遠のくのが他人事のように思えた
・・・あの女に逢いたい!それだけが願いだった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
再び普遍的無意識
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「達哉君元気にしてますか?そちら側の世界は今どうなってるんです?」
舞耶は様々な疑問を克哉に次々と投げかけていった
しかし当の克哉はいまいち何を聞かれているのかも理解できず、
取り急ぎ答えられそうな質問を選んで答えた
「達哉は・・・元気ですよ。そういえばあれ以来あなたの姿は見かけませんでしたが
あなたも無事だったようですね」
克哉の言葉に舞耶の表情が曇った
「えぇ、まぁ。全部達哉君のおかげです・・・・」
克哉は自分が何かいけないことを言ったというのは分かったが、
それが何かは理解できなかった。
沈黙が辺りを支配する


舞耶姉!


舞耶の耳に幻聴が聞こえる。今の克哉の言葉が痛かったからだろうか


舞耶姉!
今度ははっきりと舞耶の耳に声が届く
「達哉君!?」
舞耶は辺りをそして頭上を見上げる
「舞耶姉!」
達哉が目の前に降りてくる。見間違えるはずなど無いそれは紛れも無い
向こう側の~舞耶の知る~達哉の姿だった。
言葉にならない感情が舞耶の心を支配していくのが分かる、あれ以来ずっと捜し求めていた
たった一人の自分のヒーロー!
もう2度と逢えない、そう分かっていても探さずにはいられなかった。
たとえあるべき世界が違っていても・・・・舞耶は無言で達哉を抱きしめると
そのまま泣き出していた。


達哉は自分が夢を見ているのかとすら思わずにはいられなかった。
あの女がいる!もう2度と逢う事など出来ない。逢ってはならないそう思
っていたあの女が今自分の目の前にいる。
涙で一杯になった目で自分を見上げ抱きしめてくれた・・・・・・
・・・・・舞耶姉・・・・・
達哉も無言で舞耶を抱きしめる。確かな感触が達哉の手に身体に伝わる。
温かな舞耶の感触は実体ではないことは分かっている。
これは魂の舞耶の意識そのものの温かさだ。

言葉なんか要らない、ただこの魂に触れていたい、離れたくない
もう2度と・・・・・・・・・・・・・・・・


二人にとって時間は意味をなさなかった
・・・・あくまで二人にとっては・・・・・


克哉は一瞬何が起こっているのか理解できなかった。
急に達哉が現れたかと思うと目の前の舞耶と抱き合い
そのまま二人だけの世界に浸っているではないか。
蚊帳の外に追い出されたような寂しさと、何故かむっと来る自分に違和感を感じながらも、
克哉は再び今自分のいる状況がまともではない事をお思いだした。
「た~つ~や~!一体ここはどこだ!おまえ僕に何をしたんだ?それに・・・」


二人にとって時間は意味をなさない・・・・はずだったのだが。
どうも外野がうるさい事に気づき達哉は振り返った。
そこにはこちらも目に涙をためて「お願い話を聞いて」といわんばかりに
自分に何事かをまくし立てている克哉の姿があった。
「そういえばいたんだっけ」
達哉はそう呟くと克哉をここに飛ばした理由を思い出した。
「兄さん、ペルソナはもらったのか?」
達哉は克哉に聞き返しながらこの部屋に居るべき主の姿を探す
「ペルソナ?ペルソナとはここで貰うものなのか?僕はまだなにも・・・」
「フィレモン・・居ないのか?」
いまだ自分の胸に顔を埋め泣いている舞耶に達哉はそっと告げる
「舞耶姉、ちょっといいか?」


達哉の声に舞耶は自分がどうしようもなく幼い子供に戻っている事に気づき顔を上げた。
「うん.もう大丈夫・・・・」
大丈夫、彼はここに居る、大丈夫。舞耶は自分にそう言い聞かせた
「どうしたの?」
達哉の困ったような顔に舞耶が聞き返すと
「舞耶姉、フィレモン見なかったか?」
達哉が辺りを見回しながら問い返してきた
「フィレモンならそこに居たけど・・・・・あら?」
いつのまにかあるべき主の姿がどこにも居なくなっている事に気づき舞耶もさすがに困惑する。
・・・と柱の影からすすり泣く声が聞こえるのに気づき舞耶はそちらに向かってみる

柱の影では一人(?)体育座りをして「の」の字を書いているフィレモンがいた

「・・・フィレモン・・・?」

舞耶は恐る恐る声をかける
「どうせ・・・ここはわたしの・・・・・だから・・・・」
しかしどうやら完全にいじけてしまったようで舞耶の声さえ聞こえていないようだった。
舞耶は仕方なく克哉に詰め寄られている達哉にそっと近づき耳打ちする。
達哉は克哉を振り払うと
「・・・・分かった、舞耶姉」
それだけ言ってフィレモンのもとに向かった、そして一言


「その服似合ってるな」


次の瞬間フィレモンは達哉の手を硬く握り締めつつ
「やっと・・・やっと分かってくれる人がいたのだね?
あぁこのすばらしさが分かるとはさすがだよ少年!
さぁ何が望みだい?ペルソナかい?世界の破滅かい?何でもかなえてあげるよ!さぁさぁさぁ」
願いの大安売りになっている。
「兄さんにペルソナをやってほしいんだ」
達哉は壊れ気味のフィレモンにそれだけ言うと、舞耶のもとに行き
「舞耶姉、ここはうるさい。静かなところに行こう」
舞耶の手を取る。舞耶は頷くと二人は蝶へと姿を変え今ひとつの主無き部屋へと向かった


「あぁ!なんてやさしい少年だろうか!そこのモミアゲ君!少しは弟を見習ったらどうかね?」
フィレモンは相変わらず壊れたまま、克哉相手にリベンジとばかりに詰め寄った
「貴様のような仮面コスプレ男からなど僕は何も要らないぞ!
それに達哉はどこに行ったんだ?
達哉~~~~~カムバ~~~ック!」
二人のかみ合わない会話は終わりそうになかった


達哉と舞耶はある意味見慣れた、そして苦いその場にきていた。
そこは最後の戦いの場、這いよる混沌の居室だったところ・・・・いまはその姿はない。
二人の脳裏に様々な記憶がよみがえる、それは現実、もう逃げない。そう決めた事。
自分達の犯した罪は、たとえどんな償いをしようと消えてなくなるものではない。
そうなくなりはしないのだ。だからこそ誰かの与える罰ではなく自分で下した罰を受ける、
永遠に・・。


2度も舞耶を失ったこの場で今度は舞耶に出逢えた。今度は決して離さない、
失ったりしたくない。達哉は自分から舞耶を抱きしめた、強く、強く抱きしめた・・・・・・・・・・
その存在を確かめたかったから、生きてる感触を忘れたくなかったから


舞耶は達哉の大きな温もりに包まれながら、思い出していた。
みんな・・・私の事は・・・はやく・・忘れなさい・・・
そういったときの自分を。忘れられた女より哀れな女・・・人を縛る女・・・
舞耶は人を縛る女になりたくなかった。
みんなの夢を奪いたくなかった。だからあの時そう言ったのだ「私に縛られないで」と
未来はまだある「貴方達は一人じゃないのだから」と、・・今でも思う。
ずっと考えていた、私が彼らに出会わなければと。
「夢を掴んで」と「理想を持って」と言った自分。
その彼らから夢を理想を奪った自分、彼らに罪を負わせたのは自分なのだと、
罰を受けるべきだったのは自分だったのだと
・・・・いつしか舞耶は再び泣き出していた。


二人とも何も言わなかった。言う必要がなかった。ただお互いを感じていたいそれだけだった。


達哉は舞耶の涙の理由は聞かなかった。聞いてはいけないものだと思ったからだ。
だから聞かない、それでよかった。舞耶なら自分で解決できる、その強さを持っている。
だから自分は、ただ泣きたいときに泣ける相手に成れればいい、
それで舞耶が前に進めるなら。
心の底からそう思った。


舞耶は静かに泣いた。ただ静かに。達哉の胸は心地よくて、今までのつらさの全てを吐露したくなった。
自分の負い目を全て告白したら・・きっと楽になれる、彼は笑って許してくれるだろう。
でもいい、私の罪は、私の負い目は私一人で背負うもの、それが私の罪と罰。
・・・・だから今はただ泣きたいだけ。


ただゆっくりと静かなときが流れていく・・・
しかし時は砂時計の砂、落ち切る瞬間は止めようがない


それは唐突に、だが予想通りに訪れた
舞耶の身体が淡い光に包まれる
「舞耶姉?」
達哉は舞耶をゆっくりと離すと、もう泣いてはいないその顔にほっとする
「うららだわ。朝になったらサマリカームかけてって言っておいたの♪」
いつもの口調で舞耶が告げる。
「もう逢えないのか?」
達哉の顔があのときのようにみるみる曇るのが分かる
「くすっ。何のために今ここにいると思ってるのかな?」
「達哉君に会うためにわざわざ来たんだぞ」
いたずらっ子のような表情で舞耶が笑う。そして


!!


「こないだのお・か・え・し♪次の満月にまた逢いましょう。Bye私のヒーロー」
真っ赤になった達哉の顔を、おかしそうに見ながら舞耶の姿が光に解ける。
達哉はいつまでもその光の軌跡を見届けていた


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そのころ現実世界では
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「で?今回が何度目だって?」
パオフゥはやれやれと言った様子で、青白いを通り越し紫がかった顔の舞耶を見つめた。
「瀕死は今回がはじめてよ!その前はアラヤ神社の放火未遂。その前は・・・」
うららは思い出すのも嫌と言うようにしゃべりながらもペルソナを呼び出すと、舞耶の注文通り
「サマリカーム!」
光の渦に包まれる舞耶の身体をやさしく見つめ、一人ごちる
「彼には会えたの?」


「うっうっうっうっ!天野く~~ん、そんなに達哉の事が~~~~~」
酔いが完全に回っている克哉が舞耶の瀕死体に向かって泣きに入っている
「パオ!?これそろそろやばいんじゃない?」
同情とあきれが複雑に入り混じった表情でうららが言う
「しゃぁねぁな。それじゃぁ俺はこいつ連れて先にずらからせてもらうぜ」
さらにあきれたと言った様子でパオフゥはいまだ泣きの入った克哉の首を引きずり、
部屋を後にする

「・・・・・逢えるといいな」
「・・・・・そうだな・・・」
二人の声は風にまぎれて消えていった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして向こう側
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その異常な光景に二人は言葉を失っていた
怪我のほとんどは治癒していたはずの達哉が、右手から滝のように血を流し
床を真っ赤に染め上げていた。
「一体何があったっていうんだい?」
ゆきのはもっともな質問を口にした
「さぁ?」
安奈の答えもあまりにもっともなものだった
「とはいえ、さすがにこのままじゃぁやばいねぇ!安奈サマリカームかけてやんな」
ゆきのはとりあえずの解決策を安奈に振ると、床を染め上げている血をどうしようかと
拭けるものを探しに行った
「わかった。ペルソナ!」
安奈は血の気のうせた達哉にサマリカームをかけると、達哉が左手に持っていた
ナイフを洗いに洗面所に向かった。


当然と言えば当然なのだが、誰も克哉には気づかなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さらにそのころ普遍的無意識では
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「じゃぁなにか?貴様がもっと早く僕にそのペルソナを使えるようにしてくれていれば
達哉があんなに苦しむ必要はなかったと言う事か?十年前の事件だって・・・」
「君と君の弟の関係が今のようになったのは君達自身の問題だ・・・そ
れに君がペルソナが使えなかったわけは・・・・」
相も変わらずまだ終わりそうになかった


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


また次の満月に・・・
 

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