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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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幻想水滸伝Ⅰクリア後に書いたものです。(かなり昔だなぁ)
ちなみに、うちの主人公君はカイン君です。

まず悩んだのが、一人称。俺にすべきか、僕にすべきか・・・・
これって人によって大分違うと思うんですよねぇ。私は一応僕にしました。
何より「ぼっちゃん」だしねwそしてまぁ中見は主グレです。
といっても、カップリングものにしたつもりはありません。
ただ書くことで自分的に消化不良な部分を納得させたかっただけです。
なので、ただの自己満足SSにしかなっていません(読めば分かると思いますが)。
こんな話でも読んで何か思っていただければ幸いです。

∞―――――――――∞ その先にあるもの ∞―――――――――∞



耳慣れた足音が聞こえた。いや、近寄ってくる気配が足音のように感じられただけかもしれなかった。しかしそんな事はどうでも良かった。それが誰かさえわかっていれば。

「ぼっちゃん・・・・ぼっちゃん?お休みになったんですか?」

予想の域を出ない声と質問に軽い笑みが浮かんだような気がした。このまま布団を被っていようかとふと考えもしたが、どうやら実行に移すには少しばかり対処が遅かったようだった。

「ぼっちゃん。駄目ですよ。寝たふりなんてしていても」

声は眼前で聞こえた。
覗き込んできたグレミオの顔には、声の調子とは裏腹に穏やかな表情が浮かんでいた。

「ぼっちゃん、ちょっといいですか?」

ここまで起こしておいて(寝ては居ないが)、今更のように聞いてくるのがこの付き人らしいと言えばそうなるだろう。ただそんな何気なさが、逆に淡い痛みになって自分を襲うのだとは、口が裂けても言えなかった。
 僕はわざとらしく億劫そうに身体を起こし、声の主に向き直った。

「あ、ぼっちゃん、そこに腰掛けていてください」

グレミオはそう言い放ち、持ってきた何かを取り出すと、いきなり僕の手を取った。一瞬何をするのか?と思ったが、その疑問よりも早く無意識に手を引き戻していた。気付かれたくなかったからだ。
 しかし、どうやらこの類稀なおせっかいやきは全てを承知しているらしかった。

「だめですよ、ぼっちゃん。傷が膿んだらどうするんですか!」

そう言い放ち、グレミオに強引に開かせられた両の手のひらには、黒ずんだ朱の痕が生々しく残っていた。それはまるで今までの出来事が、夢や幻などでは無いのだとでも言いたげな様にはっきりと。     
 



(あの時、僕の拳は何度も何度も扉を叩きつづけた。だが滲んだ血の染みが花園を描くように拡がるだけで、扉はピクリとも動かなかった。それでも、それでも僕は叩きつづけていた、痛みすら感じぬほどに)
「・・・ぼっちゃん、ぼっちゃんはグレミオの誇りですよ。」
(グレミオの声は、何故かひどく遠くに聞こえた・・・)
「お願いです。ぼっちゃんは最後まで信じる事をつらぬいて下さい。」
(拳は焼けるように熱いのに、扉は氷よりも冷たく感じた)
「それがグレミオの・・・最初で・・最後の・・・お願いで・・・・す」
(・・・・最後?・・・・最後って何だ?・・グレ・・ミオ・・?・・・頭の中で何かが焼ききれるような気がして、ひどく眩暈がした。急速に周りの景色が色を失っていくのが分った。いつのまにか、僕は扉を叩くのをやめていた。ただ、呆然とそこに立ち尽くしていた。何も見えない世界に・・・・)
 



(・・・・何故?・・・どうしてこんな事に・・・)
「私は私の信じるもののために戦ったのだ」
(信じるもの?僕は、では僕は何のために戦っている?こうまでして・・)
「私はお前の選択を祝福しよう。息子が親を超えるところを見れて嬉しかった・・・」
(あなたを、父親を手にかけた僕を・・・何故・・・分らない、分らない!)
「・・・・・・頑張れよ・・・・・我が息子・・・・カイン・・」
(・・・・・・・・父さん!!!!!!!!!)



(右手が、右手に刻まれた紋章が、焼けるように熱い)
「・・・・すまない、カイン」
(横たわったテッドの身体は、あの時以上に冷たかった)
「お前は、俺の長い時間の中で、たった一人の友達だ」
(知っているさ、気の遠くなるほどの孤独の中を一人で旅してたことも。その旅の行き着く所も・・・・・知っているさ・・だって、親友だろ?)
「・・・俺の分まで、生きろよ・・・」
(僕にとってもたった一人の親友は、これ以上は無い安らかな顔をして。二度と覚めぬ夢の中へと旅立った・・まるで呪いのような願いを心に刻んで)
 



「・・・っちゃん?・・・ぼっちゃん・・・聞いていらっしゃるんですか?」

グレミオの声に我に返ると、小さな痛みが手のひらを走った。見ると、傷の上で消毒薬が泡をたてているところだった。

「だから染みますよと言ったでしょう?聞いてなかったんですか?ぼっちゃん」

呆れたような声を出しながら、自称母親役はそれでもいつもと変わらぬ顔でテキパキと手当てを続けている。こうしていると、あの何一つ変わらない家の中にいるような錯覚を覚えてならなかった。本当は今が夢の中で、目を覚ませば懐かしい日の光と朝食の香りが漂ってくるのではないかと。だがもちろんそんな事はありえなかった。手のひらの傷跡が、右手の紋章が、否応無く現実を突きつけてきた。目の前にいるこの誰よりも身近な付き人さえ、本来は冥府の門の向こうにいるべき存在なのだと思い出さずにはいられなかった。

「・・・・・・迷っているんですか?」

不意にグレミオが聞いてきた。空耳かと思うほど静かな、あまりにもそっけない声だった。一瞬何を言われたのか理解できずに首を傾けると、グレミオは顔も上げずに続けた。

「迷ってらっしゃるんですか?ぼっちゃん」

僕は何もいえなかった。本当を言えば迷っているのかさえ分らなかったからだ。行くべき道はもはや定まっていた。否、もうその道しかないのだ。迷う事など何も無い、迷うべき道さえもうどこにも無い。それでも心の中は形に出来ない何かが渦巻いていた。



「乱を起こし・・・・・戦いを行い・・・・人々の命を・・・それが貴方の正義なの?」
(ソニアが真っ直ぐな目でこちらを見ていた。僕は口を開きかけた・・・・)
 



そう、あの時、僕は何を言おうとしていたのだろう。ソニアのあの目に見つめられた時、僕は確かに口を開きかけた、何かを言おうとしていた。でも、今はまた分らなくなってしまった。僕の目指していたものは、信じていたものは、正義とはなんなのか?

「・・・・きっと答えなんて無いですよ。」

ひどく静かな声は続けていった。

「誰が正しいとか、誰が悪いとか、そんな事に答えなんて無いですよ。人には、人の数だけ答えがあります。人の数だけ信じるものがあります。きっとテオ様にも皇帝陛下にもそれぞれ信じるものがあったんだと思いますよ。そして、その為に自分を掛けることを決めたんだと思います。他の全てを敵にしても。」

いつのまにか、手当ての終わった両の手の向こうでグレミオはこちらを見つめていた。

「きっとそこには正義なんてないんですよ。正義なんて口にするのは、信じるものが無い時です。信じる事が出来ないから、何か信じるものが欲しい時に口にするんです。私はたとえ何があってもぼっちゃんを信じると決めました。ぼっちゃんが進む道が正しかろうと、そうでなかろうと、グレミオはぼっちゃんを信じます。」

迷いの無い瞳で、躊躇の無い口調で、このひたむきな付き人はそう語った。

「・・・ぼっちゃん、今は泣いてもいいと思いますよ。」

その声に僕は、いつのまにか泣いていたことに気付いた。思い返せば、テッドと別れ、グレッグミンスターを離れたあの時から僕は泣く事をしなかった。泣かなかったのではない、泣けなかったのだ。泣く資格など無かったから。
たくさんの命を失った。今もまし、過去もまし。名前さえ知らずに失われた多くの命があったことを僕は知っている。苦しんだ人たちがいたことを知っている。だからこそここで泣く事は許されなかった、立ち止まる事は許されなかった。正義の真偽に迷いながら、ただ進むべき道を歩いてきた。グレミオが再び自分の前に立ったあの時でさえ、僕は決して涙を流さなかったのだから、血が滲むほどに拳を握ったまま。

「今は、進むべき道を行きましょう、ぼっちゃん。道が見えなくなったら、その時考えれば良いんですよ。この選択が正しかったかどうかは、きっとこれからこの国の人たちが決めていくんですから」

手当てが終わったとばかりに(怪我だけの手当てではなかったようだが)大げさに薬箱を閉じると、グレミオはそういって立ち上がり扉へと向かった。

「お休みなさい、ぼっちゃん。明日も大変ですからね。」

何事も無かったように立ち去るその姿に向って僕は呟くように話し掛けた。
グレミオは一度だけ振り向くと予想通りの答えを返した

「もちろんご一緒しますよ、ぼっちゃん」

その声を聞きながら、僕の意識は既に闇の中に沈み始めていた。泣きつかれたのかもしれなかった。それでも良かった。今は進もう。それが正しいのかなんて分らないけれど。進むべき道がある限りは。

運命は、この手の中にあるはずだから。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エピローグ


祭の後の静けさは、死者の弔いよりもひっそりとしていた。
帝国は、解放軍の名のもとにその自由を取り戻したのだ。
僕は自分の信じた道を行った。そしてその最後に見たものは、皇帝の信じたものの哀しい姿だった。過去の名高き英雄の姿は、それ故にひどく寂しくみえながらも、不思議と惨めには見えなかった。

過去の歴史が終わった。この国は新しい一歩を踏み出すだろう。
その先がどうなるか、それは分らない。ただ一ついえることは、その先にこそ、きっと答えがあるのだろうという事だ。この戦いが正しかったのか、そうでなかったのか。
 僕はそれを知らなければいけないと思った。だがそれはこの国にいることと等しいとは限らないだろう。

僕にはすでに決めていたことがあった。あの夜に・・・・


「ぼっちゃん、準備できましたよ」

思ったよりも軽装な姿でグレミオが姿をあらわした。その手にはしっかりと斧が握られていた。僕は小さく笑むと、最後にもう一度街を振り返った。この目に焼き付けるために。生まれた街を、過ごした街を、全てが始まった街を。

 そして歩き始めた、二度と振り向かずに、僕は背後に声だけを投げかけた。


「行こう」

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