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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
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翠緑の樹海B2Fの物語

NPCキャラの台詞は完全に覚えてないので捏造多いです。
ただ、選択肢の結果はプレイした上での実際の結果になってます。

∞―――――――――∞ 真理を求めて   ∞―――――――――∞

 
今日ここにメモを残す。
これはこの世の理に近付かんが為の記録である。

                   著 Ark

~【B2F】真理(自然)と人間の狭間。緑の光溢れる場所~

迷宮を探索する許可が取れて数日、我々のPTは地下の2Fへと歩を進めていた。
地下1Fとあまり代わり映えはしない風景だが、時折強烈な「敵意」を感じる事も少なくなくなった。

一応冒険者としてこの迷宮に足を踏み入れていると言う事で、戦いも少なくはない。

だが、私は強さが欲しいわけではない。


私が欲するのはあくまでも「真理」である。

この世を織り成す糸の全てを手繰り、その深遠を目の当たりにする事こそが全てなのだ。
発火の原理、冷却の仕組み、プラズマによる電流の発生などを理解し繰るのはあくまでその目的のための手段である。

その日も地下2Fの探索にあけくれていた。
とはいえ、目新しいものというものは特になかった。

歩幅や太陽の動き、影の位置から方向を割り出し地図を作る。
気になる場所、獰猛な獣が徘徊するポイントを書き込んでいく。
そんな地道な作業が続いた。

ふと、見上げた所に大きな壁のような扉が見えた。
一面をツタが隙間なく這いめぐり、中心に水晶のような輝きを内包している。
以前地下1Fでも2箇所ほどでこれと同じものを見かけていた。

あの時は散々調べたものの、水晶は固定されたかのようにびくともせず、
また扉自体もツタに取り込まれてすでに開閉の義務を放棄してしまっていた。

正直な所、私はこの扉の前で二日でも三日でも研究をしたいと思うところだ。
この扉は明らかに人工的なものである。
つまり、この迷宮が自然のものではない事を示す有力な証拠と言えるのだ。

いつからあるのか、誰が作ったのか、その目的は?扉の先は?
気になる事は山とある。しかし、この知的探究心を満たすためにはあまりに資材も情報も不足していた。
奥へ進む事で、この謎が解き明かされる。
それに期待をもつことで、私は扉の前を離れる事が出来た。


さらに探索を進めると、幸運にも宝箱を発見した。
奥まった小道に分け入った場所だったからか、それとも獰猛な獣の徘徊範囲内だったからか、不思議とまだ誰も空けていないようだった。
宝というにはありふれていたが、それでも宝箱からの入手と言うものは小気味がいいものだ。

一方で、私の興味は宝そのものよりも箱のほうが比重が大きかった。
これらの宝箱は1Fにも実際にはあったのだが・・・
これもまたいつから、誰が、何のために置いたものなのだろうか。
それを考えると、私の一部は深く思考の海に落ちていくのが分かるのだ。
意識の海のその奥で、真理へと繋がる一筋の光明を探す事はなんと言う快感だろうか。
私はこの時間がたまらなく愛しいのである。


しかし、その私の意識を無下にするのはいつもこの人物なのだった。


「これさぁ、いつも思うけど、賞味期限とか、使用期限切れてそうだよね。
 僕は使いたくないなぁ。」


そう苦笑するように言いながら、実際決して自分には拾ったアイテムを使用しないこの人物こそ、我々PTのリーダーだった。
成り行きでこのメンバと同行する事になったとはいえ、一癖も二癖もあるこのリーダーに私は決して相容れないものをその日までは感じていたものだ。


夜もふけ始め、一旦街へ引き上げようかと話し始めた矢先だった。
小道の角から我々の前に一人の兵士が現れたのは。


「おや、冒険者達のようだね」


腰に剣を挿し、甲冑をまとい、背には一抱えくらいの丈夫な皮袋を肩からかけていた。
執政院の命でこの迷宮内には常にそれなりの数の兵士がいる。
(あったことがあるのは最初のミッションの時だけだったが)
この人物もその一人であることは容易に想像できた。

こちらの様子を一通り見た兵士は、人好きのする笑みを浮かべた。

「まだ迷宮初心者かい?よかったら色々情報を教えよう」

兵士と言う事に、獣とは違った緊張感を持っていた面々も、その笑顔にガードを解くのが感じられた。

「助かります。いろいろとこの辺の事で・・・・」

リーダーが安心したような顔で早速その兵士と話し込み始めた。
そう、この人はコレと言った相手を見るといつもこうなのである。
(ちなみに、うちのリーダーは一見ボーイッシュな少女のようであり。
 宿などに泊まる時は常に女に間違われている。)
我々はどこか蚊帳の外でその光景をやれやれと見つめていた。


「・・・う~ん、よし!!それならこの武器を売ってあげよう。」

木にもたれて休んでいた私の耳にそんな声が聞こえた。
どうやら前衛力の強化について語っていたらしい。
考え込むようにしていた兵士が妙案を思いついたように手を打っていた。

「え?でもいんですか?」

リーダーが驚いたように、それでいて嬉しそうに言う。
そんなリーダーに照れたのを隠しているのか、どこか困ったように頬を掻きながら兵士は続けた。

「これも若い冒険者を育てるためだしね。とても良いものだよ。
 っと、そうは言っても中古になってしまうか。うん、じゃぁ500でいいよ」


「ありがとうございます!!・・・・・・・・あぁ、ごめんなさい。今、お金が25enしかないんです・・・」


リーダーはパッと破顔した直後財布を見つめて泣きそうに言葉を続けた。
兵士は一瞬時が止まったかのようにリーダーを呆然と見ていたが、あまりの極貧ぶりに逆に慌てつつ心配の言葉を投げていた。
それでも流石に25enでは売れないらしく、残念がりながら我々に激励の言葉を送りながら去って行った。


その後、メンバーは誰も無駄口を聞くこともなく街へと帰還した。
きっと、このあまりの財政難の現状を知って口を利く気もなかったのだろう。


街に帰ると、我々は次の出発までは基本的に自由である。
(ただし、大抵は夕飯は一緒に取ることが多かった)

私は足りなくなった火薬の補給などのため、シリカ商店へと赴いた。
棚に並んだ商品を品定めしていると、リーダーが探索で得たアイテムを売却しにやってきた。
こちらには目もくれず、カバンから次々とアイテムを取り出して並べては値段の交渉をしているようだった。

私は選んだ品物の会計のためにカウンターの方へ近づくと、現金をしまいこむリーダーの財布の中身が一瞬ではあるが垣間見えた。
その中には、1000を十分に超えるだろうenの紙幣が見えた気がした。


(まさか・・・・)



私の思考の中で、様々な可能性が浮かんでは消えを繰り返した。
しかし、ありえるとしたら。
最終結論を出す前に、店を出るために私とすれ違った瞬間のリーダーの囁きが聞こえた。


「洞察力が鋭いのはいいことだけど、向ける方向が間違っていたんじゃ到底真理なんて見えやしないんじゃない?」


振り向いた私の視線の先では、微かに口の端を持ち上げたままリーダーが扉を出て行くところだった。



「・・・・向ける・・・方向・・・」



買い物を済ませ、宿に帰った私は仲間達と夕食を共にした。
幾日振りで熱い湯で汗を流し、柔らかくはないが草の上よりも数段快適な寝床に横になっても、頭の半分以上は思考の海の中だった。


(向ける方向)


何度もシュミレーションされる兵士との会話や表情、リーダーの仕草。
そして、ぼんやりと浮かび上がってくる一筋の道筋。

一人の兵士。

たった一人の・・・剣・・・・・・甲冑を纏った・・・・皮袋・・・・


ハッとした。

あんな表層にいた兵士。
しかも一人。
その兵士が、自分の剣を売る?
皮袋は例え一抱えはあったとはいえ、剣が入るような大きさではない。
精々ナイフか短剣が関の山だろう。
それに、執政院に雇われているはずならば装備は支給品だ。
売り買いできる類ではないではないか。

つまり、あれは・・・・

百歩譲ってあの辺を一人でも歩けるほど屈強な兵士で、しかも支給品の剣を売っても構わない身分の人間だったのかもしれない。
ただの好意だったのかも・・・・
いや、それを信じるにはあの場所は危険すぎた。


そう思うと、リーダーの言葉はまさにそのとおりだったのだろう。
そして、リーダーは初めからそれに気付いていたのである。
そう、リーダーは、カナイは出会ったときにそう言っていたのだから。

「善意を疑わずに、何を疑うのさ?」

相容れないものを感じていた。
それは真理に最も遠く見えたからだ。
だが、もしかしたら彼の方が自分よりもっと近い場所にいるのではないだろうか。
そう思うと、私の目指すべきものは案外彼の行き着く先かもしれないと思えた。


「それも悪くないな。そこに真理があるのなら。」


そんな私の思考も、いつしか凪いだ海を行く船のように、揺れる事もなく静かに眠りの海へと流れていった。



次の日


私は走っている。

背には瀕死のSirを背負って、慣れない力仕事に泣きそうになりながら走っている。
横ではグロリアとカナイも同じように必死に走っていた。
瀕死のスティングを抱えて・・


「いや、もう一匹位いけるよ。それとも鹿ごときに怖気づくつもり?」


先刻、そんな台詞とともに、木陰から狙った獰猛な獣は・・・
果たして怒り狂った牛だったのである。


訂正
私はやっぱり相容れないかもしれない。カナイとは。
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