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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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翠緑の樹海B3F
とりあえず、キャラ分は書くんだ!!そう意気込んで、そして確かにキャラ分は書いたのでした。

実際、当時は書いてる階数とプレイしてる実際の階数にどんどん差が出たっけなぁ
そんなわけで、B3Fいくよん。

∞―――――――――∞ 死して屍拾うもの無し   ∞―――――――――∞

 
右か左
上か下
前か後
0か1

この世界は、選択が全て
俺が今「鞭」を使っているのも「剣」を選ばなかったから。
今こうして「生きている」のも「死」を選ばなかったからに過ぎない。


~【B3F】幾多の戦士が倒れた選択(絶望)の地~


俺たちは、息を潜め、出来る事なら心臓の鼓動さえも最低限に抑えて慎重に動いた。
目の前の木陰の先には、見たことも無いような巨大な蟷螂がキシキシという耳障りな音を立てながら獲物を探していたからだ。
ソイツは数十メートル先にいてさえ分かるほど、圧倒的な殺気を放っていた。

近寄る事=「死」

その方程式は殺気を感じた瞬間に誰とも無く理解できるものだった。

俺たちは、その「死」を慎重に回避しながら、B3Fを進んだ。


運が良かったのは、探索を始めた辺りは比較的光も良く届き、見通しが利くことだった。
迫り来る「死」の気配も、こちらが慎重にさえ進めばなんとか避けて通る事が出来た。
そうやってゆっくりと辺りを観察し、ここでも地図を作っていった。



「ここは封鎖中だ」


緊張に継ぐ緊張に終止符を打ったのは、意外にも人間の冒険者の言葉だった。

一人は騎士や兵士の装備する「甲冑」とは違った独特の鎧を纏い、いわゆる「剣」とも違う形状の刃物を挿している女。
もう一人は真っ黒いローブとフードに身を包み、不気味な人形を抱えた赤毛の女。

気配の殺し方といい、隙の無い立ち姿といい、一目見て熟練の冒険者である事が分かる。


「貴方達、ここに居るってことは冒険者?」


冒険者以外で、ここまで来るものが居るのかという方が気になったが、
誰もそれを突っ込む雰囲気ではなかったためか、無言でめいめいに頷いた。


「そう・・・でも、今の貴方達をここから先へは通せない。」


リーダーであるカナイが、執政院の許可を貰って迷宮の探索をしていることを告げ、証拠の許可証を見せた。
しかし、女はにべもなく首を横にふる。


「誰も通せない。これも執政院の命令。
 通りたければ執政院に行ってきなさい。」


有無を言わさぬ圧力が、言葉と視線から感じられた。
俺たちには、それに従う以外の道が無い事が分かった。
俺たちは踵を返すと、街への最短ルートについて話し合い、その場を後にする。

その時、微かな声が聞こえた気がした。

「どの道、今の貴方達では、この先に行っても死ぬだけよ」



執政院へ行くと、意外とあっさりと通行許可が出た。
まぁ、条件はあったわけだが・・・

異常繁殖している狼たちのボス「スノードリフト」の討伐

それが扉を通るために提示された条件だった。
しかし、それ程苦難なミッションには思えなかった。
迷宮を探索していく以上、いずれはどこかで戦う事になるだろう。
たとえどんな選択をしていったとしてもだ。
それなら、悩むだけ無駄である。

俺たちは、一旦準備を整えなおし、再度B3Fを目指して迷宮に足を踏み入れた。



「ねぇ。ここってさ、道じゃない?」


カナイが唐突にそんな事を言ったのはB3Fへ降りてきて少し進んだ場所だった。
俺たちが今まで歩いてきた方角とは逆側。木々が密集し枝々が複雑に絡み合っている薄暗い方にそれはあった。

獣が行き来すのが限度と思える程度の細い幅で、土があらわになっている部分が曲がりくねりながら前方へ延びている。

道だ、そう言われれば否定は出来ないものの、道ではないといった方が限りなく頷けるその先にカナイはずっと視線を向けている。

嫌な予感がした。


「ねぇ、スティング行って・・・」
「行かねぇ」


振り返ろうとしたカナイより早く、俺は言い切った。
(勝った!!)


「うわ、即効拒絶?」

一瞬目を丸くしたのも束の間、満面の笑顔を浮かべると今度は二の句を継ぐ間さえ与えぬと言わんばかりに言い切った。


「じゃぁ命令」


「う・・・」


冗談じゃねぇよ。
正直そう思った。

俺の仕事はアタッカーだ。
こういうのは普通レンジャーがやることだろう。
俺はレンジャーの居ないこのPTを心底恨めしく思う。

確かに、サーはもしもの時にPTを守らなければならないから離す事は出来ない。
後衛に行かせるというのもありえない選択ではある。

ではあるが・・・。

こういうのを貧乏籤と言うのかも知れない。
あぁ、最近ついてない事が多すぎる。(こないだの牛もそうだった)


愚痴ってみた所で、行ける人間が自分しか居ない事は分かっていたし、
実際に抜け道を見つけたこともあったため、その先を確かめる必要性も理解していた。

その、道ならぬ道に奥深さや規模の見当をつけ、簡単に打ち合わせる。
皆がその先に意識を集中し、一歩を踏み出そうとしたときだ。

強烈な殺気に息が止まった。



キシキシキシ



獣道に気を取られ過ぎていた。

そいつは、後数メートルという所まで近づいてきていた。



巨大な鎌をもたげ、見つけた獲物をギョロリとした目で分析している。
俺たちは、条件反射のように武器を抜き、構えを取る。

(足場が悪すぎる、それに・・・後がねぇ)

圧倒的な「死」の気配、そして最悪の状況。
しかし、戦うしかない。
今までだってそうだったのだ。(特に牛・・・・いや、もうトラウマだな)

たとえそれが「死」に限りなく近くても、選ぶしかないのだ。
覚悟を決め、スナップを効かせる。

特別に調合した毒の一撃が入れば、少なからず状況は改善するはず。
そう信じて打ちつけようとしたときだった。


「逃げるよ」



その声は、既に後ろ4メートル半から聞こえていた。




意外にも、その理不尽な声に振り返ろうとして手元が狂ったのが幸をそうした。
鞭の軌道を予想して防御体勢に入ろうとしていた蟷螂の目に、俺の鞭は掠めていた。


ギィィィィィィィィィィィィ


毒が目に入ったであろう蟷螂は、耳障りな悲鳴をあげて仰け反った。
それを見て取るが早いか、俺はサーと目で合図をすると、既に10メートルは差が開いたであろうカナイ達の後を追って走り出した。





ようやく息がつけたの、再び扉の前に立ってからだった。


「通るがいい」


息の上がった俺たちに、以前のような言葉を投げかけるでもなく二人の冒険者は道をあけた。

俺たちは、拍子抜けたように二人を見返すと、疑問を顔に貼り付けたまま扉をくぐった。

「貴方達は逃げる事を学んだ。
 それは決して恥ではないわ。
 ここは決闘場ではない。選択肢は無限なのだから。」



振り向くと、すでにその場には二人の姿は無かった。







それから数日が過ぎた。

蟷螂には極力近づかずに探索を続けたが、何度か鉢合わせて逃げるといった事も体験した。
最近は脚力が上がった気さえする。

これなら食い逃げもできるだろうか。
なんとなく馬鹿な事を考えてしまう。



それでも、そのおかげか地図に記載される情報も増え、
大分奥地に入り込むことも出来ていた。


「じゃぁ、今日はあの扉で終りにしようか」


カナイの言葉に、全員が同意した。
精神力も、体力もそろそろ限界を感じていたからだ。


大扉に手をかけ、なるべく音を立てぬように慎重に押し開く。

その俺たちを真っ先に襲ったのは鼻につく血の匂いだった。


ゴフ


嫌な音が前方からした。

一人の兵士が血を撒き散らし、倒れた。
その腕や足、そして浅いながらも喉からも血を流している。

その男に再び襲い掛からんとしているのは、返り血で白い毛並みを赤く染め上げた一匹の狼だった。


グルルルル


低い唸り声がこちらに向いた。
扉を開けたことで音と風が生まれたのだろう。

一旦兵士から離れてこちらに威嚇している。


狼を相手にするには、既に体力気力共に使い果たしている。
俺は戸惑った。
今ここで再び扉を閉めれば、あの狼をやり過ごす事ができるだろう。


逃げる事は恥ではない、そう学んだはずだ。

あの兵士は、運が無かったのだ。
ここは人の世界じゃない。弱肉強食が唯一のルールである大自然の迷宮なのだ。


俺は意を決した。
横でサーも小さく頷いた。

一度深呼吸をすると、俺は手に力をこめた。


「行くよ」

カナイのその声で、俺は鞭を一閃し、サーはその横を兵士の下へと駆け出していた。





狼がこちらの動きに合わせ、地を蹴った。

しかし、その時時間が止まった。


鈴の音がした。


ひどくこの場にそぐわない音色だと感じだ。
一瞬、綺麗な音だとも感じたが、それが間違いだと気付いた時には全てが終わっていた。



狼は血を吐き痙攣して倒れていた。



兵士の傍らには、いつのまにか扉の所にいた黒いローブの女が立っていた。


「この人は私が診ます。幸い喉の傷も浅い、助かるでしょう。
 貴方達にはこれを」

そう言って女は俺たちに光る水滴を振りかけた。

不思議な水だった。

触れた場所から身体に染み込み、痛みと疲れを取り除いていく。


「これは樹海の奥で取れた不思議な泉の水、
 冒険者の体力を回復する力があるの」


俺たちはお互いに顔を見合わせ、少女に礼を言った。

「お礼はいいわ。また傷付いたらここへ来て。
 回復するくらいなら手伝えるから。」

にこりともせずに少女は言う。

「でも、忘れないでね。
 貴方達のその覚悟はただ先延ばしになっただけ。
 これから、何度も同じ覚悟が必要になる事を」


既に視線を兵士へと向けた少女は、狼への警告だけを続けて黙り込んでしまった。


必要なのは・・きっと・・・選択肢の数じゃない

それは、選ぶ「覚悟」


俺たちは少女の言葉を飲み込むと、B4Fへと続く階段に足をかけた。




余談

それから数日、俺たちは毎日のように少女の元へ通っている。
それでも少女の持つ光の水滴は未だになくならない。
(どれだけ持ってるんだ?いや、いつ取りに行ってるんだ?何処でもドアがあるのか?・・・馬鹿な考えというのは結構止まらない)

元々表情の変化の乏しい少女ではあるが、なんとなく視線に冷たさを感じるようになってきた。
いや、実際自分でも思うが・・・かなりうざいだろうなと。


「本当に助かるなぁ。うん。いつでも来て良いって言ってくれて!!」

カナイはここに来る度にそれを繰り返している。
まるで口約束を借金の証文にしたてあげているかのようだ。


再びB4Fへと戻ろうとしていたある日。
出遅れてメンバーを追いかけようとしていた俺は聞いてしまった。
後ろで彼女がぶつぶつと呟く声と、微かな鈴の音を。


「コロベ、コロベ、コロベ、コロベ、コロベ、・・・・」


その日、B4Fへ続く階段でカナイが階段を踏み外し、サーを道連れに顔面から落ちていったのは俺の中の暗黒メモリにひっそりとしまわれた。
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