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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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もう、心臓鷲掴まれてますか?
むしろ心臓動いてますか???

失神しても、メシアライザーはないですよ!!(鬼畜かよ)
それが嫌なら、続きを読むのぜ!!!
(だから、なんで偉そうなんだよΣ(゜д゜|||))

acqua様のサイトはこちら -acquaのネタ帳!!


∞―――――――――∞ 喪失 04  ∞―――――――――∞
 

「ちっと、いいか。」

寮に戻った透流が、部屋でぼんやりしていると、荒垣がやって来た。
彼女が、部屋へ招き入れようとすると、彼は躊躇したようだったが、じっと見上げる彼女の視線に負けたのか、入って来てくれた。

透流は、自分の事を思い出した訳ではなかったから、荒垣の事もまだ、分からない。
だが、自分を案じてくれている、あの瞳が、何も訊かず、ただ、抱きしめてくれた、あの、優しさが、嬉しかったのだ。

一方の荒垣は、複雑だった。
初めて触れた温もりに、無条件に懐く、ヒナの様に、彼女が自分に向けてくるのは無垢な視線だ。

このまま、記憶が戻らなくても、彼女が、穏やかに暮らしていけるならそれでいいと、いや、むしろその方がいいのではないかと思うのだが、今の状態は、危険だと医師は告げたのだ…。

ともかく、今夜、様子を見るしかないか…。

荒垣は、心の中で呟く。


「あの…。」
「ああ、悪い。
メシ…、持って来たから、食っとけ。」

彼女の不安そうな声に、我に返った荒垣はもっていたトレイをベッドサイドテーブルに置いてやる。

「…これ、誰かが作ったんですか?
美鶴…さん? それとも…風花さん?」
「誰でもいいじゃねえか。
とにかく、しっかり食っとけよ。
食わねえと、元気も出ねえからな。」

荒垣は、ぶっきらぼうにそう口にすると、部屋を出て行こうとする。
その、荒垣の上着の裾を、彼女は思わず掴んでいた。

振り返った荒垣は、驚いたような、どこか困ったような表情になる。

彼女の、その、すがるような瞳に、荒垣の胸が痛んだ。

「どうした?」
「あ…あの…。」

何かを抱え込みながらも、誰にも言えない、そんな彼女の表情に、荒垣は思わず彼女を抱き寄せた。
震える、小さな肩。
抱きすくめた瞬間、僅かに彼女の身体が強張るのを感じたが、荒垣は構わず抱く腕に力を込めた。
彼女の背中を、優しくさすってやりながら、大丈夫だ、と声をかけると、腕の中で、彼女が泣くのが、分かった。

「怖いなら、泣けばいい…。
心細いなら、アイギスでも、桐条でも、風花でも…傍についておくように、言っておく。」
「…」
「ん?どうした?」

何かを、彼女がつぶやいたが、聴きとれず、荒垣は、彼女を抱きしめている腕を緩め、彼女の口元に耳を近づける。

「…一緒に…居て下さい。」

消え入りそうな、その声に、荒垣は、ドキリとする。
まさか、自分が、そんな事を言われるとは思ってもみなかっただけに、動揺する。

「お…俺は…ダメだ。
…その…、男が、傍にいるよか、女のダチのが…いいだろうが。」
「…ダメですか?」
「ダメっつうか…、俺は傍に居てぇ…いや… 何言ってんだ俺ぁ…。」
「…美鶴さんも、風花さんも、一緒だと、辛そうで。
アイギスさんは、その、何か怖いんです。
キレイで、私を心配してくれてるのは分かるんですけど、その…、お人形みたい、で。」

アイギスが聞いたら、さぞかしショックを受けるだろうセリフに、荒垣は心の中でため息を吐く。
見た目は、知らなければ人間だと思う程に、自然だが、一緒にいたこいつは、アイギスが機械である事を敏感に察知したのか…、それとも、思い出せない記憶のせいなのか。

「…荒垣…さんは、私を、そんな目で…みないから…。」

美鶴にしても、風花にしても、彼女を心配するあまり、何かを気を使って話しかけたりしてしまうのは分かってる。
彼女にしてみれば、そんな風に、気を使われるのも辛いのかもしれない。

記憶をなくすという事が、どういう事なのか、荒垣には理解できているわけではない。
だが、覚えていない事について、話しかけられるのは辛いだろうと…思う。

「分かった…。そばにいてやっから、心配すんな。
とにかく、メシ、食えよ。
あったけえ内にな。
…俺も、メシ食って来る。

それとも、一緒に食うか?」

顔を上げた彼女は、どこかほっとしたように、笑顔を向け、頷いた。
こんなときにも、笑顔を浮かべる彼女が、切なくも、愛おしい。

思わず、唇を、寄せそうになり、必死で押しとどめる。

「…ちっと、待ってろ。俺の分も持ってくっから…。」

荒垣は、自分の動揺を悟られないように、ゆっくりと身体を離すと、彼女の部屋を後にした。


ドアを静かに閉め、階段へと向かう。
とりあえず断っておくべきだろうと、途中、美鶴の部屋を訪ねた。

「荒垣、どうした?」
「…今夜は、あいつの傍にいるから、そのつもりで頼む。」
「…。」
「睨むな。
それから、アイツが忘れてる事、色々話すんのはやめとけよ。
お前らが、あいつを心配して、気ぃ使ってんのは分かるが…かえって消耗させるって事、分かれよ。」

荒垣の言葉に、美鶴の顔色が変わる。
どうやら、何か、思い当たる事があったようだ。

「心配しなくても、何もしねえよ。
不安なら、作戦室からモニターしとけ。

あいつ、アイギスが怖いみてえだから、アイギスは外に待機させておいてくれ。
それから…、影時間が終わったら、作戦室で待っててくれ。」

荒垣は、それだけ言うと、さっさと階段へと向かう。
その後ろ姿を見送る美鶴は、ため息を吐く。

荒垣に言わるまで、気付きもしなかった。
美鶴は、記憶がなくて不安なら、色々と教えておく方が、いいだろうと、話かけたのだが…。
にこにこと、話しを聞いていた彼女の表情が、どことなく辛そうだとは気付いていた。
それはただ、不安なのだと思っていた。
知れば解消されると。

だが、知らない事を、教えられたとしても、それは彼女にとって実感を伴わない、ただの情報だ。
それは、かえって彼女の不安を増長させたのかもしれない…。

「…私も、まだまだ未熟だな…。」

ともかく、今夜の影時間に何が起こるか分からない。
いつでも動けるように、とりあえずは全員待機させるほかないだろう…。

美鶴は、決心を確かにするように頷くと、部屋へと戻った。


一方、階下へ降りた荒垣は、彼女の食事を準備した時に分けておいた自分の分を適当に皿に盛り、デザートにと作って冷やしておいたプリンを、取り出す。
型から出して、カラメルを多めにかけると、それも一緒にトレイにのせる。

準備をしている間、考えていたのは、彼女の事だ。
彼女が、記憶を失い、心細いから、自分に傍に居て欲しいと口にしたのだと、分かっている。
分かっているつもりだ。

だが、ずっと一緒に居て、少なからず、肌を合わせた恋人に、触れたくなるのも事実で。
我ながら、情けない話だとは思うが、こういう時、自分が、ただの、男なのだと、思い知らされる。

「記憶が戻らねえなら、俺の気持ちも、何もかも、知らせないままでいりゃいいと思ったが…。」

荒垣は、はぁ、と大きなため息を一つ吐き、彼女が待つ部屋へと向かった。
 

∞――――――――――――――――――――――――∞
先輩が優しいから・・・泣ける
いや、いつも優しいんだけどね・・・・
なんでこんなにバファリンなんだろうか。
心細い時は、言葉より無言の体温が欲しいです。
 
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