夢現のガキさん版視点話。
ちょっと・・・書きたい事が書ききれて無い気がする・・・・
けどいいや(いいのかよ)
そのうち、夢現と一緒に直すかもしれないし、直さないかもしれない。
まぁ言っておきますが、甘く無いです。むしろ刹那系かな。
ちょっと・・・書きたい事が書ききれて無い気がする・・・・
けどいいや(いいのかよ)
そのうち、夢現と一緒に直すかもしれないし、直さないかもしれない。
まぁ言っておきますが、甘く無いです。むしろ刹那系かな。
∞――――――――――――――――――――――――∞
手を伸ばせば 触れてしまえるこの距離に
踏み出せば 狂えてしまうこの想いに
罪深く、明日をも知れぬ我が身故
闇中の影に等しく
全てを隠し、ただ消え逝かん
ソハ陽光焦ガレシ月ガ如ク
影ニ沈ミテ 隠レ逝ク
∞―――――――――∞ 朧月 ∞―――――――――∞
手を伸ばせば 触れてしまえるこの距離に
踏み出せば 狂えてしまうこの想いに
罪深く、明日をも知れぬ我が身故
闇中の影に等しく
全てを隠し、ただ消え逝かん
ソハ陽光焦ガレシ月ガ如ク
影ニ沈ミテ 隠レ逝ク
∞―――――――――∞ 朧月 ∞―――――――――∞
・・ィ--------------
その"声"が聞こえたのは、すでに深夜を過ぎ、未明と言ってもいい頃合だった。
普段ならば眠りについていてもおかしくは無い時刻。
しかし、その日の荒垣は、ただ壁に背を預けたまま、窓ガラスを見つめていた。
悲鳴が聞こえる。
吹き荒ぶ雨と風に、容赦なく痛めつけられる窓ガラスの軋みが、その映し出される暴挙が、"あの時"を思い出させる。途絶える事の無い、耳に張り付いて離れない悲鳴が、今なお荒垣を責め続けていた。
だからこそ、気づいたのかもしれない。自らを責めるものとは違うその"声"に。
荒垣は、椅子にかけていたコートを羽織ると、音もなく階下へと足を向けた。
その"声"の主を、彼はよく知っていた。そして、その"声"に含まれたいつもとは違った切迫した響きに、自然足の運びは早くなっていくのだった。
常夜灯がかろうじて映し出すモノトーンのラウンジ。
誰に憚ったわけでは無いが、囁くようにその名を呼べば、普段よりはむしろ小さな、けれど高い声音が奥のソファから空気を揺らす。その波に引き寄せられるように足を運べば・・・・荒垣の目は自然大きく見開かれるのだった。
普段とは違い、解かれた髪が頬を流れ、長い睫毛にふちどられた目蓋が大きな瞳を隠している。
俯き加減で、ソファに身体を沈めるように、透流が静かに眠り込んでいた。
その膝には、何故かコロマルが横たわり、彼女自身は分厚いコートを羽織っている。
しかし、荒垣の意識はその不自然さよりも、彼女の寝姿という事実の方に奪われてしまう。普段は決して目にする事の無い彼女の寝顔。その目を惹きつけてやまないと同時に、見てはいけないとも感じる背徳感が彼を混乱させた。
・・・無防備にも程があんだろ。
そんな自分を落ち着かせようと、天井を仰ぎ見て2,3度深呼吸を繰り返し、ふと視線を下ろした時テーブルの上の物に気がついた。
(・・・風邪薬?)
そう言えば、夕方(といってももう日付が変わったため昨日のになるが)一番遅くに帰ってきた彼女は、今しも吹き荒れる台風の唯一の被害者であった事を思い出した。
濡れそぼって寮の玄関に入ってきた彼女に、山岸がタオルを渡し、岳羽が風呂の準備をしにいったはずだ。それからすぐ、彼女は風呂に入って階上へと消えて行き、その後は降りてはこなかった。
その時には特段様子がオカシイとは映らなかったのだが・・・・
「薬飲みに来て、そのまま寝入ったってか?・・・ったくしょうがねぇヤツだな」
見ていたわけでも無いのに、目に浮かぶ彼女の行動に、呆れたように呟きながら、それでも彼女を見つめる目は自然と穏やかなものへと変わる。
その視線がコロマルを抱く彼女の手に移った時、ようやく違和感に気がついた。
その手が小刻みに震えていた。
ハッとして彼女の額に手をやれば、その熱は荒垣の冷えた手に余る。
小さく荒い吐息が、ようやく彼の耳にも響き始める。
・・ちっ、何してやがんだ俺ァ。
己の不徳を吐き捨てると、荒垣は透流を揺り起こそうとその手を伸ばし・・・・
そのまま動きを止めてしまった。
彼女に触れる事が、何故かひどく怖ろしい気がする。その手が触れてしまえば、開けてはいけない箱を開ける事に繋がる気がして、荒垣の手が一瞬戸惑う。
その姿に、コロマルが「キュゥ」と不安げな声を上げる。
「あ、あぁ・・・こんな事してる場合じゃねぇよな・・・おめぇは偉ェな、コロ」
何故コロマルがあんな"声"を上げたか理解した荒垣は、その口に苦い笑みを浮かべた。
きっと、震えながら眠る透流を心配して、その身体で暖めながら助けを呼んでいたのだろう。
それに比べて自分は・・・・・・そいつぁ、後回しか。
ともすれば自己嫌悪に陥りそうになる思考を、意識の隅に追い払い、荒垣は透流を覗き込む。
その表情は特に苦痛に歪んでは見えない。むしろ驚くほど無表情に見えて逆に荒垣の不安を煽った。
「・・・常磐?」
再度額に手を当てながら、その名を呼ぶ。
閉ざされた瞼がほんの僅かに上下する。それを確認し、もう一度名を呼ぶ。
「しっかりしろ、常磐。」
再びぴくりと瞼が動く。しかし、それ以上の反応は返ってこない。
やはり揺り起こすしか無いのだろうか。そう思った時、テーブルの上のコップが目に入った。
荒垣は無造作にそれを掴みあげると、その冷気を帯びた側面を、反対に熱を帯びる彼女の額にそっと当てた。
「ひゃぅぅぅ」
そんな悲鳴と言うよりも、どちらかと言えば奇声に近い声を上げながら、透流がぼんやりと目を開ける。
緩慢な動きで、その額に手をあてがうと、ほぅっとどこか安堵するように息をもらした。
その表情は、先ほどの仮面のようなそれとは明らかに違っている。
「・・・ようやくお目覚めか?」
自身の不安や葛藤を悟られないように、極力低い声音で問えば、透流の視線がぼんやりと宙を舞う。
しかし、それは荒垣まで届く前に止まってしまった。
「・・おでこ・・・つめひゃい・・・・」
寝起きの所為か、それとも熱の所為か、呂律の回っていない口調で透流がコップを見つめている。
勿論それを持っているのは荒垣の手だ。
ぼーっとコップを見つめたまま動かない透流に、荒垣は不安になった。・・・っと
「・・・不思議コップ?」
へらへらと笑って意味の分からない言葉を言い始める。荒垣はそんな彼女につい思ったままを口走った。
「お前・・・馬鹿か?」
「あ、荒垣先輩!」
(キャイン!!)
その声に、ようやく覚醒したのだろう。先ほどまでは頑ななまでに閉ざされていた瞳が大きく見開かれる。
ぴょこりと文字通り飛び上がってこちらを向けば、案の定、膝の上で丸まっていたコロマルが悲鳴をあげて転がり落ちた。
「あ・・・え?コロちゃん!?」
どうやら、コロマルが膝の上にいる事に気がついていなかったらしい。驚きの声を上げながら、その転がる姿を追いかけていく。しかし、荒垣の目はしゃがみ込むその瞬間、それが決して自分の意思ではなく倒れこんでいく様を写し出していた。
馬鹿!
咄嗟に彼女を支えようと伸ばした手が、触れるか触れないかと言う所でびくりと止まる。
触レテハナラナイ、気ヅイテハナラナイ
追いやったはずの自分の声が、リフレインする。
荒垣は、宙を掴んだままの自分の手を、その先で何事も無かったかのようにコロマルの前に膝を着いている彼女を見つめ、ふっと息を漏らすと力なく腕を下ろした。
自分に彼女に触れる資格など無いのだとその目を伏せる。
そんな荒垣の様子に気づいた様子もなく、視線の先では透流が無駄に大きな声が響かせていた。
「だ、大丈夫?ごめんね。コロちゃんがいたのに気づかなくて!!」
「クゥーン」
行き場の無い感情を押し込めて見つめたその後姿に、荒垣の表情は再び曇る。
ただコロマルを撫でているだけに見えるのに、伝わってくるその感情はどこか自分が纏う物と重なるのだ。
それは心配などいらない、独りでも大丈夫なのだと訴えかける、人を頼る事の無い、頼る事を知らないモノの姿。
「そっかぁ、コロちゃんだったんだね、さっきの暖かいの・・・って、なんだっけ?」
自問自答するように小さく呟く彼女の姿が、荒垣の目には痛ましく映った。
自分ならばいい。寄る辺などなくても、残された時間も、目的ももう僅かだと分かっている。
だが、対称にある筈の彼女が、誰に心を許す事なく、ただ独りで立ち続けようとしている・・・
それは荒垣に歯がゆいまでの焦燥を与え、荒垣は我知らず彼女を睨み付けた。
「・・・おい。
・・・おめぇ・・・なんでこんなとこで寝てやがった?」
取り合えず、言葉を選びながら荒垣が問えば、恐る恐ると彼女が振り向く。
その目が一瞬荒垣の顔を捕らえたかと思うと、すぐにその視線を泳がせた。
「えっと・・・・・・
くしゅん」
視線をそらしたその直後。彼女がくしゃみ共に再び震えだしたのを荒垣は見逃さなかった。
くそ、馬鹿か、俺ァ。
自分のあまりの思慮の無さに、呆れを通り越してため息が出る。
とりあえず優先すべきは彼女の体調なのだと自分にいい聞かせ、彼女を床から引き剥がす。
「・・・まぁいい。とにかく座れ。いつまで床でコロ撫で回してんだ?」
未だに持っていたコップをテーブルに戻しながら、視線でソファを指し示せば、透流はすごすごとソファに戻る。
その細い両腕は彼女自身を抱き締めたまま、小刻みに震えたままだ。
「ごめんなさい」
「風邪引くからってさっさと寝たはずの奴が、なんでこんな時間にこんなとこで寝てんだかなぁ。ったく」
ソファに座るなり、うな垂れてそう言う透流の言葉に、荒垣は大きなため息をついた。
そうじゃない、何故そこで謝るんだと言いたいのに、口から出たのは別の言葉で・・・そんな自身が情けなく、つい額に手をあててしまう。
もっと人を頼っていいのだと、お前は独りじゃ無いのだとそう伝えてやりたいのに、その資格を持たない自身の無力さに嫌気が差す。
そう思った時、先程置いたコップの隣の袋の封がまだ空いてなかった事を思い出した。
荒垣は唐突に自分が羽織っていたコートを脱ぐと、ソファで震える透流に投げかけた。
「先輩?」
足元に擦り寄ってきていたコロマルを一撫でし、荒垣は透流を目で示す。
言葉にする前に、すでに意図を察したようにコロマルがその目を2,3度瞬いた。
「コロ、もう少しだけこいつあっためとけ」
「ワフッ」
軽やかにソファに飛び乗るコロマルの動きを確認し、荒垣は立ち上がる。
「・・あ・・・えっと・・・」
「薬、まだ飲んでねぇだろ?ちっと待ってろ」
テーブルに置かれたままになっている未開封の薬の袋を顎で差し、足早にキッチンへと向かった。
あまり時間をかける訳にはいかなかった。
戸棚から大きめのマグカップを出し、ポットからお湯を注ぐ。
電子レンジを使おうかとも考えたが、夜中なので止めにした。
流しの下からミルクパンを取り出すと、冷蔵庫から取りだしたパックの牛乳を注ぎ込む。
ハチミツと手早く卸した生姜を加え、香り付けにシナモンスティックで掻き混ぜる。
温め過ぎないように気をつけながら、戸棚の下からボトルを探す。
後30秒か
ふつふつと鍋肌に小さな泡が浮き上がり始めた頃合に、探し出したボトルからたった一滴雫を落とす。
味にも、香りにもほとんど変化は無い。
むしろ気がつかないはずだろうそれは、荒垣自身の心境そのものだったかもしれない。
一滴たらしたブランデー
それは、気づいてはいけない、気づかれてはいけない
彼女への想い
「常磐」
キッチンから戻ってみれば、透流は再び目を閉じていた。
しかし、先ほどとは違い、軽く頭が揺れている。
「ん・・・先輩?」
ぼんやりと目を開ける透流の前に、ほんのり湯気の立つマグカップを差し出す。
「何も食ってねぇだろ。薬飲む前に飲んどけ」
「?」
両手で包み込むようにカップを持って、透流がうっとりと目を細める。
一口含んで、喉がコクリとなるのを見届ければ、ほぅと柔らかな息を吐く。
「飲めるか?」
一応、確認するように問いかければ、口元を綻ばして幸せそうな笑顔が返ってくる。
「美味しいです!」
そんな透流に、荒垣の目も自然と優しくなる。
自分が透流にしてやれる事など、これくらいしか無いのだと思えば、彼女から返ってくる微笑は至上の返礼だった。
「先輩、これなんて飲み物ですか?」
充足しかかっていた荒垣に、彼女の素朴な声が聞こえてきた。
荒垣からして見れば、ただのホットミルクの一種でしかなかったため名前と言われても困ってしまう。
「あ?いや、即興で作ったからな、別に名前なんてねぇよ」
「え?先輩、これオリジナルなんですか!?」
ちょっとした変化球ではあったかもしれないが、オリジナルなどと大それたつもりは無い。
そう思って答えて見たのだが、彼女は何故か照れたようないたずらっ子のような顔をする。
「オリジナルっつぅ程のもんじゃねぇだろ。」
「そんなことないです!・・・・・えへへぇ」
「あ?なに変な顔してんだ?」
ペロリと舌を出して笑った透流に、荒垣が眉を寄せた。
「先輩のオリジナルレシピなんて、ワタクシ贅沢者でアリマス!」
敬礼でもしそうな勢いでピシリとい言って極上の笑顔を浮かべる透流に、荒垣は顔が赤くなるのを感じて視線をそらせる。そのままひょいと空になったマグカップを取り上げるとぶっきらぼうに言い放った。
「はぁ?・・・ったく、何言ってんだ。おめぇは・・・さっさと薬飲んで寝ろ。」
「は~~い!!」
荒垣の心境などお見通しと言わんばかりに、くすりと笑んで透流が薬の袋に手を伸ばした。
錠剤を取り出し、水と共にゆっくりと飲み下す。
ただそれだけの動作なのに、彼女の状態の危うさは見て取れるほどだった。
しかし、荒垣はあえて何も言わなかった。
「コロちゃん、ありがとうね。もういいよ」
「キュ~ン」
膝のコロマルを、彼女の両手がぎゅっと抱きしめる。
その姿に目を伏せると、荒垣はテーブルの上のコップを拾い上げた。
「ついでだ。片しといてやるからおめぇはさっさと上がれ」
片付けるのは後でいい、正直そう思いながら荒垣はキッチンへと足を向けた。
きっと彼女は自分がいなくならないとあの場を動けない。荒垣はそう思ったのだ。
必死に自分の不調を見せないようにする彼女の姿を、荒垣は止める事もいさめる事も出来ない。
なぜなら、それは自分自身と一緒だったからだ。
荒垣はキッチンで独り佇み拳を握った。
見上げれば、もうこちらが見えてはいないのだろう、彼女の姿が1Fと2Fの間でさ迷っている。
コロマルと共に、階下からそれを見つめながら、荒垣は答えの無い問いを繰り返す。
気付いてはいけない、触れてはいけない、そう思う自分の心とそれを固辞しようとするもう一つの心。
俺ァ・・・どうしたらいい・・・
苦悩する荒垣の耳に、コロマルの「クゥ」と言う心配げな声が響く。
階上の彼女と、自分を交互に見つめながら、その目は純粋な心配の気持ちを湛えている。
(そうだよな。お前にとっては、単純な話なのかもな)
ふっと自嘲の笑みを浮かべると、荒垣は階段にその足をかけた。
彼女までの距離は、近くて遠い。
その距離を一歩縮める毎に、心の重さを増していく。
それを覚悟しながら、荒垣は一段一段を踏みしめて彼女の元へ近付いていく。
気がつけば、その目前には虚ろな瞳で手すりにしがみついている彼女の姿。
くそっ
今ここにいるのが自分のような存在でなければ、この手が血に染まっていなければ、迷わず抱きしめ、一言怒鳴ってでもやりたい。
彼女の背後でギュッと手すりを握り締めると、荒垣はその危うく段上に立つ姿に今の自分に許された精一杯の言葉を紡いだ。
「無理すんな。」
その静かな響きが、彼女の耳に届いた刹那、その華奢な身体は手すりを離れ、勢い良く回転していた。
手すりを握った手に力を込め、もう片方の手で彼女を抱き止める。
2段ほどずり落ちながら、それでもなんとか思いとどまる。
大きく肩で息をする荒垣の腕の中で、彼女の顔は蒼白を通り越し、薄紙の様に透けて闇の色を写している。その表情もまた、仮面をつけたように色がなく、荒垣の背筋をゾクリと震わせた。
その姿に荒垣は自身の葛藤を全てを投げ捨てると、彼女を横抱きにして是非もなく階段を上がった。その足元には、いつのまにかコロマルも続いている。
「わりぃ、入るぞ。コロ、ここで待ってろ」
ドアは開けたまま、そこにコロマルを待たせると、荒垣は彼女の部屋に足を踏み入れる。
一寝したまま出てきたのだろう、厚く重ねられた毛布やタオルケットがベットの上で乱れている。
そのベットに、一旦腰掛けさてコートだけをなんとか脱がせると、荒垣は彼女をそっとベットに横たえた。ずり落ちていたタオルケットをかけなおし、すっぽりと彼女を上掛けで覆わせてやる。
小さな、荒い吐息だけが静まり返った部屋の空気を震わせる。
見下ろせば、能面のような彼女の顔に、荒垣の顔が歪む。
まだ苦痛の表情でも浮かべていた方がましだ。そう思わずにはいられなかった。
そのあまりの無表情が、誰にも、何にも、期待も望みも持っていないのだと言外にほのめかしているように見えて、苦しかった。
・・・ちったぁ頼れ・・・俺じゃなくていいから
そんな事を思ってしまう自分に、どうしようもなく辟易する。
自分には無理だと分かっているのに、それでも伸ばせば、触れてしまえるこの距離が恨めしくて、荒垣はじっと彼女を見つめた。
その何も読み取れない彼女の姿に、荒垣は階段で抱きとめた時の事を思い出す。
急に襲ってきた、彼女が消えてしまいそうなそんな恐怖感。
その冷たさから逃れようと、荒垣の手は無意識に彼女の額に伸びていた。
先ほどよりは、幾分上がったであろう熱が、それでも"生"の感触をもたらすことに、荒垣はどちらかと言えば安堵した。
薬は飲ませた、後は寝ていれば熱は下がるはずだ。
そう思ってくしゃりと前髪をかき上げてやれば、不意に透流の目から涙がこぼれた。
色の無かった彼女の顔に、はじめて泣き顔とも、笑顔ともつかない色が浮かぶ。
「お前は・・・そうやって独りで泣くのか?」
折角浮かんだ表情に、その涙をすくいながら、荒垣の声が切なげに響く。
泣き顔が見たいわけでは無い、むしろいつだって笑っていて欲しいと願っている。
その思いに同調したかのように、コロマルの高く小さな声音が扉から響いた。
そうだな
それがコロマルに向けての答えだったのか、自身への答えだったのかは分からない。
荒垣は一度目を閉じると、ほんの少し表情を見せた彼女の額にそっと自らのソレを重ねた。
(独りで泣くんじゃねぇ・・・お前は・・・独りじゃないだろう?)
そう呟いて身体を離せば、雫の変わりに穏やかな色が彼女を柔らかく包んでいくようだった。
覚えてなくていい、だけど・・・
忘れんな、独りじゃねぇって
∞――――――――――――――――――――――――∞
手を伸ばせば 触れてしまえるこの距離に
踏み出せば 狂えてしまうこの想いに
罪深く、明日をも知れぬ我が身故
闇中の月に等しく
遠き光を、映して滲む
ソハ陽光焦ガレシ月ガ如ク
朧ニ浮カビテ 君ヲモフ
∞――――――――――――――――――――――――∞
ガキさんの葛藤というか苦悩は濃すぎて書ききれない(涙)
ネタとしてはいつ顔色見たんだよってのと、
EDで泣いたり笑ったりで、先に出てくるのが泣き顔だったからです。
追記
うちの犬は、訴える時はヒィヒィ鳴きます。
その声は、なまじ吼えるのよりも・・・凄く響いたりします
手を伸ばせば 触れてしまえるこの距離に
踏み出せば 狂えてしまうこの想いに
罪深く、明日をも知れぬ我が身故
闇中の月に等しく
遠き光を、映して滲む
ソハ陽光焦ガレシ月ガ如ク
朧ニ浮カビテ 君ヲモフ
∞――――――――――――――――――――――――∞
ガキさんの葛藤というか苦悩は濃すぎて書ききれない(涙)
ネタとしてはいつ顔色見たんだよってのと、
EDで泣いたり笑ったりで、先に出てくるのが泣き顔だったからです。
追記
うちの犬は、訴える時はヒィヒィ鳴きます。
その声は、なまじ吼えるのよりも・・・凄く響いたりします