捏造IFシリーズの第一段の番外編。
2話より長いってどういう事?汗
あ~~、でも、これもかなり酷い話です。
暗い、捏造しまくり、ぶっちゃけ死にネタ。
狂喜並の暗さです。
それでも大丈夫と言う人は畳んだ先へどうぞでございます。
2話より長いってどういう事?汗
あ~~、でも、これもかなり酷い話です。
暗い、捏造しまくり、ぶっちゃけ死にネタ。
狂喜並の暗さです。
それでも大丈夫と言う人は畳んだ先へどうぞでございます。
捏造IF話 胡蝶の番外編
本編が全然進んで無いのに、いきなり異聞ですみません。
世界を繰り返しているということで、その一つの世界。
暗さMAX、捏造MAX、死にネタMAXですみません。
怒らない人だけ読んでください。
一応荒ハム
「・・・よか・・た・・・・」
震える腕の中で、少女はそう小さく笑った。
嫌味なほどに大きな月だった。
あの日もそうだ。この苦しみが幕を開けた日。
あの時も、気色の悪い大きな月が見下ろしていた。
この手が罪に濡れてから、ようやく訪れた清算の時。
天田に同じ罪を、同じ苦しみを負わせるのは、正直本意では無い。
それでも望むと言うのなら、この命は彼の少年のものだ。
どこか、ある種の安堵さえ覚えている自分の心に、荒垣は苦笑した。
一瞬脳裏に浮かんだものを振り払い、静かに天田を見下ろす。
葛藤と苦悩に彩られた瞳が、自分を見上げて揺れている。
苦しませたくない、そう思うのに、この手はそれを許しはしない。
ここまでの選択肢が、合っているのかどうかなんて分からない。
でも、それも仕方の無い事だ。どう選んだ所で、過去は決して変わらない。
そして、自分はすでにここまで来てしまった。
もう、後も先もありはしないのだ。
ただ、せめて残る者の苦しみが少なければいい。
それを祈る事しかもはや出来ない。
そう思っていた所に、その招かれざる客は表れたのだった。
味方で無い事など分かりきっていた。
それでもこうやって相対すれば、武器の一つも持ってきていない事に荒垣は歯噛みした。
タカヤの銃はバケモノだ。
なまじっかなシャドウなどより、よほど危険なものに他ならない。
天田を守るためならば、命などいつくれてやってもかまわない。それは揺るぎ無い決意だ。
だが、今ここで失うだけでは駄目なのだ。
天田をこの場で守りきらねば、全てはその意味を失ってしまう。
小さな姿を背に庇い、ジリジリと静かな狂気を宿した男の隙を伺う。
そんな荒垣に、しかしタカヤの凶弾はあまりに無造作に放たれていた。
冷たいはずの金属の弾は、焼けつく痛みを伴って荒垣の足を貫き、血を、肉を奪い去る。
その凄まじい衝撃に、荒垣の膝はあえなく崩れ落ちた。
くそっ!天田は・・・天田だけは守らなければ!!
ただその想いだけが、意識さえ吹き飛びそうな熱と痛みの奔流から、荒垣を呼び戻す。
奪う事しか出来なかった自分が、せめて最後にしてやれる事。
再び構えられた銃の前に、無意識にその身を滑り込ませた時、場違いな高い声が耳に届いた。
「ブレイブザッパー!」
裏路地の入り口、そこに立って召喚器を構えて居たのは、本来ここに居るべきでは無い少女。
そして、軽い破裂音と共に浮かび上がったのは、全き昏き死神の姿。
少女から真っ直ぐに放たれた衝撃波は、まるで吸い寄せられるかのようにタカヤを捕らえ、その身体を吹き飛ばす。
だが、それと同時に辺りの空気を震わせたのは、再び響いた重低音だった。
その小さく重い空気の振動に、ハッとばかりにタカヤに向けていた視線を戻せば・・・・荒垣の視界の奥で、少女の体がゆらりと揺れた。
どうやって立ちあがったのか、どうやってそこまで辿り着いたのか、覚えては居ない。
気がついた時には、腕の中に横たわる愛しい存在。
その抉られた脇腹からは、とめどなく血が溢れ、直に押さえつけた荒垣の手をすり抜けては、冷たいコンクリートに吸い込まれていく。
自らの足よりも熱いその感触に、思考までが溶かされていくようだ。
「こんなはずじゃ・・・なかったんですけど・・・えへへ・・・」
力のない掠れた声が、荒垣の鼓膜をそっと震わせる。
こんな状態なのに、それでもどこか照れたような笑いを浮かべて少女が見上げてくる。
「なん・・・で・・・・」
自分が発したのかも分からない言葉に、少女はその目を柔らかく細める。
苦痛が無いはずは無いのに、いや、もしかしたらその感覚さえ麻痺しているのかもしれない。
「やっと・・・間に合っ・・・
ねぇ・・・せんぱ・・・おね・・い・」
天田が必死で唱えている回復の技も、失った体の部分を補ってはくれない。
熱く冷たいものが後から後から荒垣の手を、足を、伝っては零れ落ちていく。
止まれ!・・・止まれ!!・・・・・頼むから、止まってくれ!!!
祈るように、その華奢な身体をギュッと抱きしめた荒垣に、少女の小さな声が聞こえた。
-アキラメナイデ-
ほとんど声にならない、けれど確かに囁かれた言葉に、荒垣は目を見開く。
あの日、長鳴神社の境内で交わした会話が、鮮やかに脳裏に蘇る。
交わった視線の先で、嬉しそうに少女が笑った。
「・・ぶじ・・で・・よか・・た・・・・」
ウ"ゥン
唐突に世界が揺れた
それは文字通りの意味だった。
不気味な月も、緑の燐光も、象徴化した棺さえもが揺らぎ、滲む。
地震の様に大地が揺れているのではない、大地の上にあるものが揺れているのだ。
激しく頭を揺さぶられるような感覚と、呼吸さえ出来ないほどの息苦しさが全身を襲い、まるで縫いつけられたかのように、身体を動かす事が出来ない。
何が起こった?
そう思った時、不意に腕の中の重みが消えた。
「満足したかい?」
今起こっている異変とは、まるで正反対な穏やかな声が、静かに裏路地に木霊した。
いつのまにか、荒垣の前には見た事の無い少年が立っていた。
まだ10月に入ったばかりだというのに、首には目にも鮮やかな黄色いマフラーを巻いている。
どこか人懐っこさを感じさせる顔には、声音と同じ穏やかな表情が浮かび、その腕には先ほどまで自分が抱いていたはずの少女を抱えている。
どこまでも優しげな、哀しげな瞳が、静かに少女を見下ろしていた。
「ソイツを返しやがれ!!」
息をする事さえままならない中、それでも搾り出すように上げた叫びに、少年の視線は荒垣へと向けられた。
「驚いた。喋れるんですね、この状況で」
「なん・・だと・・?」
僅かにその瞳を大きくして、少年は荒垣を見つめた。
じっと荒垣を見つめていた視線が、ある一点で止まると、その表情がにわかに曇る。
「足、大丈夫ですか?・・・酷い怪我だ」
「なま言ってんじゃねぇ。それよりもソイツを返せ!テメェは誰だ!?」
「そんなに同時に言われても・・・それに・・・・」
困ったような笑みを浮かべると、荒垣を見つめていた視線を、ゆっくりと頭上へと移す。振り仰いだ先には、不気味なほどに巨大な月が、揺らぎ、歪んで浮かんでいる。
それを見つめる少年の瞳は、どこか懐かしそうな、それでいて恨めしそうな複雑な色を見せている。
何者だ?そう思う一方で、荒垣もまた小さく目を見張った。
少女から滴り続ける雫が、地に触れるより早く、まるで闇に溶けるように霧散していくのだ。
ふと己の手を見やれば、確かにその手を染め上げていたはずのモノが、足元を濡らしていたはずのモノが煙のように消えていく。
「もう時間が無い・・・この世界はまもなく消える」
驚愕の表情を浮かべた荒垣を、その背後で少年を睨みつけていた天田を、しごく真面目な視線が射抜いた。
「この世界と、君達の世界を繋いでいた楔が消えた。
あと数分もすれば、"影時間"はもはや君達の知覚の外へと消え失せる」
「ど、どういうことです!!」
荒垣同様、搾り出すような叫びを天田が上げる。
それに再度驚いたような表情を浮かべると、少年はその瞳を哀しげに伏せた。
「もっと・・・もっと早く、その強さを示して欲しかった・・・そうすれば・・・・」
少年の伏せた視線が、少女を映す。穏やかな笑みが、静かに少年を見返している。
少年は、小さく彼女の名を呼ぶと、その唇を少女の瞼へとゆっくり落とす。
「!!」
既に光を失った少女の瞳が閉ざされ、口元の笑みだけがまるで眠って居るように彼女を見せる。
沸きあがる激しい感情に、荒垣の思考は過熱した。
声にならない叫びが、自らさえも引き裂きそうなのに、それでも身体は動かない。
「動けないでしょう?今、この世界から貴方の半身が消え逝こうとしているから。
・・・でも安心して。
貴方の罪も、君の苦しみも、数分後には消えてなくなる」
言葉にならない声に応えるように、少年は一人語り続ける。
その手に動かぬ人形を抱きかかえたまま。
「彼女が死に。君達は救われる。
全ての記憶は歪み、歪みこそが真実で塗り替えられる・・・・」
愛しげに少女の亡骸を抱き、少年は微笑む。
「"影時間"など存在しなかった。そして彼女もまた存在しなかったんだ。
ただ、事故の記憶と歴史が全てを補完してくれる」
ね?だからもう苦しまなくていい、そう笑って荒垣を、天田を見下ろす。
そのどこか虚ろな笑みに、本能が背筋に冷たい物を流させる。
けれど、そんな本能さえねじ伏せて、荒垣は吼えた。
「ざ・・けんじゃ・・・ねぇ・・・
ソイツは渡さねぇし、誰が忘れっかよ!!」
あえて撃たれた足に神経を集中する事で、動かぬ身体を無理矢理に"自分自身"と認識させる。
微かに動いた指先で、己の傷口をさらに抉る。
「ぐっ」
「やめるんだ・・・・もう遅い・・・
これは既に彼女の抜け殻。ほら、もう月が消える。」
薄らいでいく燐光、昼間と見まごう程に照らしていたはずの月も、すでに霞みのように朧げに頼りないモノへと変わっている。
「それでも諦めないのなら、魂に刻む事だ
いつか、彼女を救う為に・・ね」
なんとか足を引きずり立ちあがった荒垣の前で、少年自身の姿もまた揺らぎ始めていた。
「"荒垣先輩"・・・僕もいつか、貴方と直に出会いたいよ。
出会って、彼女の心を正々堂々と奪ってみたい」
少年の姿と共に、抱かれたままの少女もまたその姿が薄らいでゆく。
滲むように、溶けるように、夜の闇が全てを覆い隠していくように、愛しいモノを呑みこんでいく。
その姿に必死で伸ばした手の先で、だからと呟き、泣きそうに笑んだ少年が・・・
その腕の中で、まるで女神の様に笑んだままの少女が・・・
フツリと音もなく消えた。
「あ・・・あ・・あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ"あ"」
小さな満月が照らす裏路地に、漢の慟哭がいつまでもいつまでも響いていた。
本編が全然進んで無いのに、いきなり異聞ですみません。
世界を繰り返しているということで、その一つの世界。
暗さMAX、捏造MAX、死にネタMAXですみません。
怒らない人だけ読んでください。
一応荒ハム
俺ぁな、お前がいるから何の心配もしていない・・・
後を、頼むな。
そう言った荒垣に、少女はどこか悲しげに頷き笑った
そしてただ一言、彼女はポツリと言葉を紡いだ
∞――――――――――――――――――――――――∞
間違ってもいい
失敗してもいい
それでもどうか・・・・
∞―――――――∞ 胡蝶 異聞 ∞―――――――∞
後を、頼むな。
そう言った荒垣に、少女はどこか悲しげに頷き笑った
そしてただ一言、彼女はポツリと言葉を紡いだ
∞――――――――――――――――――――――――∞
間違ってもいい
失敗してもいい
それでもどうか・・・・
∞―――――――∞ 胡蝶 異聞 ∞―――――――∞
「・・・よか・・た・・・・」
震える腕の中で、少女はそう小さく笑った。
嫌味なほどに大きな月だった。
あの日もそうだ。この苦しみが幕を開けた日。
あの時も、気色の悪い大きな月が見下ろしていた。
この手が罪に濡れてから、ようやく訪れた清算の時。
天田に同じ罪を、同じ苦しみを負わせるのは、正直本意では無い。
それでも望むと言うのなら、この命は彼の少年のものだ。
どこか、ある種の安堵さえ覚えている自分の心に、荒垣は苦笑した。
一瞬脳裏に浮かんだものを振り払い、静かに天田を見下ろす。
葛藤と苦悩に彩られた瞳が、自分を見上げて揺れている。
苦しませたくない、そう思うのに、この手はそれを許しはしない。
ここまでの選択肢が、合っているのかどうかなんて分からない。
でも、それも仕方の無い事だ。どう選んだ所で、過去は決して変わらない。
そして、自分はすでにここまで来てしまった。
もう、後も先もありはしないのだ。
ただ、せめて残る者の苦しみが少なければいい。
それを祈る事しかもはや出来ない。
そう思っていた所に、その招かれざる客は表れたのだった。
味方で無い事など分かりきっていた。
それでもこうやって相対すれば、武器の一つも持ってきていない事に荒垣は歯噛みした。
タカヤの銃はバケモノだ。
なまじっかなシャドウなどより、よほど危険なものに他ならない。
天田を守るためならば、命などいつくれてやってもかまわない。それは揺るぎ無い決意だ。
だが、今ここで失うだけでは駄目なのだ。
天田をこの場で守りきらねば、全てはその意味を失ってしまう。
小さな姿を背に庇い、ジリジリと静かな狂気を宿した男の隙を伺う。
そんな荒垣に、しかしタカヤの凶弾はあまりに無造作に放たれていた。
冷たいはずの金属の弾は、焼けつく痛みを伴って荒垣の足を貫き、血を、肉を奪い去る。
その凄まじい衝撃に、荒垣の膝はあえなく崩れ落ちた。
くそっ!天田は・・・天田だけは守らなければ!!
ただその想いだけが、意識さえ吹き飛びそうな熱と痛みの奔流から、荒垣を呼び戻す。
奪う事しか出来なかった自分が、せめて最後にしてやれる事。
再び構えられた銃の前に、無意識にその身を滑り込ませた時、場違いな高い声が耳に届いた。
「ブレイブザッパー!」
裏路地の入り口、そこに立って召喚器を構えて居たのは、本来ここに居るべきでは無い少女。
そして、軽い破裂音と共に浮かび上がったのは、全き昏き死神の姿。
少女から真っ直ぐに放たれた衝撃波は、まるで吸い寄せられるかのようにタカヤを捕らえ、その身体を吹き飛ばす。
だが、それと同時に辺りの空気を震わせたのは、再び響いた重低音だった。
その小さく重い空気の振動に、ハッとばかりにタカヤに向けていた視線を戻せば・・・・荒垣の視界の奥で、少女の体がゆらりと揺れた。
どうやって立ちあがったのか、どうやってそこまで辿り着いたのか、覚えては居ない。
気がついた時には、腕の中に横たわる愛しい存在。
その抉られた脇腹からは、とめどなく血が溢れ、直に押さえつけた荒垣の手をすり抜けては、冷たいコンクリートに吸い込まれていく。
自らの足よりも熱いその感触に、思考までが溶かされていくようだ。
「こんなはずじゃ・・・なかったんですけど・・・えへへ・・・」
力のない掠れた声が、荒垣の鼓膜をそっと震わせる。
こんな状態なのに、それでもどこか照れたような笑いを浮かべて少女が見上げてくる。
「なん・・・で・・・・」
自分が発したのかも分からない言葉に、少女はその目を柔らかく細める。
苦痛が無いはずは無いのに、いや、もしかしたらその感覚さえ麻痺しているのかもしれない。
「やっと・・・間に合っ・・・
ねぇ・・・せんぱ・・・おね・・い・」
天田が必死で唱えている回復の技も、失った体の部分を補ってはくれない。
熱く冷たいものが後から後から荒垣の手を、足を、伝っては零れ落ちていく。
止まれ!・・・止まれ!!・・・・・頼むから、止まってくれ!!!
祈るように、その華奢な身体をギュッと抱きしめた荒垣に、少女の小さな声が聞こえた。
-アキラメナイデ-
ほとんど声にならない、けれど確かに囁かれた言葉に、荒垣は目を見開く。
あの日、長鳴神社の境内で交わした会話が、鮮やかに脳裏に蘇る。
交わった視線の先で、嬉しそうに少女が笑った。
「・・ぶじ・・で・・よか・・た・・・・」
ウ"ゥン
唐突に世界が揺れた
それは文字通りの意味だった。
不気味な月も、緑の燐光も、象徴化した棺さえもが揺らぎ、滲む。
地震の様に大地が揺れているのではない、大地の上にあるものが揺れているのだ。
激しく頭を揺さぶられるような感覚と、呼吸さえ出来ないほどの息苦しさが全身を襲い、まるで縫いつけられたかのように、身体を動かす事が出来ない。
何が起こった?
そう思った時、不意に腕の中の重みが消えた。
「満足したかい?」
今起こっている異変とは、まるで正反対な穏やかな声が、静かに裏路地に木霊した。
いつのまにか、荒垣の前には見た事の無い少年が立っていた。
まだ10月に入ったばかりだというのに、首には目にも鮮やかな黄色いマフラーを巻いている。
どこか人懐っこさを感じさせる顔には、声音と同じ穏やかな表情が浮かび、その腕には先ほどまで自分が抱いていたはずの少女を抱えている。
どこまでも優しげな、哀しげな瞳が、静かに少女を見下ろしていた。
「ソイツを返しやがれ!!」
息をする事さえままならない中、それでも搾り出すように上げた叫びに、少年の視線は荒垣へと向けられた。
「驚いた。喋れるんですね、この状況で」
「なん・・だと・・?」
僅かにその瞳を大きくして、少年は荒垣を見つめた。
じっと荒垣を見つめていた視線が、ある一点で止まると、その表情がにわかに曇る。
「足、大丈夫ですか?・・・酷い怪我だ」
「なま言ってんじゃねぇ。それよりもソイツを返せ!テメェは誰だ!?」
「そんなに同時に言われても・・・それに・・・・」
困ったような笑みを浮かべると、荒垣を見つめていた視線を、ゆっくりと頭上へと移す。振り仰いだ先には、不気味なほどに巨大な月が、揺らぎ、歪んで浮かんでいる。
それを見つめる少年の瞳は、どこか懐かしそうな、それでいて恨めしそうな複雑な色を見せている。
何者だ?そう思う一方で、荒垣もまた小さく目を見張った。
少女から滴り続ける雫が、地に触れるより早く、まるで闇に溶けるように霧散していくのだ。
ふと己の手を見やれば、確かにその手を染め上げていたはずのモノが、足元を濡らしていたはずのモノが煙のように消えていく。
「もう時間が無い・・・この世界はまもなく消える」
驚愕の表情を浮かべた荒垣を、その背後で少年を睨みつけていた天田を、しごく真面目な視線が射抜いた。
「この世界と、君達の世界を繋いでいた楔が消えた。
あと数分もすれば、"影時間"はもはや君達の知覚の外へと消え失せる」
「ど、どういうことです!!」
荒垣同様、搾り出すような叫びを天田が上げる。
それに再度驚いたような表情を浮かべると、少年はその瞳を哀しげに伏せた。
「もっと・・・もっと早く、その強さを示して欲しかった・・・そうすれば・・・・」
少年の伏せた視線が、少女を映す。穏やかな笑みが、静かに少年を見返している。
少年は、小さく彼女の名を呼ぶと、その唇を少女の瞼へとゆっくり落とす。
「!!」
既に光を失った少女の瞳が閉ざされ、口元の笑みだけがまるで眠って居るように彼女を見せる。
沸きあがる激しい感情に、荒垣の思考は過熱した。
声にならない叫びが、自らさえも引き裂きそうなのに、それでも身体は動かない。
「動けないでしょう?今、この世界から貴方の半身が消え逝こうとしているから。
・・・でも安心して。
貴方の罪も、君の苦しみも、数分後には消えてなくなる」
言葉にならない声に応えるように、少年は一人語り続ける。
その手に動かぬ人形を抱きかかえたまま。
「彼女が死に。君達は救われる。
全ての記憶は歪み、歪みこそが真実で塗り替えられる・・・・」
愛しげに少女の亡骸を抱き、少年は微笑む。
「"影時間"など存在しなかった。そして彼女もまた存在しなかったんだ。
ただ、事故の記憶と歴史が全てを補完してくれる」
ね?だからもう苦しまなくていい、そう笑って荒垣を、天田を見下ろす。
そのどこか虚ろな笑みに、本能が背筋に冷たい物を流させる。
けれど、そんな本能さえねじ伏せて、荒垣は吼えた。
「ざ・・けんじゃ・・・ねぇ・・・
ソイツは渡さねぇし、誰が忘れっかよ!!」
あえて撃たれた足に神経を集中する事で、動かぬ身体を無理矢理に"自分自身"と認識させる。
微かに動いた指先で、己の傷口をさらに抉る。
「ぐっ」
「やめるんだ・・・・もう遅い・・・
これは既に彼女の抜け殻。ほら、もう月が消える。」
薄らいでいく燐光、昼間と見まごう程に照らしていたはずの月も、すでに霞みのように朧げに頼りないモノへと変わっている。
「それでも諦めないのなら、魂に刻む事だ
いつか、彼女を救う為に・・ね」
なんとか足を引きずり立ちあがった荒垣の前で、少年自身の姿もまた揺らぎ始めていた。
「"荒垣先輩"・・・僕もいつか、貴方と直に出会いたいよ。
出会って、彼女の心を正々堂々と奪ってみたい」
少年の姿と共に、抱かれたままの少女もまたその姿が薄らいでゆく。
滲むように、溶けるように、夜の闇が全てを覆い隠していくように、愛しいモノを呑みこんでいく。
その姿に必死で伸ばした手の先で、だからと呟き、泣きそうに笑んだ少年が・・・
その腕の中で、まるで女神の様に笑んだままの少女が・・・
フツリと音もなく消えた。
「あ・・・あ・・あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ"あ"」
小さな満月が照らす裏路地に、漢の慟哭がいつまでもいつまでも響いていた。
∞――――――――――――――――――――――――∞
間違ってもいい
失敗してもいい
それでもどうか
どうか未来をアキラメナイデ
∞――――――――――――――――――――――――∞
俺ぁな、お前がいるから何の心配もしていない・・・
後を、頼むな。
そう言った自分に、荒垣はギリと唇を噛んだ。
忘れてたまるか
たとえ何が起ころうと、この想いを決して忘れたりはしない。
少女の言葉をその魂の奥底に刻み、漢は揺らぎ、消えていった月が浮かんでいた宙を睨み続けた。
「先輩、どうかアキラメナイデ」
∞――――――――――――――――――――――――∞
ハム子死にネタですみません。(約束の日でもないのに)
しかも、ほぼ綾時とガキさんの会話中心で・・・
てか、マイ設定の権化ですね。
書きたかったのでございますです。はい。
一発目が足なのは、漫画から設定をもらいました。
間違ってもいい
失敗してもいい
それでもどうか
どうか未来をアキラメナイデ
∞――――――――――――――――――――――――∞
俺ぁな、お前がいるから何の心配もしていない・・・
後を、頼むな。
そう言った自分に、荒垣はギリと唇を噛んだ。
忘れてたまるか
たとえ何が起ころうと、この想いを決して忘れたりはしない。
少女の言葉をその魂の奥底に刻み、漢は揺らぎ、消えていった月が浮かんでいた宙を睨み続けた。
「先輩、どうかアキラメナイデ」
∞――――――――――――――――――――――――∞
ハム子死にネタですみません。(約束の日でもないのに)
しかも、ほぼ綾時とガキさんの会話中心で・・・
てか、マイ設定の権化ですね。
書きたかったのでございますです。はい。
一発目が足なのは、漫画から設定をもらいました。