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ここは、「Luftleitbahnen」の別館です。
Fan Fiction Novel-二次創作小説-を置いてあります。
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あらかわ様のサイトより、9月お誕生日の方に配布!!という
素晴らしきSSを盗・・・・・・もといいただいてまいりました♪♪
(ご本人様には確認済みですわ)

甘いものがあって、天然で、それでいてラブラブで
もう、たまりませんね!!この二人は(*ノノ)
てか、女子高生に甘味なんて、先輩ったらわかってるなぁww
私も先輩お手製のクリーム蜜豆食べたいです。

あらかわ様!!本当にありがとうございます!!

あらかわ様の素敵サイトはこちら -BlueMoon




∞――――――∞ A Taste of Honey  ∞――――――∞



夏の暑さがまだ残る9月のある日、帰り支度を整えていた荒垣の元に遥が近付いて来て言った。
「先輩。私、今日は生徒会に顔出そうと思うんですが、先輩はどうします?」
「あ? そうだな……」
荒垣はまだ日差しが強く射し込む窓際に目をやって少し考え込んだ。時間を潰すにしてもこの暑さでは屋上に行こうものなら干からびてしまいそうだし、かと いって図書室という柄でもない。教室に残ろうものなら担任である鳥海に何か仕事を押し付けられるのも、この半年近い間で学習済みだった。
待っていてくれるなら一緒に帰りたいけど無理なら良いです、と遥は荒垣の心中を察したように続けた。

「時間、かかんのか?」
「そうですね。まぁ作業の進行次第ですけど……最悪下校時間いっぱいまでかかるかも」
「そこまでだと、さすがに待てねぇな」
「……ですよねー」
そう言いながらも少し寂しそうな笑顔を見せる遥に、荒垣は苦笑いを浮かべ、遥の頭に手を置いて軽く数度叩いた。

「何か冷たいもんでも用意しといてやるよ」
「ホントですか!? 嬉しい! じゃあ張り切って行って参ります!」
途端に顔を輝かせて敬礼のポーズをとりながら、教室を出て行く遥にヒラヒラと手を振って見送ると、荒垣も帰途に着いた。



「……こんなもんか」
暑い中、恐らくは駅から寮までの道を走って帰って来るであろう遥のために、荒垣は彼女が喜びそうな甘くて冷たいデザートを数品作り上げた。冷やす時間を考 え、急いで買い物を済まして帰寮し、手早く作り上げた割にはうまくできたとひそかに自画自賛する。冷やしている間にも夕食の支度を済ませ、荒垣は一息つい た。
きっといつものように美味しそうに食べるであろう遥の顔を想像して、思わず小さな笑みがこぼれる。カウンターの椅子に腰掛けて自分のためにアイスコーヒーを淹れたところで玄関のドアが勢いよく開いた。

「ただいまー! あぁ暑かったー!」
そう声を弾ませながらキョロキョロと辺りを見回して、ラウンジにもダイニングにも他の寮生がいない事を確認するような素振りを見せると、遥は笑顔で荒垣に駆け寄ってきた。

「先輩、ただいまです」
「おう、おかえり」
荒垣も笑顔で返すと遥はまた嬉しそうな表情を見せた。しかし不意に荒垣の手元に視線を送ると、眉をひそめる。

「先輩、冷たいものって……もしかして、それですか?」
「あぁ?」
アイスコーヒーを指差して、不満気に口を尖らせる遥に荒垣は一瞬目を丸くした。そしてすぐに喉の奥を鳴らすように小さな笑いを漏らす。

「あぁ、違う。これは俺んだ。ちっと待ってろ」
そう言って荒垣は椅子から降りるとキッチンに移動し、用意しておいたデザートを冷蔵庫から取り出した。ワクワクした表情を隠そうともしない遥の前に差し出す。ガラスの器に涼しげな寒天と小豆とフルーツが美しく盛り付けられていた。

「時間無かったから簡単なもんだけどな」
「わぁー! 美味しそう!」
「豆、嫌いじゃなかったか」
「大丈夫です! 大好きです! いっただっきまーす!」
「まぁ待てって」
「え? 何でですか?」
勢い良くスプーンを持って食べ始めようとした遥を荒垣は一旦制した。ポカンとした顔で遥が見上げてくる。

「仕上げがあんだよ」
荒垣は冷凍庫からカップアイスを取り出してスプーンで多めに掬い取り、みつまめの上に載せた。黙って荒垣の動作を見守っていた遥の顔がたちまち喜びに満たされる。

「ほらよ、食って良いぞ」
「すごいすごい、先輩すごい! いただきます!」
時間があればアイスも手作りしたかったが、さすがにそれは叶わなかった。だがこれでも十分遥を喜ばせたようで、荒垣は安心する。もちろん手作りでなかったからと言って文句を言うような相手ではない事は承知の上だったが。

「うめぇか」
「冷たくて甘くて美味しくて、とっても幸せですー!」
「そりゃ良かった」
寒天を頬張りながら頬に手を当て目を細める遥の嬉しそうな顔を眺め、荒垣も安心したように笑みを浮かべる。どんな物を食べても大概は美味そうに食べる遥 だったが、荒垣が作ったものとなるとそれは一層幸せそうに見える。生きるためにただ必要だったからと身につけた料理の技術が、誰かを、いや大切な人を笑顔 に出来るという事は荒垣にとって大きな発見であり、また喜びでもあった。

「先輩、こっちに座りませんか? コーヒーの氷が溶けちゃいますよ」
「あぁ、そうだな」
荒垣が遥の隣に座ってコーヒーに口をつけると、遥は安心したように笑ってまた食べ始めた。食べながらも生徒会の話や、最近少し進展があったらしい岩崎と友 近の恋の行方や、下校途中に寄った店の話など、様々な話題を面白おかしく語る。相変わらずの事とはいえ、遥の話題の豊富さと軽妙な語り口には感心せざるを 得ない。
そうして食べたり話したりと忙しくしながらも食べ終わった遥がきちんと両手を合わせて頭を下げる。

「ごちそうさまでした!」
「おう。あと余った果物でゼリーとシャーベットも作っといたから、晩飯の後に皆で食え」
「ありがとうございます! ホント、先輩ったら至れり尽くせり過ぎですよー。でも嬉しいです。きっと皆も喜びますね!」
「だといいがな」
荒垣が小さく笑うと、遥が少し考えるような顔をした後でふと口を開いた。

「ね、先輩。みつまめ、ゼリー、シャーベットと来たら、次はパフェとか食べたいです」
「はぁ? そんなもんはシャガールにでも行って食えばいいじゃねえか」
「先輩の作ったのが食べたいんですよー……あっ!」
そう言った遥が突然、思い出したように椅子を降りて、床に置いてあったカバンからなにやら薄い紙袋を荒垣に差し出した。

「先輩、これどうぞ!」
遥が手渡してきた袋には、駅前の書店名が印刷されている。
「あ? なんだ、こりゃ?」
「帰りにちょっと見たい参考書があったんで本屋さんに寄った時に見つけたんです。プレゼントです」
誕生日はもう過ぎたし、クリスマスにはまだ早い。何の理由も思いつかない突然の贈り物に、荒垣は戸惑いつつも紙袋の中身をカウンターテーブルにあける。

1冊の本が出てきた。表紙には、顔は見えないが恐らくカップルで食事を取っていると思われる二人の人物が写っていて、タイトルは『作ってあげたい彼ごはん』とある。荒垣は本と遥の顔を何度も見比べた。
「……で?」
荒垣とて料理本の類を探しに書店に出向いた事は何度もあるし、この本も平積みしてあるのを見た記憶がある。同じ物ではなく、シリーズ物だった気がするが、タイトルには見覚えがあった。
しかし、この本のコンセプトは恐らく、女性が彼氏に手料理を作る指南本だと思われる。それをプレゼントだと手渡された事に荒垣は少なからず疑問を覚えていた。
荒垣の戸惑いを知ってか知らずか、目の前の恋人はニコニコと満面の笑みを浮かべて口を開いた。

「で、って何ですか。彼ごはんですよ! か、れ、ご、は、ん! 彼が彼女にご飯作ってくれる本ですよね!」
置かれた本を手にとってパラパラとめくりながら、早速どれが良いかなーなどと言っている遥に荒垣は小さく溜め息をついた。

「おい、この本はそういうんじゃねぇだろ」
「……え?」
「だからな、彼『の』ごはんじゃなくて、彼『に』ごはんっつー本だろ」
助詞の部分を敢えて強調するように大きく言うと、遥もその違いにようやく気がついたようだった。

「……えぇぇぇっ!?」
その驚きようを見た荒垣は、遥の天然ボケは未だに健在だ、などと別の意味で感心しつつも、思わず呆れた口調になった。

「それに、こんな本無くたっておめぇが食いたいっつーもんなら大概は作れる。つか毎日食ってんじゃねぇか……」
「あー、そうでした……確かに……彼ごはん、です」
「しかもこいつぁどう見たって初心者用の本だろ。俺に買うってんならもうちっとましなモンをだな」
「だって……タイトルだけ見て買ってきちゃったんです」
「ったく、しゃあねぇな」
目に見えて気落ちした様子の遥に、さすがに少し言い過ぎたかと思った荒垣はその本を手に取った。ざっと流すように全体のレシピを斜め読みする。遥はそれをじっと見守るように見つめていた。

「あぁ、ここに書いてあるような事ぁ、お前はもう大概できるな……こいつは山岸にでもくれてやれ」
「あぅ……スミマセン」
荒垣が差し出した本を気落ちした表情で受け取ると、元々それが入っていた紙袋にきちんと入れなおして再びカバンに収めた。そのまま顔をあげようとしない遥の頭に、荒垣は優しく手を載せる。

「別に謝るこたねぇけどよ。とにかく次に料理本買う時ぁちゃんと中身見てから買えよ」
「……もう買いません」
「あ?」
頭上の荒垣の手を取った遥は、それを両手で握り締めるようにしながら荒垣にずいと近づいて真剣な顔を寄せた。

「考えてみたら、本なんて買わなくても素晴らしい先生がここにいるんですよね。だから本には頼らず、ずっと先輩に教えてもらえば良いんですよね」
「はぁ? 何でそうなるんだ……」
元々の話と何か論点がずれてきている気がするが、遥は至って真剣そのものだった。下から見上げるようにして、やや潤んだ瞳で荒垣に詰め寄ってくる。荒垣は遥のこの顔に弱い。それを知ってか知らずか、遥は更に顔を近づけた。

「ダメですか?」
「いや……別にいいけどよ」
根負けして荒垣の口から出たその言葉を待っていたかのように、途端に笑顔になる。

「じゃあ、手取り足取り腰取り、末永くご指導よろしくお願いしまーす!」
「……こっ、腰って何だ! アホか!」
「こういう事ですよ」
遥は素早く椅子を降りて、荒垣の腰に自分の手を回して抱きつくとニッコリと微笑みながら荒垣を見上げた。

「ばっ……! 誰か来たらどうすんだ!」
「じゃあ、先輩の部屋に行きませんか? デザートで少し体が冷えちゃったし、運動でもして暖まりたいなぁ」
「お、おま、なんつー事を」
「ダメですか?」
そのセリフはさっきも聞いた。そして荒垣が本気で拒絶など出来はしない事を遥は知っているに違いない。天然ボケのくせにそういうところは聡いのだ。荒垣は大きく溜め息をついて遥の腰を抱き寄せた。すっぽりと腕の中に納まった遥が嬉しそうに荒垣の胸に顔を埋める。

「ダメっつーか……晩飯どうすんだ。あと1時間で皆集まってくるぞ」
「えー……でも1時間あればまぁ、ね?」
顔を上げた遥が無邪気な表情で小首をかしげる。荒垣は思わず天を仰いだ。自分が何を言っているのか分かっているのだろうか、この、目の前の、愛しい女性は。

「ね、じゃねえよ。まったくこの、はねっかりめ」
「えへへ。大好き、先輩!」
「ったく、人を煽りまくりやがって。覚悟しとけよ……嫌だっつっても止めてやんねぇぞ」
「望むところです! でもご飯には間に合わせて下さい!」
それは約束は出来ない、とばかりに荒垣は呆れたように大きく息を吐き出した。それと同時に遥の体を離すと、カウンター下に置かれた遥のカバンを拾い上げた。

「……ほら、行くぞ」
「はい!」
荒垣が差し出した手に、遥が満面の笑みで自分の手を重ねた。それを引き寄せて、絡め合う。並んで階段を上り、二人は荒垣の部屋に姿を消した。



「ねぇ、先輩」
「何だ?」
「据え膳食わぬは、って言いますよね。となると私自身が彼ごはんって事になるんでしょうか」
「なっ、何言ってんだ、おめえは……!!」



当然そんな二人が夕食の時間に間に合うはずもなく、おかずは残してあったものの、遥の分のデザートはゆかり達が止めたにも関わらず順平の腹に収まった。本気で怒り狂う遥を必死で押さえつけながら、また作る事を約束してようやくその場を治めた荒垣なのであった。

END (2010.9.17UP) byあらかわ@BlueMoon

∞――――――――――――――――――――――――∞
あらかわ様、ありがとうございます~~♪♪
こういう天然で、可愛らしいハム子が好きです。
大好きです。大好物です!!!
こういう日常話はほんわりして、ニヤニヤして幸せになるですよ
素敵な宝物がまた増えて、miyaは幸せ者ですヽ≧∇≦ノ
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