捏造IF話その2
こちらは胡蝶ほどの捏造ではないけど、長めのシリアスになる予定です。
書いて見ないと分からないですけど・・・・・(笑)
とりあえずは導入から。
こちらは胡蝶ほどの捏造ではないけど、長めのシリアスになる予定です。
書いて見ないと分からないですけど・・・・・(笑)
とりあえずは導入から。
∞――――――――――――――――――――――――∞
それは一瞬の永遠
ただ、その答えを知るために人は生きる
さぁ、探してごらん
いつか辿りつくその答えの在り処を
∞―――――――∞ 瞬永 壱 ∞――――――――∞
圧倒的なまでのプレッシャーに、透流の膝は力さえ入らない。
なんとか両腕で身体を支えるものの、その腕もいつ崩れてもおかしくはないだろう。
だが、透流の目に諦めの色が浮かぶ事はない。
そもそも、その選択肢が存在しないのだ。
そう、今此処で、諦める事が出来る位なら、はじめからこの場所になど居ないのだから。
この場所・・・月であり、DEATH胎内。
一体いつから月がDEATHなのか、元々は違うモノなのか、正直よく分からない。
今まで自分が認識していたものと、世界の色々なものがずれてしまったのだから、仕方ない事なのかもしれない。
まぁ、どうでもいいと言えばどうでもいい事だ。
これがどっちであろうと、やるべき事は変わらない。
その為に託されたものがある、今この手の中に、その輝きが確かに存在する。
イゴールが言っていた。
この1年で出会ったたくさんの大切な人たち、紡がれた想い。
その結晶を手にした今、自分は不可能を可能に出来るのだと。
だけど・・・思いだして見れば、それを最初に教えてくれたのは綾時いや、ファルロスだった気がする。
自分の力を、何にでもなれる力なのだと、そう言ってくれた。
それはきっと、何でもできるって事と同じ。
そう思えば、全ては始めから決まっていたのかもしれない。
10年前のあの時から。
それとももっと前から?
結局、ここに帰ってきて、いろんな事があって・・・ありすぎて・・・・
その結晶がこの力なのかと思うと、なんだか不思議な気がした。
だって、まだ1年も経っていないのだ。
楽しかった。
きっと、今まで過ごしてきた中で、一番楽しい一年だっただろう。
そう確信を持って言える。
その分、哀しい事だって、怒った事だって一杯あったけど、だけど。
もっと、もっと一杯いろんな事したかったなぁ。
苦笑にも似た笑いが込みあげてくる。
出会いだけじゃない、たくさんの想い出が蘇る。
だけど、それは後悔とは違う。
当たり前すぎる、未練とさえ呼べない感情。
後悔が全くないのかと言われればそれは違う。
あの時こうしていればなんて事は、それこそ掃いて捨てる程に山積みだ。
だけど、それで過去が変わるわけじゃない。
今此処にいる自分は、過去を変えるためにいるわけではないのだから。
透流は、震える腕に力を込めると、眼前の異形を睨みつけた。
なんとか薙刀を握りなおし、立ちあがろうと地に突きたてる。
「くっ・・・このまま僕たち・・・
何にもできないなんて!!」
不意に天田の声が聞こえた。
本当なら聞こえるはずのない距離なのに、風花のナビよりももっとクリアに、まるでこの場にいるようにはっきりと。
その声に滲む悔しさが、我が事のように身体を燃え上がらせ、透流は左膝に力を込める。
「諦めるな! どんな時でも
アイツと俺達はひとつだ!」
真田の叫びが、透流の闘志に更なる火を注ぎ込む。
ふらつきながらも、右の膝をたてて身体を起こす。
「どうか・・・彼女に力を!!
この命と引き換えでいい!!」
美鶴の決意が、透流の鼓動をより確かなモノへと変える。
薙刀を支えに、透流はなんとか立ちあがる。
そんな透流の姿に、DEATHから赤い光が降り注ぐ。
先ほども押し寄せてきた、それは云わば負のプレッシャー。
物理的な力ではなく、透流の精神を蝕むように侵食してくる。
最初に透流を襲った一撃は、透流から立つ力さえ奪い取っていた。
その力の名は絶望。
救いのない現実に、希望など欠片も見いだせない人々が宿した底の見えない暗い穴。
次いで襲ってきた第ニ派には、孤独という名の凍てつく寒さが込められていた。
たくさんの人が溢れる世界の中で、人の輪の中にいながらに感じる絶対の孤影。
その負の力の波に晒されながら、透流はようやく理解し始めた。
倒すべきモノが本当は何なのか、自分が託された力の使い道が本当は何なのか。
透流の中で、徐々にその形が組み上げられていく。
「私も、今ならそんなの、
全然惜しくないよ!」
ゆかりの声が、透流の決意と重なりあう。
上体を起こしながら、荒い息を繰り返す。
「すごい・・・世界を滅ぼす力と
たった一人で・・・!!」
風花の嘆声に、小さく笑って頭を振る。
薙刀を持つ腕に、握り締めた手のひらに力を込める。
「一人なんかじゃねぇ!!
オレが絶対死なせねぇ!!」
順平の咆哮に、力強く頷くと大きく息を吸った。
薙刀をしっかりと構え、二本の足でまっすぐに立ちあがる。
最後に、どうしても確かめなければならない事がある。
透流は、構えた薙刀を勢い良く振り切ると、眼前の"死"へとその衝撃波を走らせる。
再びDEATHから、負の波動が押し寄せる。
癒される事のない悲しみが、透流の中に吹き荒れる。
絶望、孤独、悲しみ・・・・死を望む人々のココロ。
透流の目の奥に、光が灯る。
「ワンッ!ワンッ!!」
コロマルの激が、透流の心に確信をもたらす。
やるべき事は、死を倒す事でも、消す事でもない。
「あなたを生んだこの世界が
滅びるなんて絶対ダメ・・・!」
アイギスの感情が、透流の目をゆっくりと閉じさせた。
私を生んだ世界。
この1年、ううんもっと前から、ずっとずっと前から続いてきた・・・命の連鎖。
大切な仲間達の一つ一つの声が、透流の中で輝く結晶に、思い描いた形へと変える力を与えていく。
またみんなが笑ってくれるように、あの日々が続くように、祈りを込めて透流がゆっくりと顔をあげる。
その透流の耳に、聴こえるはずのない声が聴こえた。
「さぁて、やるか・・・・な?」
透流は笑った。
その瞳からは、我知らず涙が溢れる。
心を乱してしまうから、あえてこの場では考え無いようにしてきたのに。
・・・・ずるいなぁ、先輩は。
あの日から、何度も聴きたいと願っていたのに・・・もう、4ヶ月近くになるのに、ずっと夢の中だけでしか聴けなかった声。
それが、今此処で、この場所で、こんなにも近くにはっきりと聴こえた。
その鼓膜を震わせた波と同じモノが、心なしか透流を包んでくれているような気さえする。
先輩・・・
こんなとこにいるから、だからずっと目を開けてくれなかったのかな?
じゃぁ、全部終わったら、きっと目を開けてくれるよね。
今ここで考える事じゃないのに、そんな風に考えた自分がなんだかおかしくて、透流はその顔に浮かべた笑みを深くする。
それが最後の一押しだった。
我ながら単純だと思う。
だけど、世界が欲しがった答えは、案外こういうシンプルなものなのかもしれない。
「ごめんね」
それがニュクスへのモノなのか、他の誰かに向けたモノなのか、それとも全てに向けたモノなのか、透流自身分からなかった。
分からないまま、透流は笑った。
頬を伝う雫もそのままに、だけど、その笑みはどこまでも晴れやかに。
「今なら分かるよ、アナタを呼んだのは確かに"人"。
・・・だけど、悪いけどもうお引取り願いたいんだ。
呼び出しといて、勝手に帰れだなんて虫がいいのは分かってる。」
立つ事さえままならなかった膝が、今はもう揺るぎなどしない。
構えていたはずの薙刀も、その手から放りだす。
笑ったまま、透流は前方を見上げ、その手をすっと持ち上げた。
「だから、答えをあげる。
アナタが望んだ、私の答え。
それをお土産に・・・・・眠って!!」
持ち上げた腕の先、上方を指した指の先に光が集まった。
この1年で得た、出会いと別れ、そこから生まれた沢山の想い出。
その一つ一つが織り成す光の糸がより合わさって、世界を生み出す。
ニュクスを、封じるための、いや、眠らせるための世界を。
弾ける光の奔流の中で、透流は誰にとも無く問いかけていた。
「これで、いいんだよ・・・ね?・・・」
全てが収束したその場所からは、透流の姿もまた消えうせていた。
∞――――――――――――――――――――――――∞
壱というか零的な話かな?
ラストバトルを書きたかったので。
壱というか零的な話かな?
ラストバトルを書きたかったので。