もうとっくに過ぎてたんですが拍手御礼第8段を格納。
時事ネタだったということで、七夕です。
季節は外れまくりだし、どこかで読んだ気がする言い回しですが、
楽しんでいただければ幸いです。
時事ネタだったということで、七夕です。
季節は外れまくりだし、どこかで読んだ気がする言い回しですが、
楽しんでいただければ幸いです。
拍手ありがとうございます。
こちらは御礼の拙い季節モノSSです。
設定としては2010年七夕。
みんなで楽しい寮住まい中です。
(出てくるの荒ハムだけですが)
うん、すごくベタなお話ですけど・・キニシテハイケナイ
♪~♪♪
上機嫌で鼻歌を歌いながら、透流が笹飾りに短冊を飾っていた。
そこは巌戸台分寮のラウンジである。
風鈴の音とともに入り込んできた夏の風が、さらさらと笹の枝葉を揺らし、涼しげな音を奏でている。
階段を降りてきたばかりの荒垣に気付いてはいないのだろう、透流の手は止まる事がなく、振り返る様子もない。
(ほんと、こういうの好きだよなァ)
せっせと色とりどりの折り紙で、鮮やかな緑の笹に華を添えていく透流を眺めながら、荒垣はその目を細めつつそっと透流の背後に近寄っていった。
「欲、深すぎんじゃねぇか?」
「せ、先輩!!」
既に十数枚目になろうかという短冊を手にしていた透流の耳に吐息と共に囁けば、驚きのあまり、透流がぴょこんと飛び上がった。
その拍子に、透流の手から短冊が幾枚かはらはらと床へと落ちる。
落とした短冊を拾い上げ、透流の手に渡してやりつつ、荒垣は意外な事に気がついた。
「ん?なんだ、何も書いてねぇのか」
随分と熱心に飾り付けをしていた所を見て、その分の願い事でも書いてあるのかと思ったのだが・・・
よく見れば、今さっき透流が飾っていた短冊も全て裏には何も書かれてはいなかった。
ただ、綺麗な5色の紙が、笹の葉と共に揺らいでいるばかりである。
「一杯飾ってあった方が、見てて楽しいかなぁって」
荒垣の問いに、改めて笹飾りを見直しながら、透流は満足気にうんうんと頷いた。
確かに、先日よりも色鮮やかさがましており、いかにも七夕の笹飾りという様相を呈している。
そのどこか誇らし気に見える透流の姿に、荒垣はぽんと小さな頭に手を置くと、ゆっくりと撫でてやった。
まるで親に褒められた子供の様に、透流が嬉しそうに、気持ちよさそうに目を閉じる。
「お前は、願い事書かないのか?」
特に深い意味があって口にしたわけではなかった。
ただ、透流が飾っていたまっさらな短冊とは裏腹に、数枚の紙には、順平や、天田、山岸のものと思われる願いが書きこまれており、それらが目に入ったから、その程度の理由からの問いだった。
「う~~ん。馬に蹴られたくないですから・・・って牛かな?」
荒垣に答えるというよりは、まるで独り言のように呟いた透流の言葉に、意味が分からず首をかしげてしまう。
そんな荒垣に、透流はどこか怒ったように詰めよってきた。
「そもそも、理不尽だと思いません?先輩」
「・・・何がだ?」
「だって・・・1年に1回しか会えないってだけでも酷いのに、
その人にみんながお願い事したら、折角会える時間なんてすぐなくなっちゃうじゃないですか。」
可哀想です!! そう言って、口を尖らせる透流に、荒垣は一瞬目が点になってしまった。
何事かと思ってみれば・・・・まさか、御伽噺の登場人物の境遇に怒っていようとは、流石の荒垣でも想像がつかなかった。
ぷりぷりと「あれがおかしい、そこが納得行かない」と口にする彼女に、ふっと息を吐くと、なだめる様に再び透流の頭に手をやり、ポンポンと叩く。
それが現実に存在するかしないかなどはどうでもいい、ただ、誰かの為に怒る彼女らしいその思考が、荒垣にはたまらなく愛しかった。
「んな事考えてたのか?」
「え~、だって大事じゃないですか・・・・それに・・・」
それまで口を尖らせていた透流が、不意に俯いた。
その様子に、それに?、と覗きこむように先を促せば、緋色の瞳が一瞬だけ上目遣いに荒垣を見る。
そして再び俯くと、おずおずとその華奢な両手を彼の背に回し、きゅっと荒垣に抱きついてきた。
「私のお願いをかなえられるのは・・・神様じゃないもん」
どこか拗ねたように聴こえる声音が、実の所、緊張と不安からくるものだと荒垣は知っていた。
自分の胸に顔を埋めながらも、背に回る彼女の腕が強張っているのを感じる。
自然、荒垣の顔には笑みが浮かぶ。
(たく、普段ははねっかえりのくせしやがって)
不安と期待で一杯になっているであろう透流に、このまま抱きしめてしまおうかと思いつつも、荒垣はあえて彼女の身体に手を触れ無い様にしながら口を開いた。
「んじゃ、誰がかなえてやれんだ?」
そう言って、纏め上げられた彼女の柔らかな髪を掬い、唇を寄せれば、びくりと彼女の身体が震える。
「・・先輩の意地悪」
喉の奥で笑う荒垣に、再び拗ねたような、切なそうな声が返ってくる。
背を掴む手に一層力がこめられたのを感じると、荒垣は満足気な表情を浮かべ、透流の耳元に唇を寄せた。
「仕方ねーな。
可哀想な神様の変わりに、聞いてやるよ・・・・何が欲しい?」
「・・お祭り・・・」
「ん?」
「夏祭り・・・一緒に行きたいです」
耳の先まで真赤になった透流の言葉に、祭り?、と聞き返した荒垣に、コクリと透流の頭が振られる。
荒垣は記憶の中のカレンダーを捲り、そういえば、確か8月だったかに長鳴神社で祭りがあった事を思い出した。
コロマルが人の多さに避難して来た事があったからだ。
「そんなんでいいのか?」
むしろ、他の誰かと行かせる気など毛頭ない荒垣にとって、お願いでもなんでもないという思いの方が強かったりするのだが・・・
そんな荒垣の言葉に、ようやく透流が顔を上げた。
「はい!」
まるで花が咲くように、顔をほころばせる透流に、荒垣はたまらず華奢な身体を抱きしめていた。
えへへと笑いながら、スリスリと幸せそうに頬を擦り付けてくる姿に、理性という名の箍が外れる。
まだ昼間だと言う事は百も承知ではあったのだが、無自覚なほうが悪いと責任を転嫁して、その額に唇を落とした。
「んじゃ、変わりに俺の願い事はお前に聞いて貰うか・・・・前払いで」
「へ?」
きょとんと見上げてきた透流に、ニヤリと口角をあげれば、荒垣はひょいとばかりに彼女を抱えてゆっくりとその足を階段へと向けるのだった。
残されたラウンジでは、鮮やかに彩られた笹飾りが、夏の風にさらさらと揺れるばかりだった。
こちらは御礼の拙い季節モノSSです。
設定としては2010年七夕。
みんなで楽しい寮住まい中です。
(出てくるの荒ハムだけですが)
うん、すごくベタなお話ですけど・・キニシテハイケナイ
∞―――――――――∞ 七夕 ∞―――――――――∞
♪~♪♪
上機嫌で鼻歌を歌いながら、透流が笹飾りに短冊を飾っていた。
そこは巌戸台分寮のラウンジである。
風鈴の音とともに入り込んできた夏の風が、さらさらと笹の枝葉を揺らし、涼しげな音を奏でている。
階段を降りてきたばかりの荒垣に気付いてはいないのだろう、透流の手は止まる事がなく、振り返る様子もない。
(ほんと、こういうの好きだよなァ)
せっせと色とりどりの折り紙で、鮮やかな緑の笹に華を添えていく透流を眺めながら、荒垣はその目を細めつつそっと透流の背後に近寄っていった。
「欲、深すぎんじゃねぇか?」
「せ、先輩!!」
既に十数枚目になろうかという短冊を手にしていた透流の耳に吐息と共に囁けば、驚きのあまり、透流がぴょこんと飛び上がった。
その拍子に、透流の手から短冊が幾枚かはらはらと床へと落ちる。
落とした短冊を拾い上げ、透流の手に渡してやりつつ、荒垣は意外な事に気がついた。
「ん?なんだ、何も書いてねぇのか」
随分と熱心に飾り付けをしていた所を見て、その分の願い事でも書いてあるのかと思ったのだが・・・
よく見れば、今さっき透流が飾っていた短冊も全て裏には何も書かれてはいなかった。
ただ、綺麗な5色の紙が、笹の葉と共に揺らいでいるばかりである。
「一杯飾ってあった方が、見てて楽しいかなぁって」
荒垣の問いに、改めて笹飾りを見直しながら、透流は満足気にうんうんと頷いた。
確かに、先日よりも色鮮やかさがましており、いかにも七夕の笹飾りという様相を呈している。
そのどこか誇らし気に見える透流の姿に、荒垣はぽんと小さな頭に手を置くと、ゆっくりと撫でてやった。
まるで親に褒められた子供の様に、透流が嬉しそうに、気持ちよさそうに目を閉じる。
「お前は、願い事書かないのか?」
特に深い意味があって口にしたわけではなかった。
ただ、透流が飾っていたまっさらな短冊とは裏腹に、数枚の紙には、順平や、天田、山岸のものと思われる願いが書きこまれており、それらが目に入ったから、その程度の理由からの問いだった。
「う~~ん。馬に蹴られたくないですから・・・って牛かな?」
荒垣に答えるというよりは、まるで独り言のように呟いた透流の言葉に、意味が分からず首をかしげてしまう。
そんな荒垣に、透流はどこか怒ったように詰めよってきた。
「そもそも、理不尽だと思いません?先輩」
「・・・何がだ?」
「だって・・・1年に1回しか会えないってだけでも酷いのに、
その人にみんながお願い事したら、折角会える時間なんてすぐなくなっちゃうじゃないですか。」
可哀想です!! そう言って、口を尖らせる透流に、荒垣は一瞬目が点になってしまった。
何事かと思ってみれば・・・・まさか、御伽噺の登場人物の境遇に怒っていようとは、流石の荒垣でも想像がつかなかった。
ぷりぷりと「あれがおかしい、そこが納得行かない」と口にする彼女に、ふっと息を吐くと、なだめる様に再び透流の頭に手をやり、ポンポンと叩く。
それが現実に存在するかしないかなどはどうでもいい、ただ、誰かの為に怒る彼女らしいその思考が、荒垣にはたまらなく愛しかった。
「んな事考えてたのか?」
「え~、だって大事じゃないですか・・・・それに・・・」
それまで口を尖らせていた透流が、不意に俯いた。
その様子に、それに?、と覗きこむように先を促せば、緋色の瞳が一瞬だけ上目遣いに荒垣を見る。
そして再び俯くと、おずおずとその華奢な両手を彼の背に回し、きゅっと荒垣に抱きついてきた。
「私のお願いをかなえられるのは・・・神様じゃないもん」
どこか拗ねたように聴こえる声音が、実の所、緊張と不安からくるものだと荒垣は知っていた。
自分の胸に顔を埋めながらも、背に回る彼女の腕が強張っているのを感じる。
自然、荒垣の顔には笑みが浮かぶ。
(たく、普段ははねっかえりのくせしやがって)
不安と期待で一杯になっているであろう透流に、このまま抱きしめてしまおうかと思いつつも、荒垣はあえて彼女の身体に手を触れ無い様にしながら口を開いた。
「んじゃ、誰がかなえてやれんだ?」
そう言って、纏め上げられた彼女の柔らかな髪を掬い、唇を寄せれば、びくりと彼女の身体が震える。
「・・先輩の意地悪」
喉の奥で笑う荒垣に、再び拗ねたような、切なそうな声が返ってくる。
背を掴む手に一層力がこめられたのを感じると、荒垣は満足気な表情を浮かべ、透流の耳元に唇を寄せた。
「仕方ねーな。
可哀想な神様の変わりに、聞いてやるよ・・・・何が欲しい?」
「・・お祭り・・・」
「ん?」
「夏祭り・・・一緒に行きたいです」
耳の先まで真赤になった透流の言葉に、祭り?、と聞き返した荒垣に、コクリと透流の頭が振られる。
荒垣は記憶の中のカレンダーを捲り、そういえば、確か8月だったかに長鳴神社で祭りがあった事を思い出した。
コロマルが人の多さに避難して来た事があったからだ。
「そんなんでいいのか?」
むしろ、他の誰かと行かせる気など毛頭ない荒垣にとって、お願いでもなんでもないという思いの方が強かったりするのだが・・・
そんな荒垣の言葉に、ようやく透流が顔を上げた。
「はい!」
まるで花が咲くように、顔をほころばせる透流に、荒垣はたまらず華奢な身体を抱きしめていた。
えへへと笑いながら、スリスリと幸せそうに頬を擦り付けてくる姿に、理性という名の箍が外れる。
まだ昼間だと言う事は百も承知ではあったのだが、無自覚なほうが悪いと責任を転嫁して、その額に唇を落とした。
「んじゃ、変わりに俺の願い事はお前に聞いて貰うか・・・・前払いで」
「へ?」
きょとんと見上げてきた透流に、ニヤリと口角をあげれば、荒垣はひょいとばかりに彼女を抱えてゆっくりとその足を階段へと向けるのだった。
残されたラウンジでは、鮮やかに彩られた笹飾りが、夏の風にさらさらと揺れるばかりだった。
∞――――――――――――――――――――――――∞
久々にSS形式の拍手ネタです。
季節イベント系かつ、短いので拍手にしました。
ハム子さんはお祭りとして騒ぐのは大好きですが、きっと織姫彦星には願わない気がする。
久々にSS形式の拍手ネタです。
季節イベント系かつ、短いので拍手にしました。
ハム子さんはお祭りとして騒ぐのは大好きですが、きっと織姫彦星には願わない気がする。